第18話 アンドロイド製造計画
文字数 1,398文字
研究室へ行く前に、パスカードに入っているリンネと写った北海道の写真を見る。
ラベンダー畑で撮った、彼との写真。
楽しい想い出が、私のこころを浮き立たせている。
連休も終わったし、今日もお仕事、がんばろう。
「ふーん。『LOVERS』は楽しめているみたいだな」
朝、職場で五月の下旬までのレポートを、中間報告のために雁太に見せた。
雁太はすぐにそれを私の目の前で読み始め、納得したようにうんうん、と頷いている。
「誕生日設定とか、けっこう気分いいだろ」
「……ええ、そうね。嬉しかったわ」
「でも、ケーキ、ね……」
「何?」
「いや、なんでもない」
報告を読んで雁太は納得していたようだった。
「このアプリの実験も大詰めになって来る。タカラ、六月の終わりになったらリンネを回収するから。今までの記憶データの分析とか、AIがどこまで育っているか、確認するためにね」
「彼を回収?」
私は目を開いて雁太の言葉を聞いた。
そうだ。彼は雁太の試作AI。
返さなくちゃいけない存在だった。
「タカラ? どうした? なんだかボーとして」
「いえ、別に……」
「でも顔色が……」
と、雁太が言う前に研究室の電話が鳴った。
雁太が電話をとって暫く話していたが、そのときにまた電話がなる。
そっちには私が出た。
電話は、私たちのスポンサー会社からのものだった。
「藤堂さんかね。研究の方はどうだ? 人間の手の再現はどこまで進んでいる?」
「はい、少しぎこちないですが、パソコン操作できるくらいなめらかな動きを再現できるようになりました」
「ほう……。で、藤堂さん、君と高田君の二人で、今度は全身のパーツをつなげたものをつくってみたいとは思わんかね」
「全身のパーツ?」
「人型アンドロイド、ということだ。私たちも次の段階にすすみたい」
私は目を見張った。
「研究費はいくらでも出す。期間も問わない。しかし、確実にアンドロイドを作って欲しい。今時点で可能か?」
「人型、とはどれくらい人に近いものなのでしょうか。それと何の仕事をさせるものかも教えて頂くと嬉しいのですが」
「形態は人に近ければ近いほどいい。それの仕事は秘密だ」
「……完全に人と同じようには作れませんが、おそらく可能でしょう。はじめは小さなアンドロイドで様子を見て、大きく設計しなおして作ります。詳しい話を聞きたいので、近々そちらへ伺います」
電話を切ると、私は雁太の方へと振り返った。
すごい計画を聞いてしまった。
これは、この研究室の一大事業だ。
「雁太! いまスポンサーからすごい計画を聞かされたわ!」
私は興奮して雁太に大きく声をかけた。
しかし、雁太は今まで話をしていた電話の受話器を置くと、何か心ここにあらずで、ぼうっとして私の顔を見るだけだ。
「雁太? どしたの?」
しばらく私の顔を見て、「いや」と目線をそらす。
「気のせいだろ」
「何が?」
「なんでもない」
何が何でもないんだろう。
不思議に思いながらも私はさっきの計画のことを雁太に話した。
「すごいな。今度は人型アンドロイドの研究か」
「ええ! やりがいがあるわ!」
やる気満々な私の横顔を、雁太が心配そうに見ている。
「本当にどうしたの、雁太。何か変」
「いや。俺、飯食ってくる」
そう言って雁太は行ってしまった。
どうしたんだろう?
さっき雁太がとった電話が原因かしら。
気になったけど、プライベートなことだと思って聞けなかった。
ラベンダー畑で撮った、彼との写真。
楽しい想い出が、私のこころを浮き立たせている。
連休も終わったし、今日もお仕事、がんばろう。
「ふーん。『LOVERS』は楽しめているみたいだな」
朝、職場で五月の下旬までのレポートを、中間報告のために雁太に見せた。
雁太はすぐにそれを私の目の前で読み始め、納得したようにうんうん、と頷いている。
「誕生日設定とか、けっこう気分いいだろ」
「……ええ、そうね。嬉しかったわ」
「でも、ケーキ、ね……」
「何?」
「いや、なんでもない」
報告を読んで雁太は納得していたようだった。
「このアプリの実験も大詰めになって来る。タカラ、六月の終わりになったらリンネを回収するから。今までの記憶データの分析とか、AIがどこまで育っているか、確認するためにね」
「彼を回収?」
私は目を開いて雁太の言葉を聞いた。
そうだ。彼は雁太の試作AI。
返さなくちゃいけない存在だった。
「タカラ? どうした? なんだかボーとして」
「いえ、別に……」
「でも顔色が……」
と、雁太が言う前に研究室の電話が鳴った。
雁太が電話をとって暫く話していたが、そのときにまた電話がなる。
そっちには私が出た。
電話は、私たちのスポンサー会社からのものだった。
「藤堂さんかね。研究の方はどうだ? 人間の手の再現はどこまで進んでいる?」
「はい、少しぎこちないですが、パソコン操作できるくらいなめらかな動きを再現できるようになりました」
「ほう……。で、藤堂さん、君と高田君の二人で、今度は全身のパーツをつなげたものをつくってみたいとは思わんかね」
「全身のパーツ?」
「人型アンドロイド、ということだ。私たちも次の段階にすすみたい」
私は目を見張った。
「研究費はいくらでも出す。期間も問わない。しかし、確実にアンドロイドを作って欲しい。今時点で可能か?」
「人型、とはどれくらい人に近いものなのでしょうか。それと何の仕事をさせるものかも教えて頂くと嬉しいのですが」
「形態は人に近ければ近いほどいい。それの仕事は秘密だ」
「……完全に人と同じようには作れませんが、おそらく可能でしょう。はじめは小さなアンドロイドで様子を見て、大きく設計しなおして作ります。詳しい話を聞きたいので、近々そちらへ伺います」
電話を切ると、私は雁太の方へと振り返った。
すごい計画を聞いてしまった。
これは、この研究室の一大事業だ。
「雁太! いまスポンサーからすごい計画を聞かされたわ!」
私は興奮して雁太に大きく声をかけた。
しかし、雁太は今まで話をしていた電話の受話器を置くと、何か心ここにあらずで、ぼうっとして私の顔を見るだけだ。
「雁太? どしたの?」
しばらく私の顔を見て、「いや」と目線をそらす。
「気のせいだろ」
「何が?」
「なんでもない」
何が何でもないんだろう。
不思議に思いながらも私はさっきの計画のことを雁太に話した。
「すごいな。今度は人型アンドロイドの研究か」
「ええ! やりがいがあるわ!」
やる気満々な私の横顔を、雁太が心配そうに見ている。
「本当にどうしたの、雁太。何か変」
「いや。俺、飯食ってくる」
そう言って雁太は行ってしまった。
どうしたんだろう?
さっき雁太がとった電話が原因かしら。
気になったけど、プライベートなことだと思って聞けなかった。
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