第２３話「責任取って。」

「だから、責任取って私を幸せにして。」

　こうして僕らは交際することになった。
　彼女はその日から禁煙した。僕は数本しか吸っていないので問題なかったが、彼女は辛そうだった。そういう時は犬を抱きしめて気持ちを落ち着かせていた。
　僕らは時々会って犬の散歩をした。それから喫茶店を巡ったり、彼女の家で愛し合ったりしながら過ごした。
　彼女は少しずつ大学にも通うようになった。アルバイトは辞めたままだが、そういった事情も両親に話せるようになっていた。

　3月になり、ある土曜日の夕方。いつものように川沿いで犬の散歩をしていると、彼女は思い出したように言った。
「明日、猫カフェに行きましょう？」
「いいけど、この辺にあったかな。」
「あなたの家よ。ご両親に挨拶もしたいし。」

　両親に挨拶

　その言葉を聞いた途端に鼓動が速くなった。
「僕は構わないけど、少し遠いよ？」
「いいの。ちょうど私も実家に顔出そうと思っていたから。」

　翌朝。犬の散歩をして留守中の準備を終えると、我々は電車で12個離れた僕の最寄り駅に向かった。
　僕らは隣に座ってしばらく話していたが、気がつくと彼女は僕の肩に頭をもたれて眠っていた。安心したように眠る彼女の寝顔を眺めてから僕も寝た。

　頬をつつかれて僕は目覚めた。いつの間にか降りる駅の1つ手前まで来ていた。
「いつまで寝てるのよ。」
「君が先に寝たんじゃないか。」
「あなたの隣にいると安心して眠ってしまうのよ。」
　駅に着いて電車を降りると、冷たい風が吹いていた。
「3月でもまだ冷えるわね。」
　彼女は僕の腕にしがみつき、お互いを温め合いながら歩いた。

　店の前に着くと、僕の緊張を察した彼女が笑いながら言った。
「自分の家に帰るだけなのに、どうして緊張するのよ。」
「それはだって、」
「ほら、先に行って。」

　彼女に肩を叩かれて我が家の猫カフェに入ると、僕に気づいた両親がこちらにやって来た。