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文字数 967文字
ヨウとの会話のない共同生活の時間を少なくするため、ヨシノリは柿内と共に中華料理店にアルバイトに行った。
中華料理店は、下宿から近い小田急線駅前にあるデパートの最上階にあった。
ヨシノリにとっては、都会での初めてのアルバイトだった。初めの内は、約束どおり皿洗いだけをしていたが、忙しくなるとウェイターにも駆り出された。この時ばかりは冷や汗ものだった。
ウェイターに慣れない頃、注文を上手く聞けずに困った。何回か注文の聞き間違いをする内に、ウェイターに回される事はなくなった。
この店に、新潟県出身の木原サトミと云う女がいた。
サトミは昼間看護学校に行き、夕方からこの店でウエイトレスをしている。ここに来出して二年目という、ヨシノリからすればベテランだった。
サトミは、都会に染まった風もなく、地方出身の匂いが残っていた。
「サンマーメンって何?」
ウェイターをしていた時、知らないメニューの事を聞いたのが、サトミとの初めての会話だった。
「モヤシラーメンの事よ、ワタシも最初解らなかったから大丈夫よ」
サトミは、優しく笑って云った。小馬鹿にした態度ではなく、あくまでも親切に教えてくれた。
地方出身で垢抜けない女。何処か土の香りがする仕草や話し方。そういうところに親近感を覚えた。
サトミは、誰とでも上手く話をしたが、ヨシノリには特別優しい。その事をふとした行為にヨシノリも感じる様になった。
サトミがヨシノリと話している時に、コックがサトミを冷やかしたりすると、サトミは真っ赤になり、
「もう、いやだぁ」
と云って、膨れた顔をする。
ヨシノリは、決して美人とは云えないサトミだが、嫌いではない。サトミのさり気ない気配りや、思いやりが嬉しかった。
「サトミちゃん、今晩は何処でデートするのさぁ」
コック達は、サトミをからかって楽しむ事が、唯一の息抜きだった。
「もう嫌だぁ、クニさんたらぁ、ドスケベぇ」
と云って、コック長のクニオさんに食って掛かる。その光景を見て、皆が笑うのである。
コック達は、サトミがヨシノリに気がある事を、サトミのちょっとした仕草で気付いていた。
ヨシノリにしても、そうやってからかわれる事に嫌な気はしない。
何時の間にか、二人はこの職場内の公認のカップルにされてしまった。純情者同士をからかって、成行きを楽しんでいた。
中華料理店は、下宿から近い小田急線駅前にあるデパートの最上階にあった。
ヨシノリにとっては、都会での初めてのアルバイトだった。初めの内は、約束どおり皿洗いだけをしていたが、忙しくなるとウェイターにも駆り出された。この時ばかりは冷や汗ものだった。
ウェイターに慣れない頃、注文を上手く聞けずに困った。何回か注文の聞き間違いをする内に、ウェイターに回される事はなくなった。
この店に、新潟県出身の木原サトミと云う女がいた。
サトミは昼間看護学校に行き、夕方からこの店でウエイトレスをしている。ここに来出して二年目という、ヨシノリからすればベテランだった。
サトミは、都会に染まった風もなく、地方出身の匂いが残っていた。
「サンマーメンって何?」
ウェイターをしていた時、知らないメニューの事を聞いたのが、サトミとの初めての会話だった。
「モヤシラーメンの事よ、ワタシも最初解らなかったから大丈夫よ」
サトミは、優しく笑って云った。小馬鹿にした態度ではなく、あくまでも親切に教えてくれた。
地方出身で垢抜けない女。何処か土の香りがする仕草や話し方。そういうところに親近感を覚えた。
サトミは、誰とでも上手く話をしたが、ヨシノリには特別優しい。その事をふとした行為にヨシノリも感じる様になった。
サトミがヨシノリと話している時に、コックがサトミを冷やかしたりすると、サトミは真っ赤になり、
「もう、いやだぁ」
と云って、膨れた顔をする。
ヨシノリは、決して美人とは云えないサトミだが、嫌いではない。サトミのさり気ない気配りや、思いやりが嬉しかった。
「サトミちゃん、今晩は何処でデートするのさぁ」
コック達は、サトミをからかって楽しむ事が、唯一の息抜きだった。
「もう嫌だぁ、クニさんたらぁ、ドスケベぇ」
と云って、コック長のクニオさんに食って掛かる。その光景を見て、皆が笑うのである。
コック達は、サトミがヨシノリに気がある事を、サトミのちょっとした仕草で気付いていた。
ヨシノリにしても、そうやってからかわれる事に嫌な気はしない。
何時の間にか、二人はこの職場内の公認のカップルにされてしまった。純情者同士をからかって、成行きを楽しんでいた。
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