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文字数 871文字
ロッカーのなかに小学校時代に使ったトレイのような箱がいくつかあり、そのうちのひとつを持ってくる。
「こいつでやるのか」
「ガチのやつでお願いします」
箱を開けるとトランプが箱いっぱいに詰まっている。
そしていずれのセットも封は切られていない。カジノでも使われる細工がされていないことを示す封印である。
「
「お前、ここでそれを使うのか」
「一世一代の勝負ですから」
アカネ先輩は苦笑した。
それどころか
「逆にお前はこれでいいのか。お前は
と不満の表情をあらわにした。
「大丈夫です。今日は聖母マリア様の加護がありますんで」
僕は傍らのロザリオを示した。
「ポーカーは運じゃないって何度も言っているだろうが。論理と度胸と話術、全てが必要になる総合格闘技だ」
「なら、今回の僕たちの勝負に打ってつけじゃないですか。勝った方が全ての点において相手より秀でていることの証明になる」
「それで勝ったら、お前は一人罪を被る囚人となる。笑っていいのか?」
「そういう理屈ですから、笑ってください。最後に囚人になって笑うのは僕ですけどね」
僕は微笑んだ。
そして続ける。
「飲み物もある。食べ物もある。チップも全部使いましょう。今夜は寝かせませんよ」
「ふん、伊達男を気取ったつもりか」
彼女はお菓子の空き袋を後ろの机の上に手荒に移動させ、トランプセットを開封する。
「ありがとうございます。勝負に乗ってくれなければ
彼女のぴくりと眉間が動く。
「お前、カマをかければいいってもんじゃねえんだぜ」
彼女の激情の発露は、決して理性を失った状態を意味しないのだ。
なるほど、このカマは使い所が重要だ。
僕らの勝負の火蓋は切られた。