文字数 1,162文字

 満月の夜。ヨシノリは、モックンとコウチャンの三人で集落のはずれにあるハルエの家に向かって歩いていた。
 ハルエは軽い知的障害があるため、障害者が働く施設に通っている。両親が三年前に交通事故で死んだため、一人暮らしをしていた。上に兄一人いるが、他市で結婚し家庭を持っていた。
 ハルエは可愛い顔をし、愛嬌もよく、集落の者から可愛がられている。皆がハルエに食べ物をあげたり、身の回りの世話をしていた。ハルエは、ちょっと見ただけでは障害がある様には見えない。ハルエの事を、還暦過ぎの地区長は自分の娘の様に可愛がり面倒を見ていた。
 しかし、何時の頃からか、ハルエは地区長にオモチャにされているとの噂が立ち始めた。それは、地区長がハルエの家から、深夜出て来るところを何度か目撃されたからである。
「ハルエは、地区長にされようがやろうにゃ、地区長にばっかりええ思いさせんと、オレらぁもやりに行こうぜ」
 三人でヌードグラビアを見ていた時、モックンがニヤついて云った。
「おぅ、そうやにゃ、おれらぁもハルエの乳揉みに行こうぜ、にゃあヨシノリ」
 とコウチャンも手でオッパイを揉む格好をして笑ってヨシノリを見た。
「けんど、バレたらどうするが?」
 と怯えた顔で云うヨシノリに、
「バレりゃあせん、夜中に行ったらハルエは股広げてまちようけん。ありゃ、好きもんやけん、大丈夫よや」
 とモックンが知った様な事を云う。
「ワレも早う、おなごとしたいろうがぁ」
 と云ってヨシノリの股間をまさぐる。
「やめれちゃ」
 ヨシノリが、慌てて後ろに飛び退く。
「じゃあ、今晩十二時過ぎに待ちようけん、こららったらゆるさんぞ! 家のもんに見つからん様に来いよ」
 モックンに強引に誘われ、ハルエの家に行くはめになったのである。
 ハルエの家は旧峠道の麓にポツンと一軒だけ存在している。この旧峠道を通る車はなく、ヨシノリたちは誰にも見つかる事なく、ハルエの家に辿り着いた。
 ハルエの家は真っ暗である。モックンが玄関の戸をそっと開けた。昔からこの集落では、鍵をする者はいない。
 三人は暗い土間の中へ、そろりそろりと手探りで入って行った。ハルエが何時も寝ているのは、居間の隣にある寝室である事をモックンは何故か知っていた。
 先にモックンが歩き、居間と寝室の境にある襖を開けて入った。その後にコウチャンとヨシノリも続いた。少しの物音にも、ドキッとする。ヨシノリの心臓は今にも爆発しそうなくらいに高鳴っている。
 暗闇に慣れて来ると、ハルエの寝ている布団が見えた。ハルエが布団の中で何やらゴソゴソと体を動かしているらしい。しかし、それはハルエの体を舐めている男だった事が解り、三人はギョッとした。
 布団から顔を出した男の顔が重雄だと解かると、ヨシノリは叫び声を上げてその場から逃げ出したのである。


 
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