第20話

文字数 603文字

 そして、警備会社の厳しい研修が終わり、いよいよその日がやってきた。

 六月の最後の土曜日。五年前と同じ場所で開催されるという国際児童フォーラム。

 あの時より参加団体も少なく、今回はこじんまりとした印象だった。それでも以前の事件の教訓もあり警備は一段と厳しい。

 健人は入り口付近の配備を自ら申し出た。
 あの時と同じベンチがある。二箇所あるベンチは、疲れた人がかわるがわる座り、あいている時間の方が少ないように思えた。

 不審な動きをしている怪しい人物はいないだろうかーー

 警備員同士は無線で繋がっているから、いざとなれば、現場急行しなければならない。油断は禁物。健人は全神経を集中させて目をひからせていた。

 俺の推理が正しければ、間違いなくあのベンチに小さな子供が一人で座る。そして係の人が迎えに来て連れて行かれる。そして事件が起こる。

 あれから健人はいろいろと調べていた。各国で開催されるフォーラムには必ずといっていいほど事件が起きていたのだ。

 外には伏せた事件が多く、それもほとんどが自爆テロだ。日本人には理解し難いが、宗教的な問題も絡んでいるということのようだ。死者が出ることがわかっているのに、どの国も防げていない。毎回、同じようなことが繰り返されているのだ。自分のように気づいて、掘り下げる人間がいなければ、今回ももし、事件が起こっても水面下で揉み消されてしまうに違いない。どの国も国益が大事なのだ。
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