第6話 料理は一緒に(後編)
文字数 1,521文字
シイタケと玉ねぎを手早くスライスして、鶏肉を一口大に切る。
「材料を切ったら、あとは炒めるだけね」
「そうだけど、その間にミルクセーキの用意もしておこう、その方が効率いいから」
炒める前に200CCのミルクと、砂糖を入れた卵半分を混ぜておいた。
卵のもう半分は親子丼の方の卵へ混ぜる。
材料を並べて、リンネに振り向く。
「こんな感じ?」
「ああ。いま作り方の動画を流す」
その言葉と同時に音楽がかかって、親子丼の作り方の動画が流れた。
正味三分の動画。親子丼はつくったことが無かったけど、簡単そうだ。
しかし、動画や音楽の再生のアプリが入ってるって言ってたのも、こういう機能のためなのか。
「だいたい分かった。調味料も今の動画でどれくらい入れればいいかも分かった」
「できそうか?」
「まかせて!」
腕をまくってぐっと拳 をにぎる。
小型のフライパンで野菜と鶏肉を炒めて、水と調味料と出汁を入れ、最後に卵を箸でまわすように落としていく。
蓋をして少し煮たら、火を切って予熱で卵を固まらせる。
予熱で待つ時間にミルクセーキを作る。
ミルクとさっき混ぜた砂糖と卵を、鍋の中で混ぜる。混ぜながら弱火で温める。
温めながら中身を泡だて器で混ぜて、固まらないようにすること三分間、とろりとした暖かいミルクセーキが出来た。仕上げにバニラエッセンスもたらす。
親子丼の方は、フライパンの蓋を開けるといい感じで出来上がっていた。
「卵がつやつや~」
すごく美味しそうで幸せな気持ちになる。
どんぶりにご飯をよそって、親子丼の具をかける。
出汁 のいい香りがする。
マグカップにミルクセーキを注ぐと、そっちからはバニラの甘い香りがした。
ミントの葉がないから、さっきの画像とはだいぶ違うけど、味はきっと一緒。
「できたわ!」
「そうみたいだな。さっそく頂くといい」
リンネも喜んでいた。
部屋の中央にあるテーブルにそれらを並べる。
でも、今まで一緒に会話をしながら作っていたリンネが、食事をできないことに思い当たって、少しだけ寂しくなった。
「リンネも食事ができればいいのにね」
残念すぎたから言ってみたら、彼は私の予想以上のことを返してきた。
「できるさ」
「……は?」
「食べることはできる。このハードで料理の写真を撮ってみて」
写真を撮る? よく意味が分からないけれど、言われるままに写真を撮ってみる。
かしゃりと音がして、親子丼とミルクセーキの写真がハードのディスプレイに映った。
その画像が自動的に加工され、私と同じ色のテーブルの上に置かれた親子丼とミルクセーキが表示される。
その奥でリンネが私のように座っていた。
「な? 画像を取り込むことで、俺も同じ食事ができる」
「あ、はは……」
驚いた。
ちょっと乾いた笑いが出てしまう。
雁太はどこまでこのアプリを精巧に作ったんだろう?
「さあ、笑ってないで早く食べよう」
リンネがハードの中で箸をもつ。
私も箸を持ってどんぶりを持った。
「いただきます」
「いただきます」
リンネと言葉がはもった。
ああ、だれかと一緒にこうして部屋で食べるなんて、久しぶりだ。
なんだかすごく楽しい。
【四月のレポート 1】
【リンネと一緒に夕飯をつくりました。
レシピ検索をしてもらい、動画で作り方を教えてもらって。
なんだか少しこそばゆい気分です。
そして、リンネが食事をとれるとは思いませんでした。
一緒に作ったものを一緒に食べることができるのは、恋愛アプリとしてポイント高いと思います】
私はレポートを書きおわると、専用のファイルに挟んだ。
これはあとで定期的に雁太に見せるものだ。
面倒くさいと思ってた恋人アプリだけど、結構楽しいな。
「材料を切ったら、あとは炒めるだけね」
「そうだけど、その間にミルクセーキの用意もしておこう、その方が効率いいから」
炒める前に200CCのミルクと、砂糖を入れた卵半分を混ぜておいた。
卵のもう半分は親子丼の方の卵へ混ぜる。
材料を並べて、リンネに振り向く。
「こんな感じ?」
「ああ。いま作り方の動画を流す」
その言葉と同時に音楽がかかって、親子丼の作り方の動画が流れた。
正味三分の動画。親子丼はつくったことが無かったけど、簡単そうだ。
しかし、動画や音楽の再生のアプリが入ってるって言ってたのも、こういう機能のためなのか。
「だいたい分かった。調味料も今の動画でどれくらい入れればいいかも分かった」
「できそうか?」
「まかせて!」
腕をまくってぐっと
小型のフライパンで野菜と鶏肉を炒めて、水と調味料と出汁を入れ、最後に卵を箸でまわすように落としていく。
蓋をして少し煮たら、火を切って予熱で卵を固まらせる。
予熱で待つ時間にミルクセーキを作る。
ミルクとさっき混ぜた砂糖と卵を、鍋の中で混ぜる。混ぜながら弱火で温める。
温めながら中身を泡だて器で混ぜて、固まらないようにすること三分間、とろりとした暖かいミルクセーキが出来た。仕上げにバニラエッセンスもたらす。
親子丼の方は、フライパンの蓋を開けるといい感じで出来上がっていた。
「卵がつやつや~」
すごく美味しそうで幸せな気持ちになる。
どんぶりにご飯をよそって、親子丼の具をかける。
マグカップにミルクセーキを注ぐと、そっちからはバニラの甘い香りがした。
ミントの葉がないから、さっきの画像とはだいぶ違うけど、味はきっと一緒。
「できたわ!」
「そうみたいだな。さっそく頂くといい」
リンネも喜んでいた。
部屋の中央にあるテーブルにそれらを並べる。
でも、今まで一緒に会話をしながら作っていたリンネが、食事をできないことに思い当たって、少しだけ寂しくなった。
「リンネも食事ができればいいのにね」
残念すぎたから言ってみたら、彼は私の予想以上のことを返してきた。
「できるさ」
「……は?」
「食べることはできる。このハードで料理の写真を撮ってみて」
写真を撮る? よく意味が分からないけれど、言われるままに写真を撮ってみる。
かしゃりと音がして、親子丼とミルクセーキの写真がハードのディスプレイに映った。
その画像が自動的に加工され、私と同じ色のテーブルの上に置かれた親子丼とミルクセーキが表示される。
その奥でリンネが私のように座っていた。
「な? 画像を取り込むことで、俺も同じ食事ができる」
「あ、はは……」
驚いた。
ちょっと乾いた笑いが出てしまう。
雁太はどこまでこのアプリを精巧に作ったんだろう?
「さあ、笑ってないで早く食べよう」
リンネがハードの中で箸をもつ。
私も箸を持ってどんぶりを持った。
「いただきます」
「いただきます」
リンネと言葉がはもった。
ああ、だれかと一緒にこうして部屋で食べるなんて、久しぶりだ。
なんだかすごく楽しい。
【四月のレポート 1】
【リンネと一緒に夕飯をつくりました。
レシピ検索をしてもらい、動画で作り方を教えてもらって。
なんだか少しこそばゆい気分です。
そして、リンネが食事をとれるとは思いませんでした。
一緒に作ったものを一緒に食べることができるのは、恋愛アプリとしてポイント高いと思います】
私はレポートを書きおわると、専用のファイルに挟んだ。
これはあとで定期的に雁太に見せるものだ。
面倒くさいと思ってた恋人アプリだけど、結構楽しいな。
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