第60話

文字数 914文字

「何奴?!」

 クラスド・エドガーが粉々になった槍を地面へ投げ捨てた。

「そ、その人は……ㇵイルンゲルトよ……」

 マルガリータが空から言った。
 猪野間は俺の隣へ来て、目を見開いた。

 うん??

 ハイルンゲルト??
 の、後ろ姿が俺には見えるんだけど……。

「ああ、信じられない! あの四大千騎士最強のハイルンゲルトが亡霊となって、現れるなんて!!」

 マルガリータは感激して、箒で空を飛び回る。
 だが、周囲はいつの間にか、サンポアスティ国の兵が全滅していて、白と騎士の国の千騎士の軍が、俺たちを包囲していた。

「鬼窪くん。行くぞ!」
「あ、ああ……」

 ハイルンゲルトが鋼雲剣を放った。

「鋼雲剣!!」

 俺もそれにならって、鋼雲剣をクラスド・エドガーに放つ。
 二つの轟音と共に爆速の光の束は、その数が人の想像を遥かに超えた。
 光の矢となって、クラスド・エドガーの身体を白い鎧ごと貫通する。

「うぐっ!!」

 クラスド・エドガーは血を吐いて、倒れた。
 そのまま大量の光の矢は、クラスド・エドガーの身体を貫通しながら後ろへと飛び。白と騎士の国の多くの千騎士の身体を貫いていった。

 貫通した光の矢は地面に着弾すると同時に、大爆発をした。
 辺りに白い色の鎧の破片が無数に紙の如く飛び散った。
 
「そ、そんな……あれほど頑丈だった白と騎士の国の千騎士の鎧が……まるで、紙切れのようよ」

 猪野間は片手で、おでこを抑えながら眩暈を覚える。
 
 うへええええーー!
 それは、俺のセリフだあああ。
 発動して、敵をなぎ倒していったのは、ほとんど、ハイルンゲルトの鋼雲剣の光の束だ!!

 こんなに強かったのか?!
 ハイルンゲルトは?!

 それから、俺とハイルンゲルトは次々と白と騎士の国の千騎士たちを、なぎ倒していく。

 遥か北の方で超高熱の爆発が所々で起き始める。
 ヒッツガル師匠とブルードラゴンとクシナ要塞の攻撃だった。
 更に充満する黒煙に包まれていく千騎士の軍隊は、その統率を失ってきた。 

 全滅したサンポアスティ国の兵に代わり、重火器によって武装したクシナ要塞の重銃士団長たちの部隊が俺たちナイツオブラストブリッジに加わった。

 気がつくと、俺たちはこの戦争で勝利を掴んでいた。

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