29:幽霊の日

文字数 2,716文字

[河上 もな]

ああ~! 瀬川さんが死んでしまうっ

柴山 タケル【ツルハシ】⇒ 成功

瀬川 鉄人【回避】⇒ 成功




 瀬川は振り下ろされたツルハシを何とか避けることができました。




[時津 サイ]

瀬川さん、とりあえずスタッフルームから出ますか?

これ以上わたしが粘っても……




 目の前にタケルが立ち塞がったため、時津はスタッフルームから出ることができませんでした。




[瀬川 鉄人]

もう、逃げると決めたんですよね?

[時津 サイ]

粘ってもいいですよ

じゃー、二人とも【アイデア】どうぞ

時津 サイ【アイデア】⇒ 失敗

瀬川 鉄人【アイデア】⇒ 成功




 時津は逃げようとしましたが、瀬川はあることに思い至りました。

 タケルはあの手紙のことを知らないのではないか、と。




瀬川 鉄人【組み付き】⇒ 失敗




 瀬川がタケルに組み付こうとしますが、上手くいきませんでした。

 タケルは時津に向かってツルハシを振り上げて襲い掛かってきます。




時津 サイ【回避】⇒ 失敗

柴山 タケル【1d6+1+1d4】⇒ 3




 ツルハシは時津の腕をかすめました。




時津 サイ【組み付き】⇒ 成功

柴山 タケル【回避】⇒ 成功




 時津はタケルに組み付きましたが、タケルは簡単に振り解いて逃れました。




[時津 サイ]

早いなあ……!

[瀬川 鉄人]

さっきのすみれちゃんの手紙を読み上げるんだ!!




 それを聞いた時津はハッとしました。先程遺体のそばで見付けた手紙を取り出し、タケルに向かって手紙を朗々と読み上げました。




[柴山 タケル]

……………………。




 タケルは掲げていたツルハシを下ろし、何か小さく呟きました。

 そしてその後、タケルの体は光の粒子になって消えていきました。




ここで二人は【聞き耳】をどうぞ

瀬川 鉄人【聞き耳】⇒ 失敗

時津 サイ【聞き耳】⇒ 成功




 時津さんにだけは聞こえました。タケルの慈愛の籠もったような声が。


 そこにいたんだな……


 あなたたちは全員、眼前がホワイトアウトして意識を失いました。







 あなたたちは目を覚ましました。

 どこかの病院にいるようです。




[時津 サイ]

病院?




 時津は驚いて辺りを見回します。

 時津、くるみ、もなは3人がこの場に無事でいること、別室では楠木、瀬川もお互いがいることを確認しました。


 それぞれの元に看護師さんがやって来ました。




起きられたんですね、良かったです

みなさん、体調は大丈夫ですか?

[河上 もな]

ここはどこですか?

春日市の■■■病院です

あなたたちは山の廃墟になっている旅館の近くで倒れていたのを地元の人に見付けられたんですよ

[時津 サイ]

廃墟?

あそこの旅館は廃墟なんですが、あなたたちが向かっていくのを地元の人たちが目撃していたんです

全然降りてこないから、もしかしたらと思って見に行くと、旅館の近くで倒れているのを見付けたそうです

そしてあなたたちはすぐこの病院に運ばれてきたんです

[時津 サイ]

なるほど……ご迷惑をおかけしました

[時津 サイ]

一つきいていいですか?

わたしたちの他に誰かいませんでしたか?

あなたたち以外ですか?

いえ、他には誰もいませんでしたよ

[時津 サイ]

そうですか……




 瀬川と楠木も別室で同じような話を聞いていました。




[楠木 甚之介]

今日は、何日ですか?

今日ですか?

今日は7月26日ですよ

[楠木 甚之介]

(時間が経ってない)

[楠木 甚之介]

何時頃ですか?

今は 13 時くらいですよ





[時津 サイ]

わたしたちの荷物はありますか?

近くに落ちていたので荷物はこちらに運んでおきましたよ

車は廃墟にあると思いますが

[時津 サイ]

くるみちゃん、お土産ある?

くるみちゃんのお土産はあります

[時津 サイ]

(お土産は買ってる

よく分からないなあ)

[河上 もな]

廃墟ってどういうことですか?

わたしたち旅館にいたはずなんですけど

あそこは5年前からずっと廃墟ですよ

わたしに聞かれても……あなたたちがあそこに行った理由は分かりませんけど……?

[時津 サイ]

図書館で前に調べたときは、あそこはすごく由緒正しい、泊まると幸運が訪れる旅館だと書いてあったんですが、何か原因があって廃墟になったんですか?

だいぶ昔にそういうのもあったみたいですけど、旅館が潰れてからはもう誰も近寄ることはありませんね

まあ、昔、何か殺人事件みたいなことがあったらしくて地元の人でも近寄る人はいません。そのせいで霊山に登る人もいません

みなさん、大丈夫ですか?

体調は平気そうなので一日入院して休んでください


それではわたしは仕事がありますので、失礼します




 時津は看護師にお礼を言って見送りました。




 時津、もな、くるみの3人のところへ、検査着を着た楠木と瀬川がやって来ました。




[楠木 甚之介]

とりあえずみんな無事で良かった

[時津 サイ]

元気そうで良かった

[河上 もな]

無事で良かったです

[時津 サイ]

何だったんでしょうね……

(最後何か言ってた)

[河上 もな]

ケガをしていた人たちは、ケガはどうなんですか?




 あなたたちの体にはどこにも外傷がなく、あれは夢だったのだろうかという考えが頭を過ぎります。




[瀬川 鉄人]

5人とも同じ夢を見ることなんて……

[河上 もな]

カメラは持ってますか?




 もなと瀬川は旅館で撮影した写真を確認します。

 デジカメやスマートフォンには真っ黒な暗闇を写しただけの写真が大量に残っていました。特にもなの手元にはそのような写真が数百あります。




[瀬川 鉄人]

やだあ

[河上 もな]

こえ~~っ




 あなたたちは疑問を抱えつつも、病院で一日体を休め、それぞれ自分の家へと帰って行きました。







 それから数日後、たまたまテレビを観ていると、ある番組が放送されていました。見知った顔の芸能人たちが心霊スポットに入り、好きなように仮説を立て、ありもしないような噂を広めていくような番組です。


 あなたたちはそれを見ていると、ふと思い出しました。

 自分たちが迷い込んだ旅館と、そこで起きた冒涜的な出来事を。


 自分たちは生き残ったけれどもあの旅館は今も存在しており、あの怪物もそのまま存在し続け、きっと自分たちと同じようにしてあそこへ人間を呼び寄せ、生け贄として喰らい続けてゆく。


 すみれがタケルと成仏した今、迷い込んだ人間たちを怪物から救えるものはいない。怪物をとめることができるのはきっと特別な力を持つ者だけだ。


 それでも怪物にとっては生け贄でしかない非力な人間である自分たちは、あそこに縛り付けられていた彼等を救うことができた。

 形や結果やこれから先がどうであっても、自分たちにできる最善のことはきっとあれがすべてだったのだ。


 自分たちは決して忘れはしないだろう。

 自分たちが迷い込んだあの日…………7月26日の「幽霊の日」を。




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登場人物紹介

瀬川 鉄人(せがわ てつひと)

漫画編集者。河上もなの編集。

もなの父からの信用はあまりない。

河上 もな(かわかみ もな)

漫画家。編集担当は瀬川。

専門学校生だが漫画家業のほうにのめり込み学校を休みがち。

あまり人の目を気にしないマイペース。

時津 サイ(ときつ さい)

普段は冷静だが緊急事態によく転倒する。

楠木甚之介,くるみとは飲み仲間。

楠木 甚之介(くすき じんのすけ)

骨董店の店主。

着流しを着こなす温厚な紳士。二十代にして老成した感がある。

時津サイ,くるみとは飲み仲間。

くるみ

トラック運転手。

女子力を失いたくないと思っている。

時津サイ,楠木甚之介とは飲み仲間。

しゃりんさん(キーパー)

初心者ぞろいのプレイヤーたちを真理へと導こうとする天の声。

ダイス

佐倉 すみれ(さくら すみれ)

宿泊客の一人。

柴山 タケル(しばやま たける)

宿泊客の一人。

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