第6話 「ゲンじい」

文字数 1,838文字

  旅に出ることにした俺とレイラは早速、
 この村を見て回ることにした。
 俺たちが住むここ、コルネット村は小さな村だ。
 畑仕事や野山をかけまわる子供たちがいる。
 しかしそんな小さな村でも商業を営んでいる店くらいはある。
 まずは鍛冶屋に向かった。父がいつもお世話になっているという店だ。
 
「まずはレイラの剣だね」
「そこら辺に落ちてる木の棒でいいよ」
「ダメだよ! すぐ折れるじゃないか」
 
 レイラは強いが頭があまり良くないのかもしれない。
 
「おや、こいつぁ小さなお客さんだな。
 ……うん? おおー! お前ガーフィんとこのガキか!」
 
 鍛冶屋のオヤジ。
 この村ではゲンじいの愛称で呼ばれている。
 俺も本名は知らない。
 大きな筋肉とは裏腹に背丈は小さい。
 白くて長い髭が特徴のあるハゲオヤジだ。
 
「なぜ、僕がガーフィの息子だと分かったんですか?」
「ん? そりゃよく似てるからな! 顔は父親似の戦士顔だな! 髪は……母親譲りか?」
 
 なんだ割といい人みたいで安心した。
 
「ってことは、お前やっぱり剣術の才能だったか! よかったな! 母親の才能の方じゃなくて」
 
 やっぱり嫌いだ。
 母さんを悪く言うやつは全員大嫌いだ。
 
「……いえ、僕は魔法の方です。母の血を受け継ぎました」
「なんと。その戦士顔で魔法の才能だったか」
 
 失礼なオヤジだが、きっと悪気はないのだろう。
 
「で、そこのお嬢さんは?」
「レイラ・セレスティアと言います。け、剣術の才能があり、剣を……見に来ました」
 
 相変わらず人見知りなとこは変わってないようだ。
 小さい頃に比べればまだマシな方だが。
 
「その歳で剣を持つと? ……わけアリか? 剣を持つということは剣士になるということだが、お嬢さん覚悟はあるのかい?」
「もう剣士です」
「そうか! なら売ってやる」
 
 案外あっさりだなと思った。
 このじいさんの見た目からして、
 子供に剣はまだ早い!! とか言うかと思ったが。
 それなら話が早いと、俺はこのじいさんに経緯を話してやる事にした。
 
「実は母さんが呪いに掛かりまして――」
 
 ……
 …………
 ………………
 
「――なるほどのう。旅の為の剣か。なら業物より扱いやすい剣がよかろう。これなんてどうだ?」
 
 と、店の奥から取り出しじいさんが見せてきた剣。
 黒くそれでいて光沢のある短剣だ。
 
「こいつぁ黒曜石で作られたショートソードだ。切れ味が落ちにくい逸品だ。どうだ?」
 
 これが業物じゃない?
 明らかにいま店に並べられている剣より高そうだ。
 
「えっと、お金はあまりなくてこんな高いのは……」
「金なんて要らねぇ! ガーフィは常連だ。しかもそいつのガキときたぁ! 金なんて取れるか!」
「で、でも――」
「――ならこうしようガーフィのガキ」
 
 じいさんは店から体を乗り出し、
 
「アリアの目を覚ますことが出来れば、倍にして金を寄越せ。それなら誰も損はしないだろ? まぁ最終的に得をするのは俺なわけだ! ガッハハハハ!!」
 
 こいつはいいオヤジだ。
 おれはこのオヤジを父の次に尊敬することにしよう。
 もちろん一番は母だ。
 
「ありがとうございます。ではありがたく頂戴します」
「ケッ! ガーフィのガキにしては礼儀正しいやつだな。もっと気楽に行こうや」
「オヤジさんの名前お聞きしても?」
「おらぁゲンゾウだ。この村ではゲンじいって呼ばれてる。ガキ、お前の名は?」
「僕はアスフィです。アスフィ・シーネット」
「アスフィか! 覚えたぜ。……アスフィこの剣はお前のもんだ持ってけ!」
 
 最高だぜゲンじい。
 ちなみに大人になってもこのゲンじいとは未だに付き合いがある。そんなオヤジとの初邂逅の日だ。
 
「ありがとーーー! ゲンじーーーー!!!」
「おめぇもなぁーガキーーー」
 
 こうしておれはゲンじいと別れた。
 ゲンじいと仲睦まじく話している間、
 レイラは地面のアリを数えていた。
 よほどあのじいさんが苦手なのか。いや、多分人見知りなだけか。
 
「ねぇ……アスフィ……その剣、レイラのじゃないの?」
「え? ああ、そうだった! ごめん!」
 
 
 ゲンじい、彼と居るとなんだか父と話している様な安心感があった。その居心地の良さに思わずレイラの存在を忘れ二人で話し込んでいた。
 ゲンじいも俺が使うと思い渡したんだろうけど、結局そのショートソードは俺ではなくレイラが使うことになった。
 
「……ごめんよ、ゲンじい」
 
 色々あったがレイラは黒曜石のショートソードを手に入れた。
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登場人物紹介

・アスフィ・シーネット 主人公。

12歳 ヒューマン 戦士顔に茶髪。


{回復魔法しか使えない……。何故だ……。


・レイラ・セレスティア 

13歳。

獣人 黒髪猫耳の女の子 胸が大きい

・エルザ・スタイリッシュ 

ミスタリス王国の女王

金髪 黄色目 ヒューマン

副団長 冒険者等級 S級認定 15歳


・ルクス・セルロスフォカロ 

21歳 身長、胸共に小さい女の子。

エルザと同じくS級認定。

ただし稀に『僕っ娘』になる。白髪。赤目。


・ゼウス・マキナ

???

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