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文字数 774文字
都会に来て二度目の春を迎えた。
ヨシノリは、この春から一人でアパート暮らしを始めた。
中華料理店でのアルバイトも辞め、パン工場でのアルバイトを始めた。
引っ越したのは、二階建てでトイレが共同の古いアパートだった。周辺に林がある静かな場所にあった。入居者の多くは学生だったが、中には独身の郵便局員や家族連れもいた。安普請のアパートだったが、家賃が安いという事が何より気に入った。
ヨシノリのアパートに訪ねて来る者は、サトミ以外に誰もいない。
サトミがアパートに来ない日は、ヨシノリは誰とも口をきかないで過ごした。
都会の暮らしに馴染めず、怯えて過ごしていたヨシノリは、学校に行っても誰とも口をきかなくなった。小田切ともマージャン以来、距離を置いていた。
この頃から、学校に行くよりバイトに行く日数の方が増えていた。バイト先でも誰とも話さず、僅かの休憩時間にも、伊藤整や太宰治を読み耽っていた。
(人と話しをしなくても、別にどうって事ないし、いらない気も使わなくていいし、清々する)
と高を括って始めた単身生活であったが、徐々に孤独が気持ちを蝕んでいった。
街に出かけた時など、
(これだけ沢山の人間がいて、オレが話しを出来る人間が一人もいないのか、これが所謂雑踏の中の孤独なのか)
と人混みの中、多くの人の流れに逆らい、人を避ける様に歩く時等、寂しさに打ちひしがれたものだ。
そんな時、ヤスオからアパートの管理人の所に電話がかかって来たのである。電話番号を実家から聞きだしたとの事だった。
「何とか志望する大学に入ることが出来て、今、T市のアパートに住んでいるんだ。
今度そっちへ遊びに行ってもいいかい?」
久しぶりに聞くヤスオの声が懐かしかった。
「いいよ、何時でも遊びに来いよ」
この時には、中学校の時の様な下心もなく、真心から友を待ち願う思いだった。
ヨシノリは、この春から一人でアパート暮らしを始めた。
中華料理店でのアルバイトも辞め、パン工場でのアルバイトを始めた。
引っ越したのは、二階建てでトイレが共同の古いアパートだった。周辺に林がある静かな場所にあった。入居者の多くは学生だったが、中には独身の郵便局員や家族連れもいた。安普請のアパートだったが、家賃が安いという事が何より気に入った。
ヨシノリのアパートに訪ねて来る者は、サトミ以外に誰もいない。
サトミがアパートに来ない日は、ヨシノリは誰とも口をきかないで過ごした。
都会の暮らしに馴染めず、怯えて過ごしていたヨシノリは、学校に行っても誰とも口をきかなくなった。小田切ともマージャン以来、距離を置いていた。
この頃から、学校に行くよりバイトに行く日数の方が増えていた。バイト先でも誰とも話さず、僅かの休憩時間にも、伊藤整や太宰治を読み耽っていた。
(人と話しをしなくても、別にどうって事ないし、いらない気も使わなくていいし、清々する)
と高を括って始めた単身生活であったが、徐々に孤独が気持ちを蝕んでいった。
街に出かけた時など、
(これだけ沢山の人間がいて、オレが話しを出来る人間が一人もいないのか、これが所謂雑踏の中の孤独なのか)
と人混みの中、多くの人の流れに逆らい、人を避ける様に歩く時等、寂しさに打ちひしがれたものだ。
そんな時、ヤスオからアパートの管理人の所に電話がかかって来たのである。電話番号を実家から聞きだしたとの事だった。
「何とか志望する大学に入ることが出来て、今、T市のアパートに住んでいるんだ。
今度そっちへ遊びに行ってもいいかい?」
久しぶりに聞くヤスオの声が懐かしかった。
「いいよ、何時でも遊びに来いよ」
この時には、中学校の時の様な下心もなく、真心から友を待ち願う思いだった。
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