最初のタカ

　グリーンランドの短い夏の間、ここの人々は海岸で暮らします。変わった形の皮の小屋を作り、魚を獲って、太陽が夜通し輝く季節を容器に過ごすのです。
　グリーンランドの海岸は、ところどころが切り立った高い崖になっています。ある鳥たちは、この遥か彼方の北の地に、夏の間巣をかけにやってきます。
　北の地の人が焚き火の近くに座っていると、よく怒りと哀しみが半々に混ざり合った「キア！　キア！　キア！」という叫び声が聞こえて来ます。見上げると、いつも淋しげなタカが、一番高くて一番荒涼とした崖に止まっているのが見えました。
　その叫びが聞こえて来ると、北の一家の父親は、笑ってタカのいる崖を見るのでした。小さな北の一家の子供たちは、新しい話をしてもらえるのを確信しながら、父親の近くへとそっと寄って行きます。
「タカのお話して！」子供たちは熱心にそう叫びました。
　そしてこれが、北の一家の父親が、変わった毛皮の服を着た、幼い子供たちに聞かせたお話です。

「昔々、小さな北の村に、変わった見た目のおばあさんが住んでいました。その首はとても短かったので、首はなく、頭がじかに肩に乗っているように見えました。
　村の人たちは、その変わったおばあさんを見るといつも笑いました。中には意地悪な人たちもいて、おばあさんの変わった佇まいを直接バカにしました。
　そういった意地悪のせいで、おばあさんはとても不幸でした。
　やがて、村の子供たちは、毎日おばあさんの小屋に行って、ふざけるようになりました。
　子供たちはからかっておばあさんを傷つけました。おばあさんが入り口のところに垂らしている熊の皮を引き上げて、子供たちに言って聞かせようとしても、聞こうともしません。
『首無し！　首無し！』躾の悪い子供が叫びました。そして、他の子たちもおばあさんを笑いました。
　そんなわけで、かわいそうなおばあさんは、ますます不幸になっていきました。自分をいじめる人たちを避けようと、おばあさんは崖のてっぺんに登り、大きな岩の端に座りました。ここなら、追いかけてくるのも難しいでしょう。
　そこで、安全で静かな場所で、おばあさんは何時間も座っていました。淋しくてたまらなくなると、おばあさんは両手を頭の上にあげて、大きな声で叫びました。
　小さな北の村の人々は、崖の上の淋しそうな姿をいつも目にしました。おばあさんが、村にある氷でできた自分の小屋にいる時間が、どんどん少なくなるのにも気づいていました。
　ある日の朝、北の村の子供が崖を見て、おばあさんがいつものように岩の上に座っているのだと思いました。ですが子供のお兄さんは、とても短い首をした変な鳥しか見えなかったと言うのです。
　ちょうどそのとき、鳥は翼を広げ、大きく羽ばたきました。
『キア！　キア！　キア！』変わった見慣れない鳥は叫びました。『キア！　キア！　キア！　私を首無しって呼んだのは誰だい？』
『ああ』子供たちのお父さんは、釣り小屋からそれを見ていいました。『お前たちはどっちも正しいんだろう』」