第120話 断ち切れない鎖 7 ~弛み始める鎖~ Bパート

文字数 7,873文字


 朝礼が終わった後、女生徒Aの訳の分からない視線にさらされながら、改めて先生に廊下へ呼ばれる。
「先生。さっきノートに何を書いたんですか?」 【いじめ防止推進法22・23条】
 まあ、あのタイミングなわけだから、何をどうしたってその内容の予想には難しくないけれど、やっぱり私にとって、頼りになる先生の口から直接聞きたい。
「ああ。いつ、誰が、どんな事を言ったのかって事を、大雑把にでもメモを取ろうと思ってな。それだけでもみんなが誰に対して、何を思ってるか分かるかと思って」
 言葉と共に、溜息を吐く先生。
「ところでさっきの月森の件だが、やっぱりまた俺の知らない所でまた、何かがあったのか?」
 その溜息は咲夜さんの事に気付けなかったと、自責している先生の気持ちなのかもしれない。先生が私たちと本当に真剣に向き合おうとしてくれていのを肌で感じる。
 その先生なら近いうちに間違いなく、答えにたどり着くと信じて私から答えは言わない。
「あったと言えばありましたけれど、女同士の喧嘩です。ただ、咲――月森さんが本当に辛くなった場合は、私に我慢するつもりはありません……と言うか我慢できないと思います」
 その代わりと言っては何だけれど、私なりの素直な気持ちを先生に伝えておく。
「岡本なら滅多な事は無いと思うが、暴力だけは辞めろよ。いや、先週みたいな正当防衛なら問題ないが、後先考えないでの暴力だけは絶対やめろよ?」
 ……先生の話を聞く限りだと少しマズいかも知れない。
「正当防衛の中に、友達の為に振るう暴力は入りますか?」
 でも私は先生をもう一度信用するって決めたのだ。だから心の中でマズいかもって思ったとしても、先生には私の事を遠回しに伝えておく。
「……お前なぁ。岡本が無暗にそう言う事をする生徒じゃないって事は、俺が“一番”よく知ってるから、ある程度まではかばってやるけど、限度だけは絶対に超えるなよ?」
 それだけで私のした事に対する想像が付いたのか、やっぱり嫌そうな表情を浮かべながら私に釘を刺しにかかる先生。
「先生なら、あの女生徒たちじゃなくて、私を信じてくれるって信じてますからっ」
 だから私も先生に対して、ごまかしの笑顔を浮かべる……ちょっと変な笑顔にはなったと思うけれど、優希君相手じゃないから、その辺りは自分の中で大目に見る事にする。
「……本当に岡本はアイツに似てるよ――」
 私の笑顔に何を見たのか、先生が小声で何かをつぶやく。
 まあ、その先生の表情で私が無暗に暴力を振るう訳じゃ無い事だけは伝わったかなと安心したところで、
「本当に岡本はイイ女なだけじゃなくて、イイ性格もしてるよな――暴力だけは駄目だぞ」
 久しぶりに先生が私に嫌そうな顔をして、私の頭の上に手帳を一瞬置くようにして(はた)いて改めて釘を刺される。
 ……あれ。イイ女って言うのは喜んで良い気がするのだけれど、イイ性格って言うのは素直に喜べない気がするのは何でだろう。

 え? 何々? 私の心が先生に気移りを始めているだろうって? そんな事ないよ? 私は優希君一筋なんだから? 
 ただ早く大人の女として認めてもらって? 優希君の心を全部盗みたいだけだよ?
……え? 全部疑問系なのはって、それは勘ぐりすぎだよっ。

 結局、今日は先生が何かのメモを取った事が、別の緊張感を生み出したのか、とても今日が初学期最終日とは思えない雰囲気の中で午前中だけの授業が始まる。


 初学期最後の授業も終わって、残るは午後の終業式だけとなった昼休み。
 朝の事があるからか、咲夜さんグループが極力私と視線を合わせないようにしながら、咲夜さんを連れ出してしまう。
 そして私の方も、昨日から今日にかけて、蒼ちゃんから何とか少しだけでも話を聞ければと思っていたのだけれど、結局蒼ちゃんの事は何も聞きだせないまま分からずじまいだった。
 だけれど、その頑なな態度から蒼ちゃんの状態を予想出来てしまっていたから、
「……」
 ――蒼依は愛ちゃんの為になるんだったら、
          ちゃんと協力もするし、保健室にも行くから―― (93話)
 それでも私は、罪悪感から蒼ちゃんに声を掛けられずに一人保健室へと向かう。
『健康診断の配慮』をお願いするのなら、どんなに遅くても今日までだと言われていたのだ。
「あら? どうしたの? 今日は何もなかったと思うけど、岡本さんも先生

と一緒にここで食べる?」
 それをこの腹黒教師は気付いているはずなのに、わざわざ私を挑発するような言い方をする。
「用事が無いと来たら駄目なんでしたら、帰ります」
 明らかに優珠希ちゃんや御国さんと違う対応をする先生。
 この対応を見て優珠希ちゃんはまだ、この腹黒が私の事を気に入っていると言うのか。
「ちょっとハレンチお『ちょっと優珠ちゃん! 岡本先輩はウチらの恩人で、友達でもあるんやから、ええ加減にせな怒んで!』――だけど、わたしたちの顔を見て、一声もなく帰ろうとしてるのよ、この女は」
 その上、態度の変わる腹黒じゃなくて、私への不満を口にする優珠希ちゃん。
「じゃあ優珠ちゃんの機嫌が悪くて、ウチにも不愛想になった時、優珠ちゃんの事、ボロクソに言うてもええねんな?」
 それをしっかりと御国さんがたしなめてくれる。
「ありがとう御国さん。優珠希ちゃんと違って優しくていい後輩で、私は嬉しいな」
 だから半分以上は優珠希ちゃんに当てつけるつもりで、御国さんに笑顔を向ける。
「先輩。それは違います。普段は全然素直やないさかい、ごっつ分かりにくいけど、ホンマの優珠ちゃんは誰よりも優しいんで、そこは岡本先輩がちゃんと理解したって下さい」
 そうしたら特別私が何かをした訳でも無いのに、御国さんが優珠希ちゃんの事を喋ってくれる。
「優しいって、優珠希ちゃんが?」
 だから、ここは御国さんのお言葉に甘えて、聞かせてもらうことにしようと、保健室の真ん中あたりにある机に私もお弁当の準備をさせてもらう事にする。
「そやなぁ。岡本先輩の事で言うたら先週の土曜『佳奈。お願い。その話だけは絶対にしないで。わたしは佳奈の事を信用出来る親友と思って話したのよ』――すみません。いくら先輩の頼みでも優珠ちゃんにこう言われてしもうたら、ウチからは何も言えません」
 優珠希ちゃんのお願いに、口を開きかけた御国さんの口が再び閉じてしまう。
「別に良いって。親友のお願いだったら仕方が無いし」
 実際私もかなりの部分で親友を優先させてもらっている手前、私だけがとやかく言うのも都合の良い話になってしまう。
「その代わり、私の尊敬する先輩からも優珠希ちゃ――痛っ」
 だから二人ともに関係のない朱先輩から聞く分には、大丈夫だと思ったのだけれど、私の正面に座っていた優珠希ちゃんから一発足蹴りを貰う。
「アンタ! 何でわたしの前であの魔女の名前を出すのよ」
「名前を出すのよって……名前なんて何も言ってないと思うのだけれど」
 しかもまた魔女って言っているし。
「だいたい昨日優珠希ちゃんが言っていたのは、連れて来るなって事だけで、その約束は守っているはずだけれど? それに私の方も魔女って言うのは辞めてって何度もお願いしたよね」
 そこんところをハッキリしてもらわないと、私にとっては大切な朱先輩の事。引くに引けない。

「……御国さん。二人っていつもこんな感じなの?」
 一方腹黒も御国さんと会話を始めてしまう。
「はい。この二人、顔を合わせたら大体喧嘩してます。でも優珠ちゃんが岡本先輩の事を気に入ってるって言うんは分かるんで、ウチに止めるつもりはないんです」
 口にして駄目な子を見るように優珠希ちゃんに目を向ける。
 そう言えば昨日も優珠希ちゃんから頭を撫でて良いって、取り方によっては頭を撫でて欲しいって言ってくれたんだっけ。
 朱先輩の事を何度も何度も魔女魔女って言われた分くらいには、からかうつもりだったのだけれど、少しずつでも私に気を許してくれているのだと言う事が、他からも分かった事が嬉しかった。だから一度腰を落ち着けた席を立って、優珠希ちゃんの元へと回り、優珠希ちゃんの頭の上に手を置く。
 今は両側で結わえている綺麗な金髪を梳くように、でも決して髪留めには触れてしまわないように。
「ホンマに優珠ちゃん。口ではそないな事ばっかり言うてるけど、態度ではめっちゃ素直なんやな。ウチも初めて知ったわ」
 そんな私たちに驚いた表情をする二人。
 むしろ私の前ではいつもこうなんだけれど、これは言った方が良いのか、言わない方が良いのか……私の知らない蒼ちゃんの事を、他人が知っていたらって思うと……何だか無性に面白くない。だったら、言わない方が良い気がする。
「……ねぇ岡本さん。その岡本さんの尊敬する人って、空木さんも面識があるの?」
 私たち三人が優珠希ちゃんを中心に和んでいると、どうしてかは分からないけれど一人違う空気を纏った穂高先生が私に聞いてくる。
「はい。この日曜日に私の方からお願いして会ってもらいました」
 この腹黒が何を考えているのか分からない以上、昔は面識があったみたいだけれど名前だけは伏せさせてもらう。
「……そんなに空木さんは信用出来るの?」
 気付けば腹黒が私の目の前にずいと迫って来ている。
「信用出来るって言うより、私にとって可愛い後輩の内の一人ですよ」
 でも人間「関係」の事で、この腹黒に変な伝わり方をして、勝手な事を吹聴されては困るからと、ここだけはハッキリと言わせてもらう。優珠希ちゃんからの信頼を掴み取るのは大変なのだ。
「良かったな優珠ちゃん。こんなにつんけんした話し方でも、可愛い後輩って分かって貰えて」
 私の言葉に顔を綻ばせた御国さんが、頬を可愛らしく赤らめた優珠希ちゃんに声を掛ける。
 だけれど私たちのピリッとした空気を感じている二人は、私たちから視線を切らない。
「……岡本さんが尊敬してるって言うくらいだから、その人の事は当然信用してる」
 そんなの当たり前すぎて返事をする気にもならない。
「その上、今、目の前にいる二人も信用してる」
 そんなの私にとって可愛い後輩なんだから当たり前だし、この二人を見て、どこに信用できない要素があるのか逆に教えて欲しい。
「挙句の果てに、あの一時期は視線を合わせるのすらも嫌っていた程の巻本先生ですらも、保健室に残して、付き添ってもらいながら話してくれていたわよね。あの時にはもう既に、先生への信用はあったのよね」 (99-100話)
 私が涙して涙して……一限目を飛ばしてしまったあの金曜日の事だ。
 あの時、先週の一連の事件の口頭確認に対して、先生に付き添ってもらっている。そして一つ思い出すと芋づる式に色々と思い出してくる。巻本先生が穂高先生が眇めた視線からかばってくれた事もそうだ。
 そう言えばあの時もしきりに穂高先生に対する、私の印象とか信用の事をしきりに気にしていたっけ。
 つまり今の穂高先生の纏う雰囲気はそう言う事なのかもしれない。
「前にも言いましたけれど、巻本先生との話は穂高先生には喋りませんよ」
 だったら先に釘だけは刺しておかないといけない。
「……ねぇ。どうしたら私の事信用して貰えるの? どうしたら今も張っている気を緩めてもらえるの?」
「逆に聞きますけれど、いきなり軟禁して、だまし討ちをして、挙句の果てに匂わせるだけ匂わしておいて何も言わない。私から情報を取ろうとするくせに、私には何も教えない。どこに先生を信用できる要素があるんですか?」 (68・79・80・82)
「岡本さんの言う通り、大人・学校側の事情で言えない事もあるけど、私は岡本さんの力になりたいだけなの。その為に知る機会があるのなら、何でも知りたいのよ。それはこの前も言った通りだから、私は手段を選ぶつもりはない。それはあの時岡本さんも納得してくれたんじゃなかったの?」
 さすがに口が堅いだけの事はある。私にも何を言っているのか、かろうじてわかるような話し方をしてくるこの腹黒。
 それにしても何でもって……その手段を選ばない先生に、私の大切な親友をお任せしないといけないのが、どうしようもなく悔しい。これほど自分が子供である事を、もどかしく感じる事は無い気がする。
「……そう言えば、何か用事があって保健室に来てくれたのよね」
 そして私の用事に思い当たったのか、
「ひょっとして中学期の事?」
 そのままズバリを言い当てる。でも、いくら朱先輩の言葉だったとしても、どこをどう取っても信頼出来ない先生に大切な親友である蒼ちゃんを任せたくない。
「……分かったわ。じゃあその件は何とかするから、せめて一言だけでも良いから何か話せる理由はない?」
 悔しくて悔しくて、その涙をこらえるためなのか、私の瞼が痙攣したみたいになっているのを見て取った先生。
 そこで私の弱みをまた握れるとでも思ったのか、話したくない・生徒の足元を見る先生なんて信用できないって言ったにもかかわらず、まだ理由を言えと言う。


 私の言葉がことごとく届いていなかった事にショックを受けた私が、自分の席に戻ろうとした時、
「先生。それじゃ、この女は絶対先生の事を信頼なんてしないわよ。ちなみにわたしに対して、先生が愛美先輩みたいな対応をしたら、すぐに見限るわよ」
 まさかの優珠希ちゃんから助言と言うか助け船。
「どうして? こっちの事情もギリギリまで譲歩して、ちゃんと岡本さんの言いたい事も汲み取ってるじゃない。これ以上私にどうしろって言うのよ」
 それに対して、先生

優珠希ちゃんに対して食い下がる。
 だけれど、私の気持ちを分かってくれているのか全く動じない。
「先生も、先生が生徒を助けるのに、理由がいるの?」
「だって岡本さんが困ってる内容を知らないと、助ける事も力になる事も出来ないじゃない!」
 揺れる先生の感情に対して、あくまで動じる事が全くない優珠希ちゃん。
「知ろうとするのも、助けようとするのも全部先生だけの都合じゃないの?」
「私だけの都合って……何、

に分かったような口を利くのよっ! こっちだって色んな大人の事情って言うのがあるのよ!」
 何かを焦っているのか、それともそれほどまでに私の持っているであろう情報が欲しいのか、穂高先生があくまで冷静な優珠希ちゃんに食って掛かる。
「何が子供のクセによ。子供だってゆうんなら、大人の事情なんて知った事じゃないわよ。確かにこれじゃ話にならないわね」
 それを全く相手にする事なく唾棄に近い形で、切り捨てる優珠希ちゃん。
「知らないのなら、大人しく言えば良いじゃない。今まで先生が悪いようにした事あった?」
 それでもなりふり構わず聞き出そうとする先生。
 ――だから岡本さんに何と言われても先生は証拠が欲しいの――(68話)
 そう言えば以前にも同じような事を思ったかもしれない。
「先生……バカじゃないの? 何で先生の事情から良い悪いの話になるのよ」
「じゃあどうしたら教えてくれるのよ!」
 あしらい続ける優珠希ちゃんに対して、明らかに先生の余裕が無くなっているのが分かる。
「先生が、愛美先輩の話を聞きたいのなら、どうして愛美先輩の質問には答えないの?」
「だからさっきから言ってるじゃない! こっちには大人の事情があるのよ!」
 どこまで行っても冷静な優珠希ちゃんに対して、先生の額にはまたうっすらと汗をかいている。
「だから! 先生が生徒(大人が子供)を守るのに、何で理由がいるのよ。それじゃあの腐ったやつらと同じじゃない」 ※【結】155話~161話小タイトルへ
「……」
 そして最終的には何も言えなくなる先生。
 私よりも後輩なのになんて会話を展開するのか。優珠希ちゃんの言わんとしている事は分かるけれど、私にはこんなにスマートに展開できる気がしない。
 しかも何の情報も無く、何の話をしているのかも分からないにもかかわらず、完膚なきまで先生を論破して黙らせる優珠希ちゃん。その頭の中がどうなっているのか、本気で見てみたい。
「愛美先輩ならゆわなくても分かってるとは思うけど、イチイチ馬鹿正直に理由なんてゆう必要ないから。理由なんて後から大人が都合の良いようにつけてしまうんだから、そんな事気にするだけ無駄よ」
 私の驚きなんて気に留める事無く、優珠希ちゃんが当たり前のように、ぞんざいな感じで言い放つ。
「岡本先輩の事ホンマに気に入ってんねんな。いつもみたいに言いっぱなしとちごうて、アフターケアもバッチリや」
「ちょっと佳奈。いい加減な事ゆわないで頂戴。この女を調子に乗らせると後が大変なのよ。だから今の内からわたしの方が上だってゆう事を、教えておかないといけないだけよ」
 言う事言ってスッキリしたのか、それとももう解決だって事で話がついた事になっているのか、二人が親友の会話を始める。
 まあ、優珠希ちゃんが上だって言う事を認める気はさらさらないけれど。もしもの時はその……優珠希ちゃんから、お……義姉(おねえ)さんと呼ばれる事になるのだから。
 ただ、私の方はこの二人に伝えないとまだこの話は終われない。こんなにも良い子なのに、私が不義理を働くなんて事は出来ない。
「優珠希ちゃん。私のために色々ありがとうっ」
 今、私に出来るとびっきりの笑顔と感謝の気持ちを込めてお礼を口にすると、
「だいたいあん――?!」
「ホンマに口ではす――ぅ?!」  
 二人ともが私の顔を見て驚き固まる。
 そう言えば優珠希ちゃんにお礼を言うのはこれが初めてかもしれない。などと考えていると、
「……そう言えば教頭先生から伝言を預かっているわよ。“岡本さんの事だから合っていても間違っていても答えは用意できていると思いますので、中学期の初日に養護教諭と一緒に話を伺います。ですから夏休みに統括会で相談するもよし、そのまま中学期に挑むもよしです”って。岡本さん。あの問題の答え。意味も分かった上で解答まで出せたの?」
 会長である倉本君にはもっと難問を吹っかけているくせに、何をそんなに驚くような事があるのか。
「……それは、中学期の時に教頭先生との話し合いで、言う事になるんですよね?」
 それに今の教頭先生からの伝言を聞いて、何でここで言わないといけないのか。先生の中でそこまで私の扱いと言うか、印象は悪いのか。
 まあこの先生からはもうどう思われても良いけれど、私がそんなに簡単に喋ると思われるのだけは心外だからと、口を貝殻のように閉じようと意識をする。
「……」
 私の言葉にも何も言い返さない穂高先生。
「先生はさっき、『健康診断の配慮』だけは何とかするって言ってくれたんで、大人の言葉を信用させてもらいますから」
 だからそれだけを言って、私の方からこの話を終わりにする。

 さっきの優珠希ちゃんの会話の展開を思い出して、その力の差を感じながら。

―――――――――――――――――次回予告―――――――――――――――――
          「彩風さん、倉本君はどうしたの?」
           昨日から本調子とはほど遠い会長
    「岡本さんありがとう。岡本さんなら分かって貰えるって思った」
            諦めない会長、頼りになる書記
    「岡本さんも、雪野の事と言い、俺の事と言い、ありがとうな」
        どうしても愛先輩から剥がせない、会長の心

           「私やっぱりここで待ってる」

         121話 孤独と疎外感2 ~他圧・無圧~
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