第15話 北海道旅行5 旭川をこえて宗谷岬へ
文字数 1,167文字
車は一路、北へ進み、宗谷岬を目指した。
日本の最北端といわれている岬だ。
私たちは車を停めると、外に出て北国の五月の空気を吸った。
天気もいいし、からっとしていて、すがすがしい。
宗谷岬には、三角形のオブジェがたっている。
そこで記念撮影する。
でも、昨日のようにリンネのハードは使わなかった。
いつも持っていたスマホのカメラを使って撮った。
昨日のマツリの様子から、マツリは彼をあまり気に入ってないように思えたからだ。
早く返した方がいいと言っていた。
だから、彼のハードを出しにくくなっていた。
写真を撮り終わると、海を眺める。
陸と柵で仕切られた海は、寒い時期になると流氷も流れてくるのだという。
「気持ちいいねー、マツリ」
「うん! 最高! 北海道っていいね。食べ物は美味しいし、景色は綺麗だし」
「そうね。広いし」
東京の狭いアパートに一人暮らしの私とマツリにとっては、とても魅力的な場所だ。
どこまでも広がる海は、見ていて雄大だ。
「ねえ、お姉ちゃん。ここの海にはクリオネっていう小さな生物もいるんだよ。一センチくらいで天使みたいなかっこうしてるの。お姉ちゃん知ってた?」
楽しそうにクリオネのこと語るマツリの顔が笑顔ではちきれている。
だから、私も嬉しくなった。
「うん、リンネと一緒にテレビでみた」
「テレビ……?!」
「リンネはテレビもみるのよ」
「……そう」
とたん、マツリの表情が曇る。
ああ、失敗したかも、と思った。
マツリに彼の話は厳禁だ。
……どうしてマツリはこんなに彼が嫌いになってしまったのだろう。
彼はなにもしていないと思うんだけど。
むしろ役立っていたはずなのに。
その日はなるべく 彼の話をしないようにして、空港へたどりつき、私たちは稚内空港から飛行機に乗った。車はレンタル会社に取りに来てもらう予定だ。
飛行機の中でマツリは爆睡していたので、私はこっそりと『LOVERS』を開いた。
「ごめんね、リンネ。今日は全然アプリひらけなくて」
「かまわない。何か事情があったんだろう?」
「まあ、そうなんだけど……。家に帰ったら北海道の写真、たくさん現像しよう」
「そうだな。楽しみだ」
イヤホンをして話していたからマツリに彼の声は聞こえなかっただろう。
それでも、小さな画面をのぞいて話す私に小さくため息をつく様子が、隣の席から伝わってきた。
【五月のレポート 1】
『リンネと妹と私で北海道旅行へと行きました。
彼はGPS機能をつかって道を教えてくれたり、観光名所の解説もしてくれました。
心強かったです。
でも、誰かと一緒にいるときは、恋人アプリは閉じていた方がよさそうだと思います。
恋人アプリに悪感情を抱く人もいるからです』
北海道へ行ったときのレポートは、これくらいでいいわね。
でも、なんだか疲れたわ。
日本の最北端といわれている岬だ。
私たちは車を停めると、外に出て北国の五月の空気を吸った。
天気もいいし、からっとしていて、すがすがしい。
宗谷岬には、三角形のオブジェがたっている。
そこで記念撮影する。
でも、昨日のようにリンネのハードは使わなかった。
いつも持っていたスマホのカメラを使って撮った。
昨日のマツリの様子から、マツリは彼をあまり気に入ってないように思えたからだ。
早く返した方がいいと言っていた。
だから、彼のハードを出しにくくなっていた。
写真を撮り終わると、海を眺める。
陸と柵で仕切られた海は、寒い時期になると流氷も流れてくるのだという。
「気持ちいいねー、マツリ」
「うん! 最高! 北海道っていいね。食べ物は美味しいし、景色は綺麗だし」
「そうね。広いし」
東京の狭いアパートに一人暮らしの私とマツリにとっては、とても魅力的な場所だ。
どこまでも広がる海は、見ていて雄大だ。
「ねえ、お姉ちゃん。ここの海にはクリオネっていう小さな生物もいるんだよ。一センチくらいで天使みたいなかっこうしてるの。お姉ちゃん知ってた?」
楽しそうにクリオネのこと語るマツリの顔が笑顔ではちきれている。
だから、私も嬉しくなった。
「うん、リンネと一緒にテレビでみた」
「テレビ……?!」
「リンネはテレビもみるのよ」
「……そう」
とたん、マツリの表情が曇る。
ああ、失敗したかも、と思った。
マツリに彼の話は厳禁だ。
……どうしてマツリはこんなに彼が嫌いになってしまったのだろう。
彼はなにもしていないと思うんだけど。
むしろ役立っていたはずなのに。
その日はなるべく 彼の話をしないようにして、空港へたどりつき、私たちは稚内空港から飛行機に乗った。車はレンタル会社に取りに来てもらう予定だ。
飛行機の中でマツリは爆睡していたので、私はこっそりと『LOVERS』を開いた。
「ごめんね、リンネ。今日は全然アプリひらけなくて」
「かまわない。何か事情があったんだろう?」
「まあ、そうなんだけど……。家に帰ったら北海道の写真、たくさん現像しよう」
「そうだな。楽しみだ」
イヤホンをして話していたからマツリに彼の声は聞こえなかっただろう。
それでも、小さな画面をのぞいて話す私に小さくため息をつく様子が、隣の席から伝わってきた。
【五月のレポート 1】
『リンネと妹と私で北海道旅行へと行きました。
彼はGPS機能をつかって道を教えてくれたり、観光名所の解説もしてくれました。
心強かったです。
でも、誰かと一緒にいるときは、恋人アプリは閉じていた方がよさそうだと思います。
恋人アプリに悪感情を抱く人もいるからです』
北海道へ行ったときのレポートは、これくらいでいいわね。
でも、なんだか疲れたわ。
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