第6話

文字数 1,040文字

 翌日は快晴だった。
 ブラインドから漏れた光で気持ちよく目覚めた。時計は八時。今日の授業は九時半からだから余裕がある。
 いつものようにパンと牛乳で朝食をとり、きちんと身支度をして家を出た。
 健人はバイト先の喫茶店の様子が気になり、ちょっと覗いてから学校へ行こうと思った。自転車にまたがったまま、通りから店内を覗くと、朝の時間はほぼ満席にちかい状態だったことに驚いた。常連さんがいるらしい。
 朝はモーニングセットのみとメニューが出ていた。若い女性の店員が忙しそうに働いていた。
 もう一人のバイトと交代と聞いているが、彼女のことかなと思った。
(よし、夕方からは自分の番だ。初めが肝心、頑張らなくっちゃな)
 健人はUターンして大学へ向かった。

 キャンパスは多くの学生で賑わっている。
いつもの場所に自転車を停めて教室へ向かっている途中で、早くも友達のシンゴが話しかけてきた。
「よっ、おはよう。一時限目から退屈な学科だな。このところバイトが忙しくて久しぶりの授業なんだよ」
「えーっ、そうだっけ?先週は欠席?」
「うん。単位落とさないように調整するよ」
「そーだな。俺も今日からバイトなんだよ」
「へぇーそうなの?健人さ、バイト決まらないってずっと言ってたよな。ようやく決まったのか。良かったな。じゃあこれからは俺たち、さらに遊べなくなるってことか」
「うん、そうなるかな。でも、慣れたら時間作れると思うから、そしたら声かけるよ」
「そうしてくれよな。お互い忙しくても学生のうちに、いろんなことを経験しておきたいからな。その為には俺には健人が必要なんだよ、多分」
「なんだよ、その多分って」
 俺たちは声を出して笑った。先を歩いていた学生が振り返るほどにーー

 シンゴは思ったことをストレートに言葉にしてくれる気の合う友人の一人だ。卒業後はどうするんだろうと、ふと気になって聞いてみた。
「シンゴは実家を継ぐのか?卒業したら広島へ帰るのか?」
「いや、東京で就職するつもりだよ。実家に戻るのはずっと先でいいかなと思っている。まだうちは親も元気だしな。親が元気なうちは、好きなようにやらせてもらうつもり。健人は北海道へ帰るって言ってたもんな」
「うん、そういう約束だから。でも、この四年間で変わるかもしれないしな。俺もどうなるかわからないや。今は考えたくないというのが正直なところだろうな」
「そうだよな。まだ俺たちスタートしたばかりだもんな」
「という訳で、とりあえずこれからもよろしくな」
「おう、こちらこそよろしく」
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