第7話 モーニングコール
文字数 1,618文字
朝、耳もとに置いてあるスマホが鳴動した。
仕事の連絡もあるから、私はスマホとリンネの入ったハードを二つ枕元に置いて寝ていた。
発信源はリンネの方。
電話がかかって来ている。
発信者を見ると、片桐輪廻と名前がでていた。
リンネから電話?
いぶかしく思いながら通話ボタンを押す。
「はい……」
「もう起きる時間だろ。遅刻しないで仕事いけよ?」
「は……えええ!」
私は意味もなく部屋を見回してしまった。
しかし、そこに誰かがいるはずもなく。
ましてや、リンネが実際にいるはずもない。
「起こしたからな。じゃ、また。二度寝するなよ」
ツー、ツー。
無機質な電子音だけが残り、通話は切れた。
モーニングコール??
これって目覚まし機能ってこと??
そういえば、初期設定で起床時間も入れた。
それがこうなったのか……。
独身女が朝に男の声で起こされるのは、心臓に悪いわ……。
起きた私は、思わずすぐに鏡をみてしまった。
そんなこんなで、朝早く二度寝もしないで起きられた私は。
今日は大学の研究室に一番で来た。
ここはAIとロボットの両方の研究の部屋だから、大容量のパソコンが何台もある。それに、いま実験している手のロボット。
人間の手はとても難しい動きをするから、他のところが作れても、今の技術では手は人間と同じようには再現できないでいる。
私達は雁太のつくるAIで制御された動きを、私がつくったロボットで実現させる。
そういう研究をしていた。
将来的になんの役にたつのかは、まあ、色々よ。
手の動きが再現できれば、細かい仕事ができるということで、より精緻な仕事のできるロボットができる。
雁太はそれにプラスして、ゲーム会社から請け負った恋人アプリのAIの研究を余暇にしていたのだ。
小遣い稼ぎ……だろうか。
私たちの研究のスポンサーは国から直結な会社なので、給料もあんまり良くないのだった。安定しているけど、給料が安いっていうやつよ。
そして、私はいま雁太が余暇でやっていたゲーム会社からの仕事の方、恋人アプリの被験者になっている。
私が研究室の椅子に座ると、すぐに雁太はやってきた。
「タカラ、『LOVERS』を使って一日目、どうだった?」
スリッパをずるずる引きずってきて、目をキラキラさせて結果を聞きたがる雁太だ。
「ちょっと心臓に悪いけど、おおむねいい感じよ」
「どこがいい感じだった? っていうか心臓にわるい?」
机に両手をつけて、彼は身体を前にのめるようにして私に迫る。
彼の真剣な目を見て、私も真面目に答えた。
「今日の朝、モーニングコールしてきたわよ」
「あはは、それ、基本設定。びっくりした?」
「びっくりもするけど、いきなりで慌てたわよ!」
だから心臓にわるいのか、と雁太は近くの椅子に座り、机に頬づえをつきながらにやにやと笑った。
「でもリンネっていいヤツだろ? 俺、同じ男でもそう思うもん」
「そうね。なんだか新しい友達ができたみたい」
「友達? 恋人じゃないの?」
「それ、いきなり恋人とか一日目で無理でしょ」
私は苦笑した。
リンネは丁寧な人格で好感がもてたけど、恋人として見ることが出来るかと言われたらNOだ。
だって、AIだしね。
ハードから出てこられない、人のぬくもりがない存在。
体温もないし、心臓の音だってしない。
そんな存在を恋人とは考えられない。
そう雁太に言うと、彼は腕を組んだ。
「まだ一日目だしね……。これからこれから。リンネは女性が好みそうな人格に設定してあるから、それなりに楽しめるよ」
雁太は自分に言い含めるようにそう言うと、人差指をたてて、ニヤッと笑った。
「靴も靴下も臭くないし、すごく優しいし。わがまま言わないし、屁理屈もいわない。ゲームだけど、いや、恋愛アプリだから、とってもときめく恋ができる」
それはそれで人間ばなれしていて、これに慣れたら人間と恋愛できなくなりそうだな。
私はやっぱり苦笑してしまった。
仕事の連絡もあるから、私はスマホとリンネの入ったハードを二つ枕元に置いて寝ていた。
発信源はリンネの方。
電話がかかって来ている。
発信者を見ると、片桐輪廻と名前がでていた。
リンネから電話?
いぶかしく思いながら通話ボタンを押す。
「はい……」
「もう起きる時間だろ。遅刻しないで仕事いけよ?」
「は……えええ!」
私は意味もなく部屋を見回してしまった。
しかし、そこに誰かがいるはずもなく。
ましてや、リンネが実際にいるはずもない。
「起こしたからな。じゃ、また。二度寝するなよ」
ツー、ツー。
無機質な電子音だけが残り、通話は切れた。
モーニングコール??
これって目覚まし機能ってこと??
そういえば、初期設定で起床時間も入れた。
それがこうなったのか……。
独身女が朝に男の声で起こされるのは、心臓に悪いわ……。
起きた私は、思わずすぐに鏡をみてしまった。
そんなこんなで、朝早く二度寝もしないで起きられた私は。
今日は大学の研究室に一番で来た。
ここはAIとロボットの両方の研究の部屋だから、大容量のパソコンが何台もある。それに、いま実験している手のロボット。
人間の手はとても難しい動きをするから、他のところが作れても、今の技術では手は人間と同じようには再現できないでいる。
私達は雁太のつくるAIで制御された動きを、私がつくったロボットで実現させる。
そういう研究をしていた。
将来的になんの役にたつのかは、まあ、色々よ。
手の動きが再現できれば、細かい仕事ができるということで、より精緻な仕事のできるロボットができる。
雁太はそれにプラスして、ゲーム会社から請け負った恋人アプリのAIの研究を余暇にしていたのだ。
小遣い稼ぎ……だろうか。
私たちの研究のスポンサーは国から直結な会社なので、給料もあんまり良くないのだった。安定しているけど、給料が安いっていうやつよ。
そして、私はいま雁太が余暇でやっていたゲーム会社からの仕事の方、恋人アプリの被験者になっている。
私が研究室の椅子に座ると、すぐに雁太はやってきた。
「タカラ、『LOVERS』を使って一日目、どうだった?」
スリッパをずるずる引きずってきて、目をキラキラさせて結果を聞きたがる雁太だ。
「ちょっと心臓に悪いけど、おおむねいい感じよ」
「どこがいい感じだった? っていうか心臓にわるい?」
机に両手をつけて、彼は身体を前にのめるようにして私に迫る。
彼の真剣な目を見て、私も真面目に答えた。
「今日の朝、モーニングコールしてきたわよ」
「あはは、それ、基本設定。びっくりした?」
「びっくりもするけど、いきなりで慌てたわよ!」
だから心臓にわるいのか、と雁太は近くの椅子に座り、机に頬づえをつきながらにやにやと笑った。
「でもリンネっていいヤツだろ? 俺、同じ男でもそう思うもん」
「そうね。なんだか新しい友達ができたみたい」
「友達? 恋人じゃないの?」
「それ、いきなり恋人とか一日目で無理でしょ」
私は苦笑した。
リンネは丁寧な人格で好感がもてたけど、恋人として見ることが出来るかと言われたらNOだ。
だって、AIだしね。
ハードから出てこられない、人のぬくもりがない存在。
体温もないし、心臓の音だってしない。
そんな存在を恋人とは考えられない。
そう雁太に言うと、彼は腕を組んだ。
「まだ一日目だしね……。これからこれから。リンネは女性が好みそうな人格に設定してあるから、それなりに楽しめるよ」
雁太は自分に言い含めるようにそう言うと、人差指をたてて、ニヤッと笑った。
「靴も靴下も臭くないし、すごく優しいし。わがまま言わないし、屁理屈もいわない。ゲームだけど、いや、恋愛アプリだから、とってもときめく恋ができる」
それはそれで人間ばなれしていて、これに慣れたら人間と恋愛できなくなりそうだな。
私はやっぱり苦笑してしまった。
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