第13話

文字数 714文字

三鷹市上連雀にあるアパートの一室で、遠山愛の変死体が発見されてから、今日で三回目の朝を迎えた。

遺体の状況からして、他殺の可能性も十分に考えられたため、捜査員たちは一同に昼夜問わず、遠山愛の身辺調査にあたっていた。

 捜査開始直後、同じアパートの隣室で暮らす住人から有力な情報を得た。
午前零時頃、愛の部屋から壁を叩き付けるような物音と、ガラスが割れるような音を聞いたというのだ。

古いアパートなのでセキュリティーは脆く、防犯カメラも設置されてはいなかったが、もし、何者かが愛の部屋に侵入し、争いになったのだとしたら、必ず何処かに犯人の姿が映っているはずだ。


松野たちは手分けして、アパートの周辺施設にある防犯カメラをチェックして周った。
しかし、今の段階で、犯行当日に現場近くを行き来していた怪しい人物は特定できていない。


それより先に、些か奇妙な事実が判明した。
あれほど着衣に乱れがあったにも関わらず、遠山愛は、性的な暴行を受けていなかったのだ。

姦淫された形跡もなければ、第三者の体液すら、どこからも検出されなかったという。


「初めから殺人が目的だったんでしょうか。強姦はフェイクで」

「いや。強姦目的で押し入ったが、抵抗され、揉み合っているうちに誤って刺してしまったという可能性もあるんじゃないか。それで、本来の目的を果たせぬまま、諦めて逃走したとか」

「だとしたらやっぱり、遠山愛の携帯電話に残されていた小宮という男が怪しいですよね。奴には、強姦の前が何度もありますから。アリバイももしかしたら、誰かに協力してもらって偽造した可能性はありませんか?」


次々に飛び交う若い声を押し退けて、刑事課長の平川(ひらかわ)が、それはないと割って入った。
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