第17話

文字数 641文字

 やがて卒業の春がやってきた。
 
 健人はサークルの何人かの後輩に告白されたこともあったが、ユリ一筋でなんとか学生生活を終えることができた。それは、ひとえにユリの行動力の勝利と思われた。健人は一年生の夏休みに帰省しただけで、その後は年に二、三回、ユリが東京にやってきた。

 健人は国際児童フォーラムでおきた自爆テロ事件をどうしても忘れることができなかった。そして、卒業と同時に北海道へ戻るからとバイトを辞めたのを機に、気になっていたことを整理しようと考えていた。

 友達はみな、就職活動をしていたが、健人はじっかに戻るつもりだったため、時間だけはあった。

 まず、引き出しの奥の指輪を取り出した。大事にカバンにしまうと商店街にある個人のジュエリーショップに行った。

 店主は珍しい石ですねと言いながら綺麗に磨いてくれた。指輪は思ったより綺麗になった。石のブルーも輝きを増していた。
「傷はありますが、イニシャルの刻印もありますし、何か大切なお品物のようですね」と店主は言った。
 指輪を受け取り、健人はチェーンを購入しペンダントにして首からかけた。

 そして次に、当時、事故にあった警備会社を訪ねた。聞けば、一年後に規模を縮小して同じ会場で国際児童フォーラムがまた開催されるという。
 その警備も担当する予定だと。そのため、警備会社では警備員を多数、募集しているという。
 健人は、その場で警備員のアルバイトを申し込んだ。二ヶ月の研修に参加することが必須条件だという。
(これは実家に頼み込むしかないな)
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