第１３話　息抜き

「海へ行きませんか？」
　
　E君はいつもの夜の自主練習中に突然言った。
「どうしたんですか？急に。」
　私は突然の誘いに驚いて思わず訊いてしまう。
「毎日、一緒に自主練習ばかりではつまらないでしょう。たまには息抜きしませんか？」
「もし気を遣っているのなら、気にしないでください。私はこうしてE君の自主練習に付き添っているだけでも充分ですよ。」
　E君が私に気を遣っているかもしれないと思った。もしそうなら、そんなことはしてほしくない。だがそれは杞憂だったようだ。
「違いますよ。実は俺が行きたくて、海を眺めに行きたいんです。だから、F君を誘っているんです。」
　E君は穏やかな口調でそう言った。

　私たちはお互いの予定を合わせて海へ行くことになった。
　E君がレンタカーを借りてくれて、運転はいつも仕事で運転することも多い私が担当することになった。最初は、「俺が運転します！」と言っていたE君だったが、いざ運転してみると、思わず助手席の私の足に力が入ってしまうくらい危なっかしい運転だった。よろよろと走り出し、変なところでブレーキがかかる。E君は運転免許を持っているが、長い間、運転をしていなかったらしい。こんな訳で、私が運転手を務めることになったのだった。