第7話

文字数 1,086文字

 シンゴとは初日からウマがあった。お互い田舎っぽさが滲み出ていて惹かれあったのかもしれない。
 東京のキャンパスで仲良くなったのは、シンゴをはじめ、マコト、リョウタ、ハヤト。のちのちわかったことだが、みんな地方出身者だった。それぞれアパート生活なので、近所の情報交換や相談事などをしているうちに、すぐに仲良くなった。
 ありがちな話だが、田舎から届いた野菜や食品など、食べきれないほどの思いやりの詰まった品々は、みんなで分け合った。物価が高い東京では、は食費節約に大いに役立った。

 健人は入学して早々、映画好きなリョウタに誘われて映画研究会なる、ゆるいサークルに入った。活動は不定期。たまに集まって、観た映画について報告したり作品について話し合ったりという感じ。テーマがみつかれば、誰かが招集をかけるというルールのもと活動している。強制的なサークルではなかったので、健人は気に入っている。もちろん映画は大好きだ。

 ちなみに、まだ健人は招集をかけたことがない。なぜなら、東京に来てからまだ映画を観たことがないし、映画館の場所もわからない。さらには、招集するための洒落た店を知らない。サークルには女性もいるから、日頃よく利用する定食屋というわけにはいかない。それに、映画についていうならば、東京に出てくるまで、映画は彼女と観るものだと思っていた。だから、まだ一人で映画を観たことがない。健人にしてみると、男友達と映画を観に行くのも、なんだか気持ち悪いと思ってしまう。

 この前、リョウタに面白そうな映画があるからと誘われた時も、とっさに、今日は用事があるからと断ってしまった。その時は、バイトも決まっていなかったし、時間はいっぱいあったのに、東京の映画館デビューするチャンスを自ら逃してしまったのだ。

 リョウタはマコトを誘って行ったようで、後日、マコトから言われた。
「健人が断るから仕方なくリョウタと映画観てきたよ。俺、映画はあんまり興味ないから、次はちゃんとリョウタに付き合ってやってくれよな。健人だって映研なんだろー?頼むよー」
 マコトの言い分はもっともだと思って、その場は流れで軽く謝っておいた。

 マコトは写真が趣味で、全国を歩いてまわりたいと、お金を貯めては旅行に出かけていたのを知っていた。

 これからはバイトも決まったし、映画を観るくらいの余裕はできるだろうから、次はリョウタを映画に自分から誘ってみようと考えていた。

 健人は午後の授業もちゃんと出席し友達と別れた。みんなそれぞれバイトへ向かった。みんな、それなりに学生生活を楽しんでいるなと思った。自分も頑張らないとーー
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