第3話 「極めた者勝ち」

文字数 2,647文字

 十歳になって初めて友達が出来た。
 可愛い猫耳の少女。
 レイラ・セレスティア。
 彼女はその後も毎日のように家に訪ね、
 その度に彼女の母親に鼻の下を伸ばす俺の父だった。
 いつも薄着な彼女の母。もはや誘っているのではないだろうか。そんな風に思っても仕方がない。
 
「今日もよろしくお願いします」
「もっちろん! 任せてくださいよ!」
 
 そんな父親の態度に流石の母も気づいた。
 
「あなた? 浮気は許しませんよ?」
「え? あはは、ま、まさか!」
 
 母は顔が笑っていなかった。
 
 *** 
 
「さて、じゃあ今日も始めるぞ」
「「はいっ!」」
 
 レイラが来てから剣術の特訓が本格的になった。
 というのも、レイラの剣術の才能がずば抜けていたからだ。
 レイラは若い母親の言う通り、剣術の才能があった。
 既に特訓初日から、五歳から剣術を習っていた俺より、強かった。
 正直悔しかった。これが才能の差だ。
 この世界の才能は別名『祝福』とも言われる。
 才能を持ったものは祝福されるべき力を持つ。
 そんなことから、そう言われている。
 
「レイラ! 身のこなしはいいが、剣に力が入ってないぞ」
「はい!」
 
 特訓の時の父は、いつもと違う。
 いつものような頼りなさは感じない。
 むしろ頼もしく感じる。それほどまでに強かった。
 
「アスフィ! お前もぼーっとしてないで参加しろ!」
「は、はい!」
 
 正直ついていけない段階まで来ていた。
 才能が『ある』ものと『ない』ものの差。
 俺は剣術の才能が無いなりに、多少は剣が上手くなった。
 だがそれは剣術の才能があるものからすれば、まだまだ甘い。
 
 
「ふぅ、今日はここまでだ」
「「ありがとうございました」」
「……よし! お前ら風呂入ってこい! 汗でびしょびしょだろう」
 
「はい!!」
「はい! ……え?」
 
 レイラはなぜか乗り気じゃなさそうだった。
 俺はこんなにも乗り気なのに。
 
 
 ***
 
 
「レイラ早くしてよ」
「……レ、レイラは恥ずかしのでいいです」
「で、でも、ととと、父さんが一緒に入れって言ってただろう!? 師匠の言うことは絶対だろ!?」
 
 俺は興奮気味で言った。
 俺も十歳で年頃だ。女の子と風呂だって入りたい。
 あくまで友達として、だ。
 
「で、でも……」
「早くしてよ! お湯冷めちゃうよ!?」
 
 簡易的な大きな木の桶。
 そこに熱いお湯が溢れんばかりに入っている。
 
「……分かりました」
「さあはやく! はやく!」
 
 父の遺伝子が濃すぎたのか俺は自分を制御出来ずにいた。
 服を脱いでいくレイラと俺。
 一枚、、また一枚と脱ぐ度にレイラが顔を赤らめていた。
 
「ねぇ! その手をどけて! 見えな……ゴホンッ! 隠していたら一緒に入れないじゃないか!」
「……隠しながらでも入れ……ます」
「ダメだよ! 父さ……師匠は隠しながら入っちゃだめって言ってたよ?」
「分かり……ました」
 
 俺は咄嗟に嘘をついた。
 まぁこれでバレても母さんに怒られるのは父さんだしいいか。
 それよりも、とうとうレイラの胸が……!!
 レイラの胸は十一歳とは思えない程大きい。
 年齢にそぐわないものだ。俺は興奮が止まらない。
 鼻息が止まらない。俺もまたとても十歳とは思えない子供だった。
 
 そんなことを思っていたら母さんが入ってきた。
 
「コラ! 二人で入っていいって私言った?」
「……えっと父さんが……」
「あの人の仕業ね……後でお仕置きしておくから1人ずつ入りなさい!」
「はーい」
「……分かりました奥様」
 
 あと少しだったのに……。
 俺は残念でならなかった。
 
 次の日、父は気まずそうな顔をしていると思ったら、
 以外にも元気だった。どころか何だか母と距離が近い。
 仲良さげだ。昨日の夜やけに騒がしかったが、
 何があったんだろう。十歳の俺は知る由もない。
 
 
 ***
 
 
 今日も今日とて剣術特訓!
 ほとんど父とレイラの二人の特訓だ。
 レイラが来てから半年が経った。
 もう俺がついていけるレベルではなかった。
 
「レイラ! 力みすぎだ!」
「はい!」
 
 剣術の時のレイラは父と同じくいつもと違う。
 剣士は剣を持つと性格が変わるのだろうか。
 一方俺はと言うと、二人のスピードについていけず動けずにいる。
 
「アスフィ! また止まってるぞ!」
「……父さん!!!」
 
 俺はハッキリ言うことにした。
 だってこれ以上なにも言わず続けても意味が無いから。
 才能が無いのなら――
 
「なんだ?」
「……僕は剣術の才能がありません。
 二人のスピードについて行くことができません。なので、僕はもうここら辺でやめたいと思います」
「……すまない。悪かった。アスフィの才能は回復だということをすっかり忘れていた。父さんを許してくれ……」
「いえ、そんな……」
 
 そんな風に謝って欲しい訳ではなかった。
 ただ、わかって欲しかっただけなのだが。
 そんな風に思っていると-
 
「甘えるな!」
「……え?」
「才能が無くても頑張る気持ちが大事なんだ!! ………です」
 
 父と俺は唖然としていた。
 それは言葉を発した人物がレイラだったからだ。
 大人しく人見知りな印象だった。
 もちろん剣術の時は凛々しいのだが、
 剣術が終わるといつもの人見知りに戻る彼女。
 そんな彼女が、俺に言った。
 最後は弱々しい言葉になっていたが。
 
「ご、ごめん……」
「いえ……こちらこそごめん……なさい」
「いや! レイラの言う通りだ。アスフィ! 才能が無くても頑張る気持ちが大事だ! 前にも言ったろ、ヒーラーと言えど自分の身は自分で守れるに越したことはないと」
「うん……」
「たしかに剣術の才能を持った相手には勝てないかもしれない。だが、相手が魔法の才能を持った相手ならどうだ?」
「……あっ!」
「分かったか?」
 
 そうだ。才能はひとつだけだ。
 魔法を使う者が相手なら剣術を極めた者勝ちじゃないか!
 剣術を極めた俺は、魔法使い相手ならば負け無しになる……!
 流石父さんだ……。俺は素直に関心した。
 
「うん! 分かったよ、父さん!」
「分かったならいい。後、特訓の時は「はい」だ」
「はい! ……レイラもありがとう」
「……いえ、こちらこそごめんなさい」
 
 俺は二人の本気のスピードについて行くことは出来ないが、
 父も俺のことを分かってくれたようで、
 俺のレベルに合わせて特訓をしてくれるようになった。
 俺が言ったのも無駄では無かったようだ。
 
「アイタッ!」
 
 俺がついていける様になったその分痛みも増えた。
 でもこれは嬉しい痛みだ。
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登場人物紹介

・アスフィ・シーネット 主人公。

12歳 ヒューマン 戦士顔に茶髪。


{回復魔法しか使えない……。何故だ……。


・レイラ・セレスティア 

13歳。

獣人 黒髪猫耳の女の子 胸が大きい

・エルザ・スタイリッシュ 

ミスタリス王国の女王

金髪 黄色目 ヒューマン

副団長 冒険者等級 S級認定 15歳


・ルクス・セルロスフォカロ 

21歳 身長、胸共に小さい女の子。

エルザと同じくS級認定。

ただし稀に『僕っ娘』になる。白髪。赤目。


・ゼウス・マキナ

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