第9話

文字数 643文字

 翌朝は空腹で目が覚めた。
(そうか……昨日はシャワーも浴びず、食事もとらずに寝てしまったのか……)
 健人は子供の頃から目覚めは良い方だ。目覚まし時計はセットするが、たいてい鳴る前に目が覚める。目覚まし時計が鳴って目が覚めるということは体調が良くない、体が疲れているという、健康のバロメーターだと思っている。ただ、空腹で目が覚めたのは、今まで生きてきた中で数えるほどしかないと苦笑した。
 たかがバイトだと思っていたが生活のリズムが変わったことで、どうやら体にも微妙な負担がかかっていたようだ。
 まずはシャワーを浴びた。いつもの朝食にハムも加えてお腹を満たした。
(今日も一日、何がいいことがありそうだ)
 健人はなんだかとても気分が良かった。

 バイトを始めて約二週間が経った。学業とバイトはうまく両立している。そしてサークル活動も。

 店長は、覚えが早いとレジも任せてくれるようになった。レジを担当することで常連さんからも顔を覚えてもらい、「ごちそうさま」とか「また明日」などと言われるようになり、ますます仕事が面白くなってきた。
 来週は軽食の作り方も教えてくれるとのこと。
こだわりのコーヒーは店長が淹れるが、万が一の時は頼むことになるから、見て覚えてほしいと言われていた。
 交代のアルバイトの女性はフリーターとのことなので、急用の時は遠慮なく言ってほしいと言われている。学生の身としてはありがたい。地味なアルバイトだが、健人は、期待されていることも重なって、ますます仕事が好きになっていった。
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