第13話

文字数 769文字

 その日、ユリは健人のアパートに泊まった。
 もちろん部屋は前日に片付けた。想定内だ。もともと殺風景な部屋は、片付けるとほんとうに何もないただの男の部屋になったが、今日は特別にお揃いのマグカップを準備した。シングルベッドだが、二人で寝るのも悪くなたい。ユリはどう思ったかわからないが健人はとても幸せだった。ユリの寝顔をいつまでも眺めていたかった。

 翌朝、目覚めると隣にユリがいた。
(そうか……昨日はユリとデートしたんだった)
 ユリは疲れているのか、まだ、静かな寝息をたてていた。
 今日は遅番にしてもらったからバイトは午後からだった。午前中は空港までユリを送って行く約束をしていた。
 少しの間、ユリの寝顔を見ていた。寝返りを打つと同時に目が合った。
「おはよう、健人。眠れなかったの?」
「ううん、よく眠れたよ。ユリの寝顔が可愛いなと思って見とれてただけ」
「やだぁ、何言ってんの…‥冗談でも嬉しい。ありがとう。いま何時?そろそろ起きないと」
「うん、八時半。そろそろ準備しないとね。朝食は用意してないから外で食べよう」
「ねぇ、健人のバイト先のお店を見てみたい。どんなとこか気になるから」
「えーっ、どうしようかな。店長に彼女自慢しに行くみたいでちょっと恥ずかしいなぁ。でも、休みをもらった時点でユリのことはバレてるし、紹介しておくのも悪くないな。これから堂々と休む口実にもなるしなぁ」
「うん、そうだよ。行こう」
「オッケー。朝食メニューは一つしかないけどいい?」
「もちろん、全然そんなの気にしてない。朝だし何か食べれればいいよ」
「そうだね。じゃ、着替えて行こうか」
「健人の部屋も目に焼き付けておかなくっちゃ」
 そう言ってユリはスマホで何もない部屋の写真を何枚か撮り、その後、二人の記念写真を一枚だけ撮った。そこにはとびっきりの笑顔の二人が写っていた。
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