第12話

文字数 968文字

[有明で開催されている国際児童フォーラムで自爆テロ発生。要人含め三人が巻き込まれ死亡]

 健人は青くなった。

(えっ、なに?日本で自爆テロ?……ユリは大丈夫か?)
 健人は慌てて店を出て、待ち合わせの場所へ急いだ。途中、歩きながらユリの携帯へ電話を入れた。三コールめでユリが出た。
「おい、大丈夫か?テロ発生と速報が入ったから心配で電話したんだ」
「うん、びっくりした。さっきまでいた会場だったから危機一髪ってとこね。でも、会場は広いからパニックという感じではなかったみたい。一部のエリアでサイレンが鳴っていたくらいの感じ」
「そうか……無事で良かった。俺はもうすぐ駅に着く。そっちは?」
「えーっと、あと三分くらいで着くと思う。じゃ後でゆっくりね」
「うん。じゃ、後で」

 健人は待ち合わせの場所でユリと再開し、迷わずその駅を離れた。現場から少しでも離れることで更なる危険に遭遇する不安を回避したかった。新宿まで行き夕食のとれそうな店を探し、改めてユリと向かい合った。
「久しぶりに会ったけど、やっぱり健人は変わらないね」
「そりゃそうだよ、まだ三ヶ月だろ。一年後は立派な東京人になっているからみてろよ」
「なにそれ?健人はいつまでも道産子でいいのよ」
 そんな会話から始まり、同郷の友達の話をユリからたくさん聞いた。ユリは僕の話を聞きたかったようだが、僕は敢えて北海道の友達のことを質問責めにした。ユリの家族のことも僕の家族のこともユリは楽しそうに話してくれた。たった三ヶ月しか北海道を離れていないのに、心のどこかでやっぱり故郷を懐かしく思い寂しさを感じでいるんだなぁと気づかされた。

 自爆テロのことは気にはなっていたが、敢えてそのことは触れずにユリの話を聞いていた。
 世界には貧困に負けずに生きている子供たちがたくさんいること、どうしたら地球を救えるかということを子供たちが真剣に考えていること。いろんなテーマでブースが設けられ、スピーチや写真展など、それぞれの団体の取り組みが発表されていたとのこと。話を聞いていると、大盛況でフォーラム自体は成功のようだが、そんななかで何故テロが起きるのか健人は全く理解できなかった。
 事件の速報は流れたものの、国内のニュースでは日本人の死者がいなかったせいか連日のニュースにはならなかった。国の圧力を感じざるを得ない。
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