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文字数 1,085文字

 アキへの返事を伸ばし伸ばしにしていたら、アキが三年の工藤という不良と付き合い始めた。
(やはり俺への話しは、冷やかしやったがや)
 とヨシノリは、特別どうといった感情を持たずに、思った。
 但し、その後ネズミから聞いた話しでは、アキがヨシノリに手紙を渡したのは、決して冷やかしではなかった様だ。
 ネズミはアキの事を、
「アキは本当に好きもんやけん、男なしでは、いっときもようおらんがよや」
 と、言った。
 そしてネズミが、いかにも残念そうに、
「おまえも、もったいない事をしたよ」
 と、意味深に笑った。
 アキの男好きが、学校中に広まるのにそう時間はかからなかった。
 アキの父親は、市内の他の高校で教頭をしているとの事だ。
 アキは工藤の下宿で、毎日のようにセックスしているらしかった。アキのよがり声があまりにも大きく獣じみており、近所の評判になっているらしい。
 アキとの事を忘れかけていた頃、ネズミとヒトミがヨシノリの下宿にやってきて、
「用事があるけん、今からちょっと一緒に来てくれん」
 と、言った。
 ヒトミ達について行った先は、アキが付き合っていた工藤のアパートだった。工藤は修学旅行に行っており不在だった。
 部屋に入ると、アキが一人工藤のベッドに横たわっていた。
 ヒトミとネズミは三十分もしない内に、そそくさと部屋から出て行ってしまった。
 四人で話している時も、アキはずっとベッドに横たわり、タバコを吸うだけで、殆ど話をしなかった。
 二人が帰ってしまった後、ヨシノリは狼狽した。
「浜辺は、今、三年の工藤さんと付き合いようらしいね」
 長い沈黙に耐えきれず、ヨシノリが言った。
「まぁ、一応ね」
 アキは、タバコの煙でワッカを作りながら、無表情に言う。
 アキも口数が少なく、会話はすぐに途切れてしまう。
 それから、二人はただ黙って、気詰まりな時間を過ごした。
 ヨシノリにしたら、ヒトミとネズミの好意など、わかる筈もなく、ただこの気詰まりな沈黙を、どうやり過ごしたらいいか困惑していた。
 ヨシノリは、工藤の部屋にあった漫画を読む事で、この息苦しさから逃れ様とした。
 アキは、全く動じる風もなく、ただベッドに仰向けに寝たまま、タバコを静かに吹かし続けた。
「どうするが?」
 痺れを切らした様に、アキが言う。
 ヨシノリは、驚いた顔でアキを見た。こういった時には、只々狼狽し萎縮するだけだった。
「するが、せんがー」
 アキが苛ついた声で言う。
 ヨシノリは、少し向きになって、
「オレは、今日そんながで、きたがやないわ!」
 と、精一杯突っ張ってみたが、タバコを吸う指がブルブル震えて、みっともなかった。



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