第20話 「レイラ・セレスティア 1」【レイラ視点】
文字数 2,337文字
レイラの名前はレイラ・セレスティア。
自然豊かな小さな村で育った。
レイラは父と母があまり好きでは無い。
父はほとんど家に居ないし、
母は父がいない日、いつも家に知らない男の人を連れてきては、発情していた。
そのせいでレイラは眠れない日も多かった。夜はいつも騒がしい日々だ。
レイラは小さい頃外で遊ぶのが好きだった。
家は居心地があまりいいものでは無いから。
だからいつも、一人で落ちている木の棒を振り回し遊んでいた。
ある時、一人で剣を降っている男の大人が見えた。
ヒューマンだ。すごく筋肉質で迫力のある素振りをしていた。剣を振る度に、衝撃のようなものが出ている。思わずレイラはその剣さばきに目を奪われた。
そしてまたある時、その男は小さいヒューマンの男の子と剣を交えていた。
それを見た時心がザワついた。
(レイラも剣術を学びたい)
レイラは母に聞いてみることにした。
夜はいつも騒がしいから、お昼に聞いてみることにした。
すると、あっさり承諾してくれた。
(お母さん、ありがとう)
母は優しい人だった。
いつも男の人を連れてくるところ以外は嫌いではなかった。
レイラはこの時初めて母に感謝をしたかもしれない。
***
母は約束通り連れてきてくれた。
「……さて、ええっと、きみお名前は? 歳はいくつ?」
男性のヒューマンが聞いてきた。
「……レイラ……です。十一歳になります」
「レイラか。うん、いい名前だ。剣術を習いたいって?」
「……はい、レイラは剣術が習いたいです」
「もちろん大歓迎だ。だが、俺の剣術修行はきついぞ? 俺の息子もヒィヒィ言いながら何とかやっているぐらいだ。君はそれでもやりたいのか?」
「大丈夫です。レイラは強くなってパパとママを楽させてあげたいんです」
これは本心では無い。
レイラは早く家を出たかった。
居心地があまりいいとは言えないからだ。
レイラは人見知りだった。自分でもそれは分かっていた。
だから家に知らない男の人がいると落ち着かなかった。
そして小さな男のヒューマンが大人のヒューマンの背中からひょっこと顔を出し話しかけてきた。
「可愛い耳だね」
と。名をアスフィ・シーネット。
後の、レイラの大切な人になるヒューマンだ。
***
剣術の特訓はたしかに厳しいものだった。
でも家にいるよりかは何倍も楽しかった。
初めて自分の居場所はここなんだと実感した。
それ以来レイラは毎日のように母に頼み込み、
アスフィのお家にお邪魔することになった。
行けない日もあったが、行ける時はほぼ毎日のように行った。
そんないつものある剣術の特訓の日。
アスフィの父親……師匠がこんなことを言ってきた。
「……よし! お前ら風呂入ってこい! 汗でびしょびしょだろう」
レイラは初めて男の人とお風呂に入るということに動揺した。
この時レイラは十一歳、アスフィは十歳。
アスフィはどうやらレイラの体に興味津々みたいだった。
すごく一緒にお風呂に入りたそうだった。
レイラは恥ずかしかった。けど、ここで断ればもう剣術の特訓はできないと思った。また知らない男の人がいる家に戻される。そう思った。そしてレイラは覚悟を決めた――
「分かり……ました」
すると女性のヒューマンが入ってきた。
アスフィの母親だ。
「コラ! 二人で入っていいって私言った?」
「……えっと父さんが……」
「あの人の仕業ね……後でお仕置きしておくから一人ずつ入りなさい!」
「はーい」
「……分かりました奥様」
(助かった……)
***
またある剣術特訓の日。
アスフィが泣き言を言い出した。
「……僕は剣術の才能がありません。
二人のスピードについて行くことができません」
レイラはその言葉に酷く憤りを感じた。
何故なのかは分からない。ただ、無性に腹が立ったのだ。
恐らくだが、当たり前のように剣術を習える環境を持っているアスフィに嫉妬したのだろう。
レイラの両親に剣術の才能は無い。
両親2人とも魔法使いだ。だから――
「甘えるな!」
「……え?」
「才能が無くても頑張る気持ちが大事なんだ!! ………です」
(やってしまった……)
口が滑ってしまった。これはもう絶対に帰される、そう思った。
だが、帰されるどころか、アスフィはやる気に満ち溢れた。
さっきまで泣き言を言っていたのに……。
(なんでだろう……)
レイラはこの時からアスフィの事が気になり始めた。
***
そして二年が経った。
レイラはアスフィと仲良くなった。
この子は少しえっちな所はあるけど、逞しくてカッコイイ。
そう思った。
ある日、アスフィの家から怒鳴り声が聞こえた。
あの平和そうな家族からは想像ができないものだった。
それ故にレイラは何かあったのだと直感した。
「――そんなわけが無いだろぉ!!
おれが……俺がどれだけアリアを愛していたか……」
(師匠が怒ってる? )
レイラはアスフィの身に何かあったのかと、勢いでドアを壊しアスフィの家に入った。もちろん壊すつもりは無かったけど、体が勝手に動いていた。
……いつもの喧嘩だから。そう言われた。
(そんなハズない……)
レイラは納得したフリをしてアスフィの家に聞き耳を立てていた。
どうやらアスフィの母親が『呪い』の影響で目を覚まさないらしい。
アスフィは一人で人探しの旅に出ると言っていた。
レイラはこの時、これはあの居心地の悪い家を出る絶好のチャンス、そう思った。
「……ならレイラが行きます」
こうしてなんとか師匠の許可が降り、アスフィと旅に出ることになった。
自然豊かな小さな村で育った。
レイラは父と母があまり好きでは無い。
父はほとんど家に居ないし、
母は父がいない日、いつも家に知らない男の人を連れてきては、発情していた。
そのせいでレイラは眠れない日も多かった。夜はいつも騒がしい日々だ。
レイラは小さい頃外で遊ぶのが好きだった。
家は居心地があまりいいものでは無いから。
だからいつも、一人で落ちている木の棒を振り回し遊んでいた。
ある時、一人で剣を降っている男の大人が見えた。
ヒューマンだ。すごく筋肉質で迫力のある素振りをしていた。剣を振る度に、衝撃のようなものが出ている。思わずレイラはその剣さばきに目を奪われた。
そしてまたある時、その男は小さいヒューマンの男の子と剣を交えていた。
それを見た時心がザワついた。
(レイラも剣術を学びたい)
レイラは母に聞いてみることにした。
夜はいつも騒がしいから、お昼に聞いてみることにした。
すると、あっさり承諾してくれた。
(お母さん、ありがとう)
母は優しい人だった。
いつも男の人を連れてくるところ以外は嫌いではなかった。
レイラはこの時初めて母に感謝をしたかもしれない。
***
母は約束通り連れてきてくれた。
「……さて、ええっと、きみお名前は? 歳はいくつ?」
男性のヒューマンが聞いてきた。
「……レイラ……です。十一歳になります」
「レイラか。うん、いい名前だ。剣術を習いたいって?」
「……はい、レイラは剣術が習いたいです」
「もちろん大歓迎だ。だが、俺の剣術修行はきついぞ? 俺の息子もヒィヒィ言いながら何とかやっているぐらいだ。君はそれでもやりたいのか?」
「大丈夫です。レイラは強くなってパパとママを楽させてあげたいんです」
これは本心では無い。
レイラは早く家を出たかった。
居心地があまりいいとは言えないからだ。
レイラは人見知りだった。自分でもそれは分かっていた。
だから家に知らない男の人がいると落ち着かなかった。
そして小さな男のヒューマンが大人のヒューマンの背中からひょっこと顔を出し話しかけてきた。
「可愛い耳だね」
と。名をアスフィ・シーネット。
後の、レイラの大切な人になるヒューマンだ。
***
剣術の特訓はたしかに厳しいものだった。
でも家にいるよりかは何倍も楽しかった。
初めて自分の居場所はここなんだと実感した。
それ以来レイラは毎日のように母に頼み込み、
アスフィのお家にお邪魔することになった。
行けない日もあったが、行ける時はほぼ毎日のように行った。
そんないつものある剣術の特訓の日。
アスフィの父親……師匠がこんなことを言ってきた。
「……よし! お前ら風呂入ってこい! 汗でびしょびしょだろう」
レイラは初めて男の人とお風呂に入るということに動揺した。
この時レイラは十一歳、アスフィは十歳。
アスフィはどうやらレイラの体に興味津々みたいだった。
すごく一緒にお風呂に入りたそうだった。
レイラは恥ずかしかった。けど、ここで断ればもう剣術の特訓はできないと思った。また知らない男の人がいる家に戻される。そう思った。そしてレイラは覚悟を決めた――
「分かり……ました」
すると女性のヒューマンが入ってきた。
アスフィの母親だ。
「コラ! 二人で入っていいって私言った?」
「……えっと父さんが……」
「あの人の仕業ね……後でお仕置きしておくから一人ずつ入りなさい!」
「はーい」
「……分かりました奥様」
(助かった……)
***
またある剣術特訓の日。
アスフィが泣き言を言い出した。
「……僕は剣術の才能がありません。
二人のスピードについて行くことができません」
レイラはその言葉に酷く憤りを感じた。
何故なのかは分からない。ただ、無性に腹が立ったのだ。
恐らくだが、当たり前のように剣術を習える環境を持っているアスフィに嫉妬したのだろう。
レイラの両親に剣術の才能は無い。
両親2人とも魔法使いだ。だから――
「甘えるな!」
「……え?」
「才能が無くても頑張る気持ちが大事なんだ!! ………です」
(やってしまった……)
口が滑ってしまった。これはもう絶対に帰される、そう思った。
だが、帰されるどころか、アスフィはやる気に満ち溢れた。
さっきまで泣き言を言っていたのに……。
(なんでだろう……)
レイラはこの時からアスフィの事が気になり始めた。
***
そして二年が経った。
レイラはアスフィと仲良くなった。
この子は少しえっちな所はあるけど、逞しくてカッコイイ。
そう思った。
ある日、アスフィの家から怒鳴り声が聞こえた。
あの平和そうな家族からは想像ができないものだった。
それ故にレイラは何かあったのだと直感した。
「――そんなわけが無いだろぉ!!
おれが……俺がどれだけアリアを愛していたか……」
(師匠が怒ってる? )
レイラはアスフィの身に何かあったのかと、勢いでドアを壊しアスフィの家に入った。もちろん壊すつもりは無かったけど、体が勝手に動いていた。
……いつもの喧嘩だから。そう言われた。
(そんなハズない……)
レイラは納得したフリをしてアスフィの家に聞き耳を立てていた。
どうやらアスフィの母親が『呪い』の影響で目を覚まさないらしい。
アスフィは一人で人探しの旅に出ると言っていた。
レイラはこの時、これはあの居心地の悪い家を出る絶好のチャンス、そう思った。
「……ならレイラが行きます」
こうしてなんとか師匠の許可が降り、アスフィと旅に出ることになった。