12
文字数 1,085文字
アキへの返事を伸ばし伸ばしにしていたら、アキが三年の工藤という不良と付き合い始めた。
(やはり俺への話しは、冷やかしやったがや)
とヨシノリは、特別どうといった感情を持たずに、思った。
但し、その後ネズミから聞いた話しでは、アキがヨシノリに手紙を渡したのは、決して冷やかしではなかった様だ。
ネズミはアキの事を、
「アキは本当に好きもんやけん、男なしでは、いっときもようおらんがよや」
と、言った。
そしてネズミが、いかにも残念そうに、
「おまえも、もったいない事をしたよ」
と、意味深に笑った。
アキの男好きが、学校中に広まるのにそう時間はかからなかった。
アキの父親は、市内の他の高校で教頭をしているとの事だ。
アキは工藤の下宿で、毎日のようにセックスしているらしかった。アキのよがり声があまりにも大きく獣じみており、近所の評判になっているらしい。
アキとの事を忘れかけていた頃、ネズミとヒトミがヨシノリの下宿にやってきて、
「用事があるけん、今からちょっと一緒に来てくれん」
と、言った。
ヒトミ達について行った先は、アキが付き合っていた工藤のアパートだった。工藤は修学旅行に行っており不在だった。
部屋に入ると、アキが一人工藤のベッドに横たわっていた。
ヒトミとネズミは三十分もしない内に、そそくさと部屋から出て行ってしまった。
四人で話している時も、アキはずっとベッドに横たわり、タバコを吸うだけで、殆ど話をしなかった。
二人が帰ってしまった後、ヨシノリは狼狽した。
「浜辺は、今、三年の工藤さんと付き合いようらしいね」
長い沈黙に耐えきれず、ヨシノリが言った。
「まぁ、一応ね」
アキは、タバコの煙でワッカを作りながら、無表情に言う。
アキも口数が少なく、会話はすぐに途切れてしまう。
それから、二人はただ黙って、気詰まりな時間を過ごした。
ヨシノリにしたら、ヒトミとネズミの好意など、わかる筈もなく、ただこの気詰まりな沈黙を、どうやり過ごしたらいいか困惑していた。
ヨシノリは、工藤の部屋にあった漫画を読む事で、この息苦しさから逃れ様とした。
アキは、全く動じる風もなく、ただベッドに仰向けに寝たまま、タバコを静かに吹かし続けた。
「どうするが?」
痺れを切らした様に、アキが言う。
ヨシノリは、驚いた顔でアキを見た。こういった時には、只々狼狽し萎縮するだけだった。
「するが、せんがー」
アキが苛ついた声で言う。
ヨシノリは、少し向きになって、
「オレは、今日そんながで、きたがやないわ!」
と、精一杯突っ張ってみたが、タバコを吸う指がブルブル震えて、みっともなかった。
(やはり俺への話しは、冷やかしやったがや)
とヨシノリは、特別どうといった感情を持たずに、思った。
但し、その後ネズミから聞いた話しでは、アキがヨシノリに手紙を渡したのは、決して冷やかしではなかった様だ。
ネズミはアキの事を、
「アキは本当に好きもんやけん、男なしでは、いっときもようおらんがよや」
と、言った。
そしてネズミが、いかにも残念そうに、
「おまえも、もったいない事をしたよ」
と、意味深に笑った。
アキの男好きが、学校中に広まるのにそう時間はかからなかった。
アキの父親は、市内の他の高校で教頭をしているとの事だ。
アキは工藤の下宿で、毎日のようにセックスしているらしかった。アキのよがり声があまりにも大きく獣じみており、近所の評判になっているらしい。
アキとの事を忘れかけていた頃、ネズミとヒトミがヨシノリの下宿にやってきて、
「用事があるけん、今からちょっと一緒に来てくれん」
と、言った。
ヒトミ達について行った先は、アキが付き合っていた工藤のアパートだった。工藤は修学旅行に行っており不在だった。
部屋に入ると、アキが一人工藤のベッドに横たわっていた。
ヒトミとネズミは三十分もしない内に、そそくさと部屋から出て行ってしまった。
四人で話している時も、アキはずっとベッドに横たわり、タバコを吸うだけで、殆ど話をしなかった。
二人が帰ってしまった後、ヨシノリは狼狽した。
「浜辺は、今、三年の工藤さんと付き合いようらしいね」
長い沈黙に耐えきれず、ヨシノリが言った。
「まぁ、一応ね」
アキは、タバコの煙でワッカを作りながら、無表情に言う。
アキも口数が少なく、会話はすぐに途切れてしまう。
それから、二人はただ黙って、気詰まりな時間を過ごした。
ヨシノリにしたら、ヒトミとネズミの好意など、わかる筈もなく、ただこの気詰まりな沈黙を、どうやり過ごしたらいいか困惑していた。
ヨシノリは、工藤の部屋にあった漫画を読む事で、この息苦しさから逃れ様とした。
アキは、全く動じる風もなく、ただベッドに仰向けに寝たまま、タバコを静かに吹かし続けた。
「どうするが?」
痺れを切らした様に、アキが言う。
ヨシノリは、驚いた顔でアキを見た。こういった時には、只々狼狽し萎縮するだけだった。
「するが、せんがー」
アキが苛ついた声で言う。
ヨシノリは、少し向きになって、
「オレは、今日そんながで、きたがやないわ!」
と、精一杯突っ張ってみたが、タバコを吸う指がブルブル震えて、みっともなかった。
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