第23話

文字数 621文字

 北海道という土地柄、外国人の観光客は多い。健人の提案で、牧場にソフトクリームなどの軽食やお土産を販売するショップを開いた。搾乳体験も人気があった。
 そして敢えて尋ね人としてマイラの写真を複製し張り紙をした。両親が訪れることは確率として低いとは思うが、誰か知ってる人が現れるかもしれない、そういう思いが僅かな希望とはわかっているが、健人は行動せずにはいられなかった。

 そして、何も手がかりがないまま季節は秋になった。夏は観光客で賑わう北海道も旅行客の波が途絶え、これからはスキーにやってくる外国人旅行客に望みをかけるしかなかった。酪農の仕事も少なからず、そんな人流の影響を受ける。
 毎日の仕事に精を出す平凡な日々が続きーー

 ある日、健人のもとに一本の電話が入った。警察からだった。
(広井健人さんですか?新宿署の桜井と申します。ご報告が遅くなってしまいましたが、昨日、自爆テロの日本在住の主犯格の男が逮捕されました。多田という、国際犯罪組織に関わっていた人物です。犯人逮捕にご協力いただきましたこと誠に感謝いたします。ご報告は以上です。後日、簡単な報告書をお送りいたします。詳しいことは、そちらの書面でご確認下さい。では、失礼いたします)

 健人は仕事中だったので、突然の電話で少し緊張したが、事件はひとまず解決したと聞き体の力がスーッと抜けた。
(本当に良かった。自分の行動は少しは社会の役に立ったのだろうかーー)

 健人はまた黙々と作業を続けた。

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