第1話
文字数 716文字
「はい、ボイスサポートセンターでございます。本日は、お電話ありがとうございます。あなたのカウンセリングを担当させて戴きます、平山と申します。どうぞよろしくお願い致します」
「…………殺したいほど、憎い男がいるんです…………」
「殺したいほど憎い相手がおられる?……なるほど……そうですか。わかりました。……きっと、よほど辛い思いをされたんでしょうね。……よろしかったら、もう少し詳しくお話を聞かせて戴けませんか?」
「…………おかしいですよね?罪を犯したら、罰を受けるのは当然じゃないですか。…………人を傷つけたり、苦しめたり、殺したりしたら、その人は一生、自分の罪にもがき苦しみながら生きていくのが本当じゃないんですか?」
「ええ、そうですね。……あなたが、そう思われるお気持ちは、私にもよく解りますよ」
「それなのに、彼は幸せそうに暮らしているんです。普通に仕事に行って、お金を貰って、結婚までして…………そんな当たり前の幸せ、手に入れる資格なんてないのに…………」
「……納得がいかないのですね?」
「……だから私、復讐しようと思っています」
「復讐、ですか?それは─」
「私が死ぬんです。彼のせいで……」
「……ごめんなさい。どういうことですか?」
「彼に私を殺させるんですよ。一生許されない罰を、彼の中に、私が刻んでやるんです」
「ちょっと待ってください……もう少し、ゆっくりお話を聞かせて貰えないかしら?そうだ、お名前、まずは、あなたのお名前を教えて戴けませんか?実名に抵抗があるようでしたら、仮名でも、子どもの頃のあだ名でも、何でも構いませんから」
「………………ヒナコ………………」
「ヒナコさん?」
「…………ナカガワ、ヒナコです………………」