第24話 宮本浩次 其の3~コロナ禍~
文字数 2,148文字
みなさんこんにちは。一晩おいたカレーが美味しいのはなぜなのでしょう。
【TO-Y】(上條淳士:著)において、吉川晃司さん(第18回参照)をモデルにした哀川陽司というキャラが隣に引っ越してきた主人公TO-Yにカレーのおかわりをそういって求めに来るひとコマをふと思い出しました。TO-Yは「こういうヤツだよな~」とあきれるわけです。
*
2018年の大みそか。紅白歌合戦、椎名林檎&宮本浩次による【獣行く細道】を観てしまった私は宮本浩次の荒ぶるパフォーマンスに白目どころか頭も真っ白になった。というところまで来ました。
こうして2019年を迎えるわけですが。
一晩おいたカレーのように、この1年は宮本浩次というアーティストをどこかに寝かせていました。
自由にどこにでも出かけられる状況下にあったから。
好きなことを好きなように選択することが出来たから。
友達と会食したり、映画観たり、芸術に触れたり、買い物行ったり、漫画アニメを楽しんだり。音楽にそれを求めなくてもいいという精神的なゆとりがあったから。
それは当たり前のことだった。
*
2020年になって【コロナウイルス】という世界を沈黙させる出来事が起きる。
東京オリンピックも中……延期となり、緊急事態宣言というものが4月に発令され、あらゆる当たり前がはく奪された。
個人的大打撃も待ち受けていた。
【自宅待機からの雇い止めである】
コロナによるイベント中止のあおりを受けて4~5月まで自宅待機のうえ、そのまま契約終了を伝えられました。
【当たり前だった日常】を奪われる。その上、【仕事を失う】という緊急事態。派遣会社からは「求人が減っているのに対し、職を求める人が増えている。こちらで紹介できるといえないので、他の派遣会社にも登録してください」という実情を突き付けられる。
コロナ禍で正社員のリモートワークが始まり、派遣を雇う企業が減少。派遣切りをはじめ、タクシー、飲食、販売、イベント。ありとあらゆる業界で失業者が増えていく。
部屋に引きこもって1日中パソコンに向かい仕事へのエントリー生活がはじまるのだが、ひとつの求人に100人200人の応募があったりする。しかも企業はキャリアより若さを優先する。
これは長期戦になる。短期の仕事でつないで機会を待とう。
皮肉なことに、コロナで雇い止めにあった私はコロナで困っている人への給付金に関する短期の仕事で6~9月をしのぐことになる。
コロナ禍における、【誰でもいいから大人数必要であるコロナ事務仕事】に集まるのは40~60代と思われる人たちしかいませんでした。自分と同世代がいかに仕事を失い、定職につけないでいるかを目の当たりにしました。
*
この話、宮次沼と関係がないんじゃない? と思わないで欲しい。
このような状況だったからこそ【宮本、独歩。】というアルバムを手にして【昇る太陽】の【昇る太陽俺を照らせ】にしびれ、【冬の花】の【私が負けるわけがない】という魂の叫びが熱く刺さったのですから。
50過ぎはこのまま安定しない短期仕事をつないで綱渡りするしかないのか。
緊急事態宣言があけても【自粛】は続くし、飲食店は潰れていくし、住む家さえ失う人も増えている。
社畜時代の蓄えが役にたって4月からの収入激減りはなんとかしのげていたが、これがこのまま続いたとしたら、どうなってしまうのだろう。
*
そのタイミングで手にすることになった【宮本、独歩。】。
【獣行く細道】が入っている! ということに興味をひかれた。思えば2018年の紅白歌合戦の衝撃から気にはなっていたが交わることがなかった。CDならアレ(←何度も言うが、衝撃のパフォーマンスはアレとしか言いようがない)に気を取られることがない、音源だけなら【普通】に歌っているだろう。
その【普通】とはなんなのだとは思うが、独歩を手にして【ドツボ】への道が始まる。はじめの一歩である。
*
宮本浩次ソロファーストアルバム【宮本、独歩。】。
実を言うと、まずは通常版を姉に買わせ、ハマってからLIVEベスト盤を自分で購入したという経緯がある。最初はとにかく【獣行く細道】の全貌がちゃんとわかればいい。それ以外に興味がなかったのだ。
ところがだ。という言葉を使ってしまうところからして片足突っ込んでいるが。
やっと【獣行く細道】の全貌が頭に入ってきた。私が言うところの【普通に歌っている】がここにあった。歌の上手いお姉さんと歌の上手いおじさんがカッコイイ歌を歌っていた。
【これ、これなのよ! 私が聞きたかったのはこれなのよ!】
滝のような涙。ほんとうによかった。命は無駄にしてはいけないと思える名曲だった。
そして、1回通しでアルバムを聞き終えたとき、私はこう思っていた。
【なんか、いいんですけど。宮本浩次】
平穏だった生活がひっくり返った2020年に【宮本、独歩。】というアルバムを耳にした。
ドーンと刺さった楽曲が【昇る太陽】と【冬の花】だった。2020年現在、コロナ禍で自分が置かれている立場に、負けてたまるかという気持ちがわいてきた。
歌の力に胸を打たれる。
50代、確かに人生の物語は最終章と言える。宮本浩次と同学年な自分の心は笑いたがっていた。
~続く~
【TO-Y】(上條淳士:著)において、吉川晃司さん(第18回参照)をモデルにした哀川陽司というキャラが隣に引っ越してきた主人公TO-Yにカレーのおかわりをそういって求めに来るひとコマをふと思い出しました。TO-Yは「こういうヤツだよな~」とあきれるわけです。
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2018年の大みそか。紅白歌合戦、椎名林檎&宮本浩次による【獣行く細道】を観てしまった私は宮本浩次の荒ぶるパフォーマンスに白目どころか頭も真っ白になった。というところまで来ました。
こうして2019年を迎えるわけですが。
一晩おいたカレーのように、この1年は宮本浩次というアーティストをどこかに寝かせていました。
自由にどこにでも出かけられる状況下にあったから。
好きなことを好きなように選択することが出来たから。
友達と会食したり、映画観たり、芸術に触れたり、買い物行ったり、漫画アニメを楽しんだり。音楽にそれを求めなくてもいいという精神的なゆとりがあったから。
それは当たり前のことだった。
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2020年になって【コロナウイルス】という世界を沈黙させる出来事が起きる。
東京オリンピックも中……延期となり、緊急事態宣言というものが4月に発令され、あらゆる当たり前がはく奪された。
個人的大打撃も待ち受けていた。
【自宅待機からの雇い止めである】
コロナによるイベント中止のあおりを受けて4~5月まで自宅待機のうえ、そのまま契約終了を伝えられました。
【当たり前だった日常】を奪われる。その上、【仕事を失う】という緊急事態。派遣会社からは「求人が減っているのに対し、職を求める人が増えている。こちらで紹介できるといえないので、他の派遣会社にも登録してください」という実情を突き付けられる。
コロナ禍で正社員のリモートワークが始まり、派遣を雇う企業が減少。派遣切りをはじめ、タクシー、飲食、販売、イベント。ありとあらゆる業界で失業者が増えていく。
部屋に引きこもって1日中パソコンに向かい仕事へのエントリー生活がはじまるのだが、ひとつの求人に100人200人の応募があったりする。しかも企業はキャリアより若さを優先する。
これは長期戦になる。短期の仕事でつないで機会を待とう。
皮肉なことに、コロナで雇い止めにあった私はコロナで困っている人への給付金に関する短期の仕事で6~9月をしのぐことになる。
コロナ禍における、【誰でもいいから大人数必要であるコロナ事務仕事】に集まるのは40~60代と思われる人たちしかいませんでした。自分と同世代がいかに仕事を失い、定職につけないでいるかを目の当たりにしました。
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この話、宮次沼と関係がないんじゃない? と思わないで欲しい。
このような状況だったからこそ【宮本、独歩。】というアルバムを手にして【昇る太陽】の【昇る太陽俺を照らせ】にしびれ、【冬の花】の【私が負けるわけがない】という魂の叫びが熱く刺さったのですから。
50過ぎはこのまま安定しない短期仕事をつないで綱渡りするしかないのか。
緊急事態宣言があけても【自粛】は続くし、飲食店は潰れていくし、住む家さえ失う人も増えている。
社畜時代の蓄えが役にたって4月からの収入激減りはなんとかしのげていたが、これがこのまま続いたとしたら、どうなってしまうのだろう。
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そのタイミングで手にすることになった【宮本、独歩。】。
【獣行く細道】が入っている! ということに興味をひかれた。思えば2018年の紅白歌合戦の衝撃から気にはなっていたが交わることがなかった。CDならアレ(←何度も言うが、衝撃のパフォーマンスはアレとしか言いようがない)に気を取られることがない、音源だけなら【普通】に歌っているだろう。
その【普通】とはなんなのだとは思うが、独歩を手にして【ドツボ】への道が始まる。はじめの一歩である。
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宮本浩次ソロファーストアルバム【宮本、独歩。】。
実を言うと、まずは通常版を姉に買わせ、ハマってからLIVEベスト盤を自分で購入したという経緯がある。最初はとにかく【獣行く細道】の全貌がちゃんとわかればいい。それ以外に興味がなかったのだ。
ところがだ。という言葉を使ってしまうところからして片足突っ込んでいるが。
やっと【獣行く細道】の全貌が頭に入ってきた。私が言うところの【普通に歌っている】がここにあった。歌の上手いお姉さんと歌の上手いおじさんがカッコイイ歌を歌っていた。
【これ、これなのよ! 私が聞きたかったのはこれなのよ!】
滝のような涙。ほんとうによかった。命は無駄にしてはいけないと思える名曲だった。
そして、1回通しでアルバムを聞き終えたとき、私はこう思っていた。
【なんか、いいんですけど。宮本浩次】
平穏だった生活がひっくり返った2020年に【宮本、独歩。】というアルバムを耳にした。
ドーンと刺さった楽曲が【昇る太陽】と【冬の花】だった。2020年現在、コロナ禍で自分が置かれている立場に、負けてたまるかという気持ちがわいてきた。
歌の力に胸を打たれる。
50代、確かに人生の物語は最終章と言える。宮本浩次と同学年な自分の心は笑いたがっていた。
~続く~