第3話 古いノート
文字数 550文字
階段を上って三角屋根の展望台に着くと、三角屋根の下には木製の大きな丸椅子が一つあった。僕と妻は海の方を正面に二人並んで丸椅子に座った。海からの風が頬に当たり気持ちがいい。展望台からの眺めは水平線の向こう側まで見えそうなくらいの広い海を見渡すことができた。
ノートは湿気を含んだ後、乾いたためかめくるたびにパリパリと音をたてる。僕はふと、ノートを開く手を止めた。
「どうしたの?」と妻が訊いた。
「勝手に読むのはノートの主に悪いだろうか。」
最近ずっと胸の中がざわざわしている。ノートの主はいないと分かっているものの、僕は不安でいっぱいだった。すると、僕の手の上に妻がそっと手を乗せた。
「大丈夫、きっと大丈夫だよ。」
僕は顔を上げると、妻と目が合う。僕を写す妻の瞳は、僕の不安を包み込むように優しく強く潤んでいた。
「うん。」
妻と一緒に僕はノートを開いた。
ノートは次のように始まる。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
私には17年間、心にしまっておいたことがある。今、それをこのノートに書き留めておこうと思う。
40代も半ばになって、嬉しいことに私に婚約者ができた。これから人生のパートナーとなる彼女と新たなスタートを切るにために、そして自分自身を大切にするために、17年前の忘れられない人との想い出を語ろう。
ノートは湿気を含んだ後、乾いたためかめくるたびにパリパリと音をたてる。僕はふと、ノートを開く手を止めた。
「どうしたの?」と妻が訊いた。
「勝手に読むのはノートの主に悪いだろうか。」
最近ずっと胸の中がざわざわしている。ノートの主はいないと分かっているものの、僕は不安でいっぱいだった。すると、僕の手の上に妻がそっと手を乗せた。
「大丈夫、きっと大丈夫だよ。」
僕は顔を上げると、妻と目が合う。僕を写す妻の瞳は、僕の不安を包み込むように優しく強く潤んでいた。
「うん。」
妻と一緒に僕はノートを開いた。
ノートは次のように始まる。
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私には17年間、心にしまっておいたことがある。今、それをこのノートに書き留めておこうと思う。
40代も半ばになって、嬉しいことに私に婚約者ができた。これから人生のパートナーとなる彼女と新たなスタートを切るにために、そして自分自身を大切にするために、17年前の忘れられない人との想い出を語ろう。