第44話
文字数 1,446文字
「むっ。見えてきたぞ」
「うん??」
徐々に雲の下に、壮大な海と緑に囲まれたグレード・シャインライン国の王城と城下町が現れてきた。けれども、所々から城下町の建造物は煙を上げている。あの真っ白な美しい国は、もはや、戦火の跡だった。
あれが、俺が守っていた国??
けれど、もう、半壊している……。
「通小町。すぐにソーニャと騎士団を見つけるんだ。ソーニャが心配だ」
「ああ、わかっている」
通小町は小さめな箒を駆使して、地上へ降りていった。
「あ!!」
遥か上空には、未だサンポアスティ国の幾人かの兵がサーフィンに乗っていて、旋回をしていた。
空中用の見張りだろうか?
それとも……。
「鬼窪。まあ、まずは降りよう。見たところ攻撃はしてこないようだし。恐らく偵察とか警戒をしているだけさ」
通小町がスピードを上げて、降下していった。
地面に着地すると、周囲を漂う黒い煙のせいで、思わず咳き込む。口と鼻を抑えざるを得なかった。
「ケホッ……うーん。戦争は、こちらの方が優勢だったはずなのに……」
通小町が険しい顔をした。
ここは、市街地だけれど、逃げ惑う街の人々がいなかった。
というか、誰もいない??
みんなは、どこへ??
サンポアスティ国の兵も一人もいない??
ほんと、不気味なほど無人だなあ。
俺たちは、しばらくグレード・シャインライン国の一つの市街地を、歩き回ることにした。空には黒煙のために鳥もいない。人も焼跡のために一人もいない。辺りは時折、ぱちりとする炎の音しかしなかった。この煤ぼけた街には確かにまざまざとして破壊の跡があった。通小町が、廃墟と化した市街地の交差点で、立ち止まった。そして、通小町はニッコリ笑って、クイッ、クイッ、と親指を立てて、とある場所に向けた。俺は、その方向を見ると、美味しそうな匂いが漂う一軒のパン屋があった。
香ばしい匂いに連れられて、通小町とその店に入った。
ガラス張りの無人の店内には、派手に倒れた木製のテーブルと椅子が散乱していた。
その店の厨房に、焼き立ての大きなパンがまな板の上にポツンとあった。
「この際だから、頂いてしまおう」
「ああ……」
無銭飲食は俺、初めてだなあ。
何故かこんなところにある焼き立てパンは、とても美味しかった。
丁度、腹が減っていたから、良かった。
通小町も満足したようで、再び店の外へ出て、ソーニャたちを探そうとした。だが……。
「あ!」
俺の感が急に働いて、通小町を引っ張ると道路の脇に隠れた。と、突然。交差点の右側からサンポアスティ国の兵が現れた。
それも、大軍のような規模だ……。
道路の脇で考える。
通小町は戦えない。だが、ソーニャが心配だから箒に乗って空にも逃げられない。ここグレード・シャインライン国の本土でソーニャを探さないといけないんだ。それも、ソーニャの身は、一時を争うのかも知れなかった。
俺はそこまで考えると、目を閉じて、神聖剣を鞘から抜いた。
通小町は身震いすると、俺の盗賊衣装の袖を握る。
「は、早まるな! 多分、相手は正規軍だぞ!」
「でも、こうするしかないんだ……通小町はここで隠れていてくれ……」
俺は道路に飛び出すと、サンポアスティ国の正規軍に向かって、神聖剣を構えた。
「むっ! まだいたのか!」
「グレード・シャインライン国の騎士の生き残りだ!」
「ひっ捕らえよーー!」
兵たちの怒号が辺りに木霊し、こちらに武器を向けてくる。
それでも、俺はサンポアスティ国の正規軍の中心目掛けて、走り出した。
「うん??」
徐々に雲の下に、壮大な海と緑に囲まれたグレード・シャインライン国の王城と城下町が現れてきた。けれども、所々から城下町の建造物は煙を上げている。あの真っ白な美しい国は、もはや、戦火の跡だった。
あれが、俺が守っていた国??
けれど、もう、半壊している……。
「通小町。すぐにソーニャと騎士団を見つけるんだ。ソーニャが心配だ」
「ああ、わかっている」
通小町は小さめな箒を駆使して、地上へ降りていった。
「あ!!」
遥か上空には、未だサンポアスティ国の幾人かの兵がサーフィンに乗っていて、旋回をしていた。
空中用の見張りだろうか?
それとも……。
「鬼窪。まあ、まずは降りよう。見たところ攻撃はしてこないようだし。恐らく偵察とか警戒をしているだけさ」
通小町がスピードを上げて、降下していった。
地面に着地すると、周囲を漂う黒い煙のせいで、思わず咳き込む。口と鼻を抑えざるを得なかった。
「ケホッ……うーん。戦争は、こちらの方が優勢だったはずなのに……」
通小町が険しい顔をした。
ここは、市街地だけれど、逃げ惑う街の人々がいなかった。
というか、誰もいない??
みんなは、どこへ??
サンポアスティ国の兵も一人もいない??
ほんと、不気味なほど無人だなあ。
俺たちは、しばらくグレード・シャインライン国の一つの市街地を、歩き回ることにした。空には黒煙のために鳥もいない。人も焼跡のために一人もいない。辺りは時折、ぱちりとする炎の音しかしなかった。この煤ぼけた街には確かにまざまざとして破壊の跡があった。通小町が、廃墟と化した市街地の交差点で、立ち止まった。そして、通小町はニッコリ笑って、クイッ、クイッ、と親指を立てて、とある場所に向けた。俺は、その方向を見ると、美味しそうな匂いが漂う一軒のパン屋があった。
香ばしい匂いに連れられて、通小町とその店に入った。
ガラス張りの無人の店内には、派手に倒れた木製のテーブルと椅子が散乱していた。
その店の厨房に、焼き立ての大きなパンがまな板の上にポツンとあった。
「この際だから、頂いてしまおう」
「ああ……」
無銭飲食は俺、初めてだなあ。
何故かこんなところにある焼き立てパンは、とても美味しかった。
丁度、腹が減っていたから、良かった。
通小町も満足したようで、再び店の外へ出て、ソーニャたちを探そうとした。だが……。
「あ!」
俺の感が急に働いて、通小町を引っ張ると道路の脇に隠れた。と、突然。交差点の右側からサンポアスティ国の兵が現れた。
それも、大軍のような規模だ……。
道路の脇で考える。
通小町は戦えない。だが、ソーニャが心配だから箒に乗って空にも逃げられない。ここグレード・シャインライン国の本土でソーニャを探さないといけないんだ。それも、ソーニャの身は、一時を争うのかも知れなかった。
俺はそこまで考えると、目を閉じて、神聖剣を鞘から抜いた。
通小町は身震いすると、俺の盗賊衣装の袖を握る。
「は、早まるな! 多分、相手は正規軍だぞ!」
「でも、こうするしかないんだ……通小町はここで隠れていてくれ……」
俺は道路に飛び出すと、サンポアスティ国の正規軍に向かって、神聖剣を構えた。
「むっ! まだいたのか!」
「グレード・シャインライン国の騎士の生き残りだ!」
「ひっ捕らえよーー!」
兵たちの怒号が辺りに木霊し、こちらに武器を向けてくる。
それでも、俺はサンポアスティ国の正規軍の中心目掛けて、走り出した。