第8話 うっかり…

文字数 421文字

 仕事上がり、いつものスーパーへ寄り、夕飯の総菜を購入した。
 アパート近くまで来て、ショルダーバッグからキーケースを取り出そうとするがない。キーケースにはアパートの鍵も入っている。私は慌てて記憶を辿り、スーパーで落とした記憶はなく、会社の個人ロッカーに忘れてきたかもしれないと思った。

 会社までの道のりには、今の現場である、あのビルの前を通り、地下鉄に乗らなければならない。ビルの幽霊話に慣れているとはいえ、日が暮れてからのビルは昼間とは違った雰囲気がある。
 こういう時のために、自転車を買っておけばよかった。自転車購入をケチった自分にやや後悔しながら、急いで会社へ戻った。早くキーケースを取りに行かねばという気持ちで、歩く足は自然と早くなる。

 ビルの前を通りかかった時、ビル二階、a劇団レッスン場に明かりが付いているのが見えた。誰かが居残り練習でもしているのか、それとも…。二月の夜は寒い。私は忘れ物を取りに行くため、足早で会社へ向かった。
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