第13話 北海道旅行3 美瑛

文字数 1,323文字

「ここは青い池っていう、綺麗な湖があるところだよね、お姉ちゃん」
「そうね、コバルトブルーの湖なんて見たこと無いわ。自然の色じゃないくらい綺麗だそうよ」

 マツリと車を降りると、目的地まで歩いていく。
 ここは観光名所としても有名な『青い池』。
 素晴らしく澄んだ青い色の池がある場所なのだ。


 目の前に広がるコバルトブルーの池は、白い木々が立ち枯れていて、幻想的な雰囲気を醸し出していた。




「ここは本当に水が青いね。観光パンフレットの写真で見たとおりだわ」

 私がいうと、マツリもうんうんと頷いて、この青さに見惚れていた。

「でも、木が枯れているから、毒性があるのかな」
「リンネに聞いてみようか」
「え……うん」

 カバンからハードを出してアプリを開く。
 ヴンッと音がして彼が映った。

「タカラさん、旅行は楽しんでいる?」
「うん。すごく」

 私は自然に笑顔になるのを抑えられない。
 画面に映る彼の声を聞くと、とても幸せな気分になった。

「ちょっと聞きたいんだけど、北海道の『青い池』っていう観光名所あるでしょ。あそこの水はなんでこんなに青いの? 毒があるから木が枯れているの?」

 リンネから返事が来る前に、マツリがぽそりと言葉を零した。

「そんなことも分かるの? それで教えてくれるの?」
「そうよ。彼に聞けばなんでも分かるわ」

 私はまた誇らしくなる。
 しばらくの検索時間のあと、彼が口をひらいた。

「水の成分は水酸化アルミニウムを多く含んでいるみたいだな。そういった池の中にある微粒子が川の水と一緒になって、太陽光が当たると科学反応して青くなるらしい」

「水酸化アルミニウムって?」

 マツリが不思議そうに首をかしげた。
 私も科学者のはしくれ、これくらいは分かる。

「化粧品なんかに使われてるものね。薬にも使われてる」
「木にはよくない成分かな」
「どうかしら。そこまでは分からないけど、水が木の半分まで来てれば立ち枯れるのも分かるわ」

 この青の池の中で、カラマツやシラカバの木々が立ち枯れて水から出ているのを、マツリはこの鮮やかな色の水のせいだと思ったらしい。

「ネットには特に毒があるから枯れている、とは出てないな」

 私は自前のスマホでも少し調べて、結果をマツリに教えた。

「そうなの? なんだか自然の色じゃないみたい」
「もともと工事の結果的にできた人造池だからな」

 リンネも会話に加わって、私達は神秘的な色をたたえる『青い池』を鑑賞した。

「それにしてもリンネって本当に人間みたいに話をするんだね」

 マツリが真面目な顔で私に言う。

「? そうね。私も人間みたいだってちょっと不気味に思ったときもあったわ」
「今は? どう思っているの?」
「今はね……。楽しいわよ、彼と話をするのが」
「……そう」

 マツリは何か浮かない顔で私から目をそらして、『青い池』に視線を戻した。

 なぜマツリがそんな顔をするのか、良く判らなくて少し戸惑う。
 しかし、次の瞬間にはマツリが振りむいて私に笑いかけた。
 
「次はホテルで温泉とカニの食べ放題だよ。あたし、少し疲れたから早くホテルにチェックインしよう」
「ええ、そうね」

 さっきのマツリの反応は気のせいかな。
 
 私達は美瑛をあとにして、今度はホテルへと車を走らせた。
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