第10話

文字数 1,068文字

 
「全員、至急捜査本部に戻れ!」
 そんなメールが、聞き込みに回っている刑事の元に届いた。
 それを目にした刑事こぞって、すぐさま捜査本部へ戻ってきた。彼らが着席するやいなや、その手元に、近藤結花の資料が配られた。
 山縣が、刑事らをねめまわすようにして言う。
「この資料をもとに捜査を行う。君たちは今後、矢吹警部の指示にしたがって行動するように。いいな」
「はい!」
「では警部、頼んだぞ」
「は! かしこまりました」
「ふむ」
 刑事たちの視線がいっせいに、矢吹に集まる。
「捜査するにあたり複数の班割をしておいた。班の人員と捜査する場所が記されたした用紙が、ここにある。これにしたがって各自行動してくれ。じゃ、宇喜多主任。この用紙をみんなに配ってくれ」
「了解です」
 それを受け取った宇喜多が、さっそく、刑事たちに配る。刑事たちはそこに記された自分の班長の元にそれぞれが集まった。そして、それぞれの班がそれぞれの場所へと、ただちに、散らばっていくのだった。
 
 
「俺たちの班は鑑識と一緒に、ガイシャの自宅の捜査だ」 
 宇喜多班は近藤結花が暮らしていた中野区本町へと鑑識とともに向かった。連絡を受けた科捜研の森村陽子も、ただちに現場へと向かった。
 宇喜多班とともに、森下班と大島班も中野区へと向かった。彼らは、ガイシャが住んでいた周辺の聞き込み捜査をするためだ。
 宇喜多はあらかじめ、結花が住んでいた部屋の管理人に連絡を入れて、解錠を頼んでおいた。
 現着した刑事と鑑識とが、さっそく、近藤結花の部屋に入る。また、森下班と大島班はそれぞれ周辺の聞き込みに向かった。
「それにしても、おかしいわね」
 現着すると、さっそく、近藤結花の部屋の中を調べていた陽子が、首をかしげて言った。
「なにがですか、陽子さん?」
 宇喜多がけげんそうな顔で、陽子に訊く。 
「どこにも灰皿がないの。いえ、それよりなにより、部屋に煙草臭はまったくしないし、壁に黄ばんだ箇所もまったく見当たらないわ」
 陽子はそう言って、しきりに首をかしげるのだった――。

 
「俺たちは、ガイシャが所属していたプロダクションだ」
 一方、小川刑事を班長とする刑事らは、近藤結花が勤めていた港区浜松町にあるプロダクションに聞き込みに向かった。
「俺たちは、ガイシャが出演していたテレビ局だ」
 また一方で、岩本刑事の班は、汐留にあるテレビ局に。
 そして、住吉警部補を班長とする東葛西警察署の刑事と鑑識は、事件現場にこそ解決の糸口が隠されている――いわば現場百遍ということで、殺害があった葛西臨海公園へと向かった。


つづく
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