第30話
文字数 1,534文字
ラピス城の王室のベランダは、やはり石造りだった。見たこともないオレンジ色のバラが植えてある花壇が至る所に備え付けられている。満月は相変わらず空でデカい顔をしていたが、幻想的な光でベランダ全体を、花壇に、俺に、ラピス城の壁面。それに、ソーニャを、包み込んでいた。
「さっきも言ったが、すぐに決めなくていい。戦争が終わるまでな。だが、この戦争はすぐに終わらせたいんだ。わかるか? オニクボ? これは国の民。その全ての問題でもあるんだ」
ソーニャはそういうと、遥か南の方を向いた。そこには広大な緑と海とボンっと頭を出した山が連なっている。その向こう端に広々とした大陸があった。その大陸には多くの建造物があるのがここからでも見えた。
「あれが、グレード・シャインライン国か??」
俺は、今まで守っていたのは、橋の上のここラピス城だけかと思っていたが、考えてみれば、当然グレード・シャインライン国っていうからには、多くの建造物も国民もいるのだろう。
「ああ……。あ、そうか。オニクボは見ていないのか。我が国の本国を。私は辛いことがあったら、いつもここへ来て遠い本国を見ているんだがなあ」
「あ……ああ。そういえば、見た時がないな。あっちの大陸にあるのか? 南の方に?」
「ああ。そうだ。それに、それはそれは美しい国だぞ」
ああ、そうか。
グレード・シャインライン国は……。
緑豊かで資源がたくさんあるんだった。
「知っているよ。周辺の強国がその資源が狙うほどなんだろ?」
「ああ……先々代よりもかなり前からな。土地が良かったんだ。みな元々美しいのだよ」
ソーニャはそう言うと、肩まである金髪をかき揚げて青い瞳で見つめて、悲しく笑いかけてきた。辺りに吹く生温い風が冷たい夜風になってきた。
俺は疲れた体が次第に癒されてきた。
「今度、見せてやろう。オニクボが守ってきたもの全てをだ……」
「……ああ、期待してるよ」
そして、しばらく沈黙の後に、ソーニャは俯き加減で片足で地面にある花壇から落ちたバラを蹴って言いにくそうにしていたが。
ついに、こう言った。
「オニクボ。実は、今までまだ早いと思って隠していたのだが、その神聖剣には秘められた力があるんだ……」
「へ?」
「前にハイルンゲルトから聞いた。そして、ある技も生み出したんだとも」
「???」
「あのライラックと同じ。そして、私も少しはあるんだが。四大千騎士は皆持っているんだ。その力は……力だ。神聖剣にはその力がふんだん秘められているんだ」
「力……って、ソーニャって千騎士だったのか?!」
「王の間で言ったはずだ。私に変わって千騎士になるのだと……」
「ああ、そういえば!」
冷たい夜風が少し強くなってきた。
俺は寒いので、盗賊衣装のマントを羽織り直した。
ソーニャは寒くないのか、パーティドレスが風になびくのをそのままにしている。
「その神聖剣には、聖なる力をハイルンゲルトが独自の剣技に合体させた技……鋼光剣 というのが封じられているんだ」
鋼光剣??
力??
そんな力が神聖剣にあって、それを応用してハイルンゲルトは技を生み出したのか……。
だけれど、大食堂へ俺はトボトボと向かっていた。考えるのは後回しだ。
その時は、何はともあれ腹が減っていたんだ。
ソーニャもさすがに肌寒くなったのか、ベランダから出てきたようだ。白いパーティドレス姿で一緒に石階段を降りた。
まずは、大食堂へ着いたらレモンを齧って、頭をしっかりさせよう。
俺は、あの酸っぱい味が子供の頃から病み付きになっていた。
だけれど、俺はレモンは好きだが、リンゴは嫌いだった。子供の頃からリンゴのシャリシャリとした食感がなんだか馴染めなかった。
大食堂はここラピス城の地下にある。
「さっきも言ったが、すぐに決めなくていい。戦争が終わるまでな。だが、この戦争はすぐに終わらせたいんだ。わかるか? オニクボ? これは国の民。その全ての問題でもあるんだ」
ソーニャはそういうと、遥か南の方を向いた。そこには広大な緑と海とボンっと頭を出した山が連なっている。その向こう端に広々とした大陸があった。その大陸には多くの建造物があるのがここからでも見えた。
「あれが、グレード・シャインライン国か??」
俺は、今まで守っていたのは、橋の上のここラピス城だけかと思っていたが、考えてみれば、当然グレード・シャインライン国っていうからには、多くの建造物も国民もいるのだろう。
「ああ……。あ、そうか。オニクボは見ていないのか。我が国の本国を。私は辛いことがあったら、いつもここへ来て遠い本国を見ているんだがなあ」
「あ……ああ。そういえば、見た時がないな。あっちの大陸にあるのか? 南の方に?」
「ああ。そうだ。それに、それはそれは美しい国だぞ」
ああ、そうか。
グレード・シャインライン国は……。
緑豊かで資源がたくさんあるんだった。
「知っているよ。周辺の強国がその資源が狙うほどなんだろ?」
「ああ……先々代よりもかなり前からな。土地が良かったんだ。みな元々美しいのだよ」
ソーニャはそう言うと、肩まである金髪をかき揚げて青い瞳で見つめて、悲しく笑いかけてきた。辺りに吹く生温い風が冷たい夜風になってきた。
俺は疲れた体が次第に癒されてきた。
「今度、見せてやろう。オニクボが守ってきたもの全てをだ……」
「……ああ、期待してるよ」
そして、しばらく沈黙の後に、ソーニャは俯き加減で片足で地面にある花壇から落ちたバラを蹴って言いにくそうにしていたが。
ついに、こう言った。
「オニクボ。実は、今までまだ早いと思って隠していたのだが、その神聖剣には秘められた力があるんだ……」
「へ?」
「前にハイルンゲルトから聞いた。そして、ある技も生み出したんだとも」
「???」
「あのライラックと同じ。そして、私も少しはあるんだが。四大千騎士は皆持っているんだ。その力は……力だ。神聖剣にはその力がふんだん秘められているんだ」
「力……って、ソーニャって千騎士だったのか?!」
「王の間で言ったはずだ。私に変わって千騎士になるのだと……」
「ああ、そういえば!」
冷たい夜風が少し強くなってきた。
俺は寒いので、盗賊衣装のマントを羽織り直した。
ソーニャは寒くないのか、パーティドレスが風になびくのをそのままにしている。
「その神聖剣には、聖なる力をハイルンゲルトが独自の剣技に合体させた技……
鋼光剣??
力??
そんな力が神聖剣にあって、それを応用してハイルンゲルトは技を生み出したのか……。
だけれど、大食堂へ俺はトボトボと向かっていた。考えるのは後回しだ。
その時は、何はともあれ腹が減っていたんだ。
ソーニャもさすがに肌寒くなったのか、ベランダから出てきたようだ。白いパーティドレス姿で一緒に石階段を降りた。
まずは、大食堂へ着いたらレモンを齧って、頭をしっかりさせよう。
俺は、あの酸っぱい味が子供の頃から病み付きになっていた。
だけれど、俺はレモンは好きだが、リンゴは嫌いだった。子供の頃からリンゴのシャリシャリとした食感がなんだか馴染めなかった。
大食堂はここラピス城の地下にある。