第44話「終結」
文字数 4,373文字
翌日、目を覚ますとエルザが俺よりも先に目を覚ましていた。
「アスフィ! 随分と遅いな!」
相変わらずエルザは元気だ。
……いや、元気を振舞っているだけなのかもしれない。
「アスフィよ! 随分とイメチェンしたではないか! 髪色もルクスと同じで身長まで高くなって! もはや別人だな! ハッハッハッ!」
ベッドの上に立ち笑うエルザ。こうして見れば確かにいつも通りだ。それも両腕があればの話だが……。
「……エルザ、今は休んだ方がいいです」
「ルクスの言う通りだ。俺も疲れていてお前の相手をしてる暇は無い」
「なんだつれないな…………こうでもしないとパパの死を受け入れられないのだ……せめて共に笑ってくれないか……」
俺達は何も言えなかった。勝利を収めたはずだが、あまりにも失ったものが多すぎる。その現状に素直に喜べなかった。
エルフォードとレイラ、そしてミスタリスの民。失ったものがあまりにも多すぎる。
「……これからどうするんだエルザ」
「分からん……国はこんな状態だ。もう再起不能だ」
今ミスタリスは死体と瓦礫の山だ。俺達は話し合った。
住民の死体をどうするか。話し合った結果、遺体は燃やすことにした。
放置しておくと疫病などが蔓延 する可能性があるからだ。
そして俺は、隣のベッドで眠っているレイラを見た。
なんて気持ちよさそうに寝ているんだ……。
「……エルザ」
「なんだ」
「レイラの遺体は置いといてくれないか?」
「……どうしてだ? 友なら弔ってやるべきじゃないのか」
それはそうだ……だが俺はまだ諦めきれなかった。
「俺は自分が何者かが分からない……力がどんどん増していくんだ」
「……」
「このまま行けばレイラを生き返らせることが――」
「やめたまえ。死者を冒涜するのはやめたまえよ」
キャルロットが部屋に入ってきた。
「やあ、アスフィ殿、ルクス殿……そしてエルザ女王」
「王子キャルロット……君も来ていたのか」
「エルザ女王、貴方が呼んだのでしょう」
二人は押し黙る。
そんな中俺は気になっていたことがあった。
「キャルロット、お前どこにいたんだよ」
「……なるほど。どうやらその姿を見るに、やはり人間 ではないようだ」
「質問に答えろ! お前、なにをしていたんだ!」
「…………少し気になっていたことがあってね。……黒いフードの者たち。彼らの正体さ」
「……なに?」
「僕は彼らの死体を調べていたのさ。フードの中の顔を見るためにね。そしたら驚きの事実が発覚したよ」
キャルロットはやれやれといった顔で言う。
「――『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』は、冒険者達だ。それも過去にしていた者、あるいは現役の者」
冒険者だと? なぜ冒険者がこんなこと?
キャルロットは続ける。
「中には僕の顔見知りもいたよ。そしてリーダー格の男……アスフィ、君が倒した男は――」
「S級冒険者の者だったのさ」
S級か……通りでエルザが苦戦するわけだ。
同じS級同士なら苦戦するのは無理もない。
それを聞いたエルザは口を開いた。
「……アイツは『赤い球』を持っていた。恐らくマジックアイテムだ……その球が光ったと思ったら、私の『超身体強化(ハイブースト)』が解除された。恐らく父もそれにやられた。でなければ父があんな小物にやられるわけが無い!!」
エルザは怒りの籠った言葉を吐いた。
「それはこれの事かい?」
キャルロットは割れた赤い破片を見せてきた。
「それは……!?」
「そのリーダー格の男の近くに落ちていてね」
律儀に拾ってきたのかキャルロット。
エルザにとってトラウマのようなそれを。
「……そうだ、これは君に渡そう、アスフィ殿」
「……なぜ俺なんだ」
「なんとなく、だよ」
俺はキャルロットに渡されたその赤い破片を見つめた。
これは何か力が封じ込められているな。調べる必要はありそうだ。それに、エルザにとってこれはあまり良くないものだ。父親のことを思い出すことになるだろう。だったら俺が預かるべきか。
「それと、エルザ女王。君の両腕は見つからなかった。だが――」
キャルロットは言う。
「父親の腕はある」
「……何が言いたい王子キャルロット」
「父親の腕をアスフィ殿にくっつけてもらえばいい」
「ふざけるなっ!!! 死者を冒涜するのは良くないといったのは君の方だろう!!」
エルザはキャルロットに激怒した。
それにしてもなぜ俺がくっつけられる前提で話をしているんだこの猫男は。
そしてキャルロットが続ける。
「このままだと君は、両腕がない状態だ。剣はもう二度と振れないよ?」
「……私の実力不足で失ったものだ。仕方ないだろう」
「それを復活できるチャンスと言っているんだ僕は」
エルザとキャルロットの会話は流石に見ていられなかった。
俺が間に入ろうとすると今まで黙っていたルクスが割って入った。
「――いい加減にして下さい、王子キャルロット。エルザは今それどころではないのです。用がないなら出ていってください。ここまで案内ありがとうございました」
「……僕はお邪魔かな。……分かったよ。また何かあればフォレスティアに来るといい。いつでも歓迎するよ」
そう言ってキャルロットは帰っていった。
「……すまない、ルクス」
「エルザが謝ることじゃありません」
ルクスもエルザもそして俺も。相当疲れているなこれは。
まだまだ休んだ方が良さそうだ……。
それにしても『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』が冒険者……か。なぜ冒険者がそんな怪しい集団に入ろうとするんだ?
何か入ると報酬でも貰えるのか?
それに……『ゼウス』って誰だ……?
俺たちは再び部屋で休むことにした。
***
俺たちは早朝から街を歩いていた。
遺体を弔う為だ。一日で終わることは無い人数だ。
遺体の回収と弔いは俺とルクスの二人で行った。
一日かけて行ったが全員弔うのには三日かかった。
早い者は既に遺体の腐敗が進み始めていた。その為、出来るだけ早く遺体を弔う必要があった。
そして部屋に戻ってきた。
「おかえり。アスフィ、ルクス。君達に任せてしまってすまない」
「私たちがやりたいことなので大丈夫です」
「ああ、それにこの体だと俺も遺体を難なく運べるしな」
俺は三日経った今でも、この姿のままだ。
身長は伸び、髪は白髪となり、目は赤黒い。
まさに見た目は化け物のようだ。
「……まるで『白い悪魔』だな!」
「やめてくださいエルザ」
「……いやエルザ、少し違うな」
そうだ。ルクスはもう『白い悪魔』なんかじゃない。
「『白い天使』と『白い悪魔』だ。この場合、俺が悪魔の方だ」
「もう……アスフィまで。私たちは二人とも悪魔でも天使でもありません!」
俺たちは笑いあった。久しぶりに笑った気がする。
もう一人、ここに笑うやつが居たんだが、今は笑うことすら出来ない。
レイラの遺体はルクスに頼んで氷漬けにしてもらった。
確証はない……だが、俺が自分の力を扱えるようになった時、レイラを甦らせることが出来るかもしれない。
なんの根拠もない話だ。それをルクスは二つ返事で承諾してくれた。
「……アスフィ、ルクス。君たちはどうするのだ」
決まっている。レイラと母さんを救う。
そして元凶である『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』と名乗るやつらを皆殺しにする。
アイツらは生きていてはダメだ。その為にも調べる必要がある。俺たちはアイツらのことを知らなすぎる。
それをエルザに伝えた。すると、
「……分かった。だが無茶はするな。アイツらは実力もそうだが、私がやられた様に怪しいマジックアイテムを使ってくる」
「ああ、気を付ける」
「はい」
俺とルクスは返事をした。
……
…………
………………
そして俺はエルザに謝る。
「……エルザ、謝りたいことがある」
「なんだ? 言ってみろ」
「……エルフォードの……両腕を持ってきた」
エルザは目を見開き、俺を睨んだ。そうだよな、分かってるそうなることは。だが、俺はそうなることを分かって持ってきた。
なぜか? ……俺達にはエルザが必要だからだ。
「アスフィ……君は私を怒らせたいのか? それとも、侮辱しているのか?」
「エルザこれは違うんです――」
「ルクス! …………俺が話す」
ルクスを黙らせた俺は深呼吸し、エルザに伝える。
「……ふぅ……俺にはお前が必要だエルザ・スタイリッシュ」
「……なに?」
「お前の力は、強さは! 俺たちが一番よく知っている! この先アイツら と戦う為には、お前の力が必要だ。だから俺達に……無力な俺達に力を貸してくれ。エルザ・スタイリッシュ!」
……エルザは暫く考え込んだ。
「………それは告白か?」
「……ああ」
「……なら仕方あるまい」
「え……? エルザ、いいんですか?」
「うむ、告白ならば仕方あるまい!」
「…………助かる」
「ハッハッハッ! いいって事だ! これで晴れて私たちは、両思いだなっ!!」
エルザはベッドに立ち両腕のない体を反り返し豪快に、
いつもの様に笑った。そんないつも通りの笑い方に、
俺とルクスには腕があるように見えた。
***
「……本当にいいんだな?」
「うむ、よろしく頼む。パパの手は、力は、意志は。私が引き継ぐとしよう」
俺はエルフォードの両腕をエルザに繋ぎ合わせるようにし、
「『ハイヒール』」
と唱えた。
接着には成功したようだ。
「…………成功だ」
「……これでパパといつでも一緒だ! ありがとうアスフィ!」
感謝をするのはこっちの方だ、エルザ。
……と俺はここであることに気付いた。
「……ん? その腕……」
「どうしたアスフィ……な、なんだと!?」
エルフォードの両腕を接着したはずが、
両腕は既にエルザのモノになっていた。
白い柔肌の、エルザ本来の腕である。
「あああああ!!! パパの腕がァァァァァァ」
「……いや良かっただろ」
「……ですね」
結果オーライだ。
エルザはパパとずっと一緒だと思ったのにー!
と一人だけ騒いでいるが、これはこれで良かっただろう。
腕だけ筋肉質な腕なんて違和感が半端ないしな。
こうして俺達に新たな仲間が加わった。
優秀で騒がしいお嬢様が。
「これからよろしくな、エルザ」
「お願いします、エルザ」
「任せろっ! 私の名はエルザ・スタイリッシュ! 亡き父、エルブレイド・スタイリッシュと祖父、エルフォード・スタイリッシュの血を受け継ぐ者!! そして――」
「おじいちゃん! パパ! その血は必ず遺しますっ!!!!! アスフィの血と共に!!!」
エルザは両腕を高く掲げ城中に響き渡る声で宣言した。
俺たちしか居ない、この城に。
「アスフィ! 随分と遅いな!」
相変わらずエルザは元気だ。
……いや、元気を振舞っているだけなのかもしれない。
「アスフィよ! 随分とイメチェンしたではないか! 髪色もルクスと同じで身長まで高くなって! もはや別人だな! ハッハッハッ!」
ベッドの上に立ち笑うエルザ。こうして見れば確かにいつも通りだ。それも両腕があればの話だが……。
「……エルザ、今は休んだ方がいいです」
「ルクスの言う通りだ。俺も疲れていてお前の相手をしてる暇は無い」
「なんだつれないな…………こうでもしないとパパの死を受け入れられないのだ……せめて共に笑ってくれないか……」
俺達は何も言えなかった。勝利を収めたはずだが、あまりにも失ったものが多すぎる。その現状に素直に喜べなかった。
エルフォードとレイラ、そしてミスタリスの民。失ったものがあまりにも多すぎる。
「……これからどうするんだエルザ」
「分からん……国はこんな状態だ。もう再起不能だ」
今ミスタリスは死体と瓦礫の山だ。俺達は話し合った。
住民の死体をどうするか。話し合った結果、遺体は燃やすことにした。
放置しておくと疫病などが
そして俺は、隣のベッドで眠っているレイラを見た。
なんて気持ちよさそうに寝ているんだ……。
「……エルザ」
「なんだ」
「レイラの遺体は置いといてくれないか?」
「……どうしてだ? 友なら弔ってやるべきじゃないのか」
それはそうだ……だが俺はまだ諦めきれなかった。
「俺は自分が何者かが分からない……力がどんどん増していくんだ」
「……」
「このまま行けばレイラを生き返らせることが――」
「やめたまえ。死者を冒涜するのはやめたまえよ」
キャルロットが部屋に入ってきた。
「やあ、アスフィ殿、ルクス殿……そしてエルザ女王」
「王子キャルロット……君も来ていたのか」
「エルザ女王、貴方が呼んだのでしょう」
二人は押し黙る。
そんな中俺は気になっていたことがあった。
「キャルロット、お前どこにいたんだよ」
「……なるほど。どうやらその姿を見るに、やはり
「質問に答えろ! お前、なにをしていたんだ!」
「…………少し気になっていたことがあってね。……黒いフードの者たち。彼らの正体さ」
「……なに?」
「僕は彼らの死体を調べていたのさ。フードの中の顔を見るためにね。そしたら驚きの事実が発覚したよ」
キャルロットはやれやれといった顔で言う。
「――『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』は、冒険者達だ。それも過去にしていた者、あるいは現役の者」
冒険者だと? なぜ冒険者がこんなこと?
キャルロットは続ける。
「中には僕の顔見知りもいたよ。そしてリーダー格の男……アスフィ、君が倒した男は――」
「S級冒険者の者だったのさ」
S級か……通りでエルザが苦戦するわけだ。
同じS級同士なら苦戦するのは無理もない。
それを聞いたエルザは口を開いた。
「……アイツは『赤い球』を持っていた。恐らくマジックアイテムだ……その球が光ったと思ったら、私の『超身体強化(ハイブースト)』が解除された。恐らく父もそれにやられた。でなければ父があんな小物にやられるわけが無い!!」
エルザは怒りの籠った言葉を吐いた。
「それはこれの事かい?」
キャルロットは割れた赤い破片を見せてきた。
「それは……!?」
「そのリーダー格の男の近くに落ちていてね」
律儀に拾ってきたのかキャルロット。
エルザにとってトラウマのようなそれを。
「……そうだ、これは君に渡そう、アスフィ殿」
「……なぜ俺なんだ」
「なんとなく、だよ」
俺はキャルロットに渡されたその赤い破片を見つめた。
これは何か力が封じ込められているな。調べる必要はありそうだ。それに、エルザにとってこれはあまり良くないものだ。父親のことを思い出すことになるだろう。だったら俺が預かるべきか。
「それと、エルザ女王。君の両腕は見つからなかった。だが――」
キャルロットは言う。
「父親の腕はある」
「……何が言いたい王子キャルロット」
「父親の腕をアスフィ殿にくっつけてもらえばいい」
「ふざけるなっ!!! 死者を冒涜するのは良くないといったのは君の方だろう!!」
エルザはキャルロットに激怒した。
それにしてもなぜ俺がくっつけられる前提で話をしているんだこの猫男は。
そしてキャルロットが続ける。
「このままだと君は、両腕がない状態だ。剣はもう二度と振れないよ?」
「……私の実力不足で失ったものだ。仕方ないだろう」
「それを復活できるチャンスと言っているんだ僕は」
エルザとキャルロットの会話は流石に見ていられなかった。
俺が間に入ろうとすると今まで黙っていたルクスが割って入った。
「――いい加減にして下さい、王子キャルロット。エルザは今それどころではないのです。用がないなら出ていってください。ここまで案内ありがとうございました」
「……僕はお邪魔かな。……分かったよ。また何かあればフォレスティアに来るといい。いつでも歓迎するよ」
そう言ってキャルロットは帰っていった。
「……すまない、ルクス」
「エルザが謝ることじゃありません」
ルクスもエルザもそして俺も。相当疲れているなこれは。
まだまだ休んだ方が良さそうだ……。
それにしても『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』が冒険者……か。なぜ冒険者がそんな怪しい集団に入ろうとするんだ?
何か入ると報酬でも貰えるのか?
それに……『ゼウス』って誰だ……?
俺たちは再び部屋で休むことにした。
***
俺たちは早朝から街を歩いていた。
遺体を弔う為だ。一日で終わることは無い人数だ。
遺体の回収と弔いは俺とルクスの二人で行った。
一日かけて行ったが全員弔うのには三日かかった。
早い者は既に遺体の腐敗が進み始めていた。その為、出来るだけ早く遺体を弔う必要があった。
そして部屋に戻ってきた。
「おかえり。アスフィ、ルクス。君達に任せてしまってすまない」
「私たちがやりたいことなので大丈夫です」
「ああ、それにこの体だと俺も遺体を難なく運べるしな」
俺は三日経った今でも、この姿のままだ。
身長は伸び、髪は白髪となり、目は赤黒い。
まさに見た目は化け物のようだ。
「……まるで『白い悪魔』だな!」
「やめてくださいエルザ」
「……いやエルザ、少し違うな」
そうだ。ルクスはもう『白い悪魔』なんかじゃない。
「『白い天使』と『白い悪魔』だ。この場合、俺が悪魔の方だ」
「もう……アスフィまで。私たちは二人とも悪魔でも天使でもありません!」
俺たちは笑いあった。久しぶりに笑った気がする。
もう一人、ここに笑うやつが居たんだが、今は笑うことすら出来ない。
レイラの遺体はルクスに頼んで氷漬けにしてもらった。
確証はない……だが、俺が自分の力を扱えるようになった時、レイラを甦らせることが出来るかもしれない。
なんの根拠もない話だ。それをルクスは二つ返事で承諾してくれた。
「……アスフィ、ルクス。君たちはどうするのだ」
決まっている。レイラと母さんを救う。
そして元凶である『ゼウスを信仰する者(ユピテル)』と名乗るやつらを皆殺しにする。
アイツらは生きていてはダメだ。その為にも調べる必要がある。俺たちはアイツらのことを知らなすぎる。
それをエルザに伝えた。すると、
「……分かった。だが無茶はするな。アイツらは実力もそうだが、私がやられた様に怪しいマジックアイテムを使ってくる」
「ああ、気を付ける」
「はい」
俺とルクスは返事をした。
……
…………
………………
そして俺はエルザに謝る。
「……エルザ、謝りたいことがある」
「なんだ? 言ってみろ」
「……エルフォードの……両腕を持ってきた」
エルザは目を見開き、俺を睨んだ。そうだよな、分かってるそうなることは。だが、俺はそうなることを分かって持ってきた。
なぜか? ……俺達にはエルザが必要だからだ。
「アスフィ……君は私を怒らせたいのか? それとも、侮辱しているのか?」
「エルザこれは違うんです――」
「ルクス! …………俺が話す」
ルクスを黙らせた俺は深呼吸し、エルザに伝える。
「……ふぅ……俺にはお前が必要だエルザ・スタイリッシュ」
「……なに?」
「お前の力は、強さは! 俺たちが一番よく知っている! この先
……エルザは暫く考え込んだ。
「………それは告白か?」
「……ああ」
「……なら仕方あるまい」
「え……? エルザ、いいんですか?」
「うむ、告白ならば仕方あるまい!」
「…………助かる」
「ハッハッハッ! いいって事だ! これで晴れて私たちは、両思いだなっ!!」
エルザはベッドに立ち両腕のない体を反り返し豪快に、
いつもの様に笑った。そんないつも通りの笑い方に、
俺とルクスには腕があるように見えた。
***
「……本当にいいんだな?」
「うむ、よろしく頼む。パパの手は、力は、意志は。私が引き継ぐとしよう」
俺はエルフォードの両腕をエルザに繋ぎ合わせるようにし、
「『ハイヒール』」
と唱えた。
接着には成功したようだ。
「…………成功だ」
「……これでパパといつでも一緒だ! ありがとうアスフィ!」
感謝をするのはこっちの方だ、エルザ。
……と俺はここであることに気付いた。
「……ん? その腕……」
「どうしたアスフィ……な、なんだと!?」
エルフォードの両腕を接着したはずが、
両腕は既にエルザのモノになっていた。
白い柔肌の、エルザ本来の腕である。
「あああああ!!! パパの腕がァァァァァァ」
「……いや良かっただろ」
「……ですね」
結果オーライだ。
エルザはパパとずっと一緒だと思ったのにー!
と一人だけ騒いでいるが、これはこれで良かっただろう。
腕だけ筋肉質な腕なんて違和感が半端ないしな。
こうして俺達に新たな仲間が加わった。
優秀で騒がしいお嬢様が。
「これからよろしくな、エルザ」
「お願いします、エルザ」
「任せろっ! 私の名はエルザ・スタイリッシュ! 亡き父、エルブレイド・スタイリッシュと祖父、エルフォード・スタイリッシュの血を受け継ぐ者!! そして――」
「おじいちゃん! パパ! その血は必ず遺しますっ!!!!! アスフィの血と共に!!!」
エルザは両腕を高く掲げ城中に響き渡る声で宣言した。
俺たちしか居ない、この城に。