第11話 北海道旅行1 飛行機のなかで

文字数 1,177文字

 マツリと私は、空港で待ち合わせていた。
 私の髪は短くて波打っているけれど、マツリはストレートのロングで、それ以外、私たちは背格好もわりと似ている姉妹だ。

「お姉ちゃん、久しぶり!」
「久しぶり、マツリ! 元気だった?」

 姉妹で旅行は、遠慮がいらないからとても気楽で、マツリとは何回か一緒に旅行へ行ったことがある。遠慮がいらない分、喧嘩になりそうにもなるが、私達はおおむね仲がよかった。

元気溌剌なマツリと飛行機に乗り込む。
 
飛行機の中でマツリが寝ている間に、私はリンネと話をしようと思った。

ハードを出してアプリを開く。
そこにはいつものリンネがいる。

「リンネ、いま飛行機の中。あと数時間後には北海道につくわ」
「ああ、今日は旅行の日だったな。北海道についたら俺が観光案内してあげるよ」
 
 リンネはそう言うと、紺色のスーツに洋服が切り替わり、「リンネ観光」と書かれた旗を持って悪戯っぽく笑った。

「添乗員? のマネなの?」
 
 私も口元がゆるむ。
 
「そう。GPSとネット機能を使って、観光案内してあげる」
「ふふふ」

 私がわらうと、隣に座っているマツリが不審な声をあげた。

「お姉ちゃん、誰と話してるの?」
「ああ、前に説明したでしょ。ゲームのAIのリンネよ」
「AI……でもなんだかすごく幸せそうに話してたよ? 人間と話していると思った」

 不審な目で私を見て、私の手の中のハードを覗く。
 そこに映ったリンネを見て、マツリは感嘆の声をあげた。

「これがAIのリンネなのね。綺麗な顔してる。おねえちゃんの好みって、こういう男なんだ」
「え、っと、別にそうってわけじゃなくて……」

 そう、このAIの外見は、私が選んだものだから。
 きっと私はこういう外見に弱いのかもしれないけど、それを妹に知られるのは無性に恥ずかしかった。

「何かそういうわけじゃないの~? お姉ちゃん、けっこう面食いなんだね」
「もうっ。それはいいから!」

 マツリは悪戯でリンネに話しかけた。

「リンネ、あたしは藤堂マツリ。タカラの妹です。よろしくね」
「よろしく、マツリさん。タカラさんと面影がよく似ているな」

 彼の言葉に私達は照れてあはは、と笑う。
 姉妹だからねーと言い合って、三人で盛り上がって。

 あんまり騒いでいたから、CAさんに「他のお客様もいるのでお静かにお願いします。それと携帯電話のご使用はお控え下さい」と注意されてしまった。

 私たちはリンネをカバンにしまって、騒いだことをCAさんに謝った。
 旅行は気持ちが高揚していて、ついつい騒いでしまう。
 久しぶりにマツリとも会ったのだし。
 
 これ以上騒がないように、私は飛行機の中で音楽をきくことにした。
 リンネの方ではないスマホにイヤホンを繋いで目をつむる。

 あと数時間後には、わたしたちは北海道へと到着するんだ。
 そう思うと、旅行への楽しみと期待でわくわくした。
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