第5話

文字数 1,034文字

「あの。お頭……その前に一ついいですかい? だいぶ前に元聖騎士だという老人を牢屋へぶち込んだんでやすが……ひょっとして、お仲間だったでやすか?」
「え?! 本当に? きっと、その人は聖騎士最強といわれた元四大聖騎士の一人。ハイルンゲルトだわ」




 それから、じめじめとした地下へと案内された。肌寒くて、学ランの上着がまだ乾いていないからか、くしゃみをした。
 俺は、マルガリータに小突かれながら盗賊団を率いて灰色の廊下の奥へと行くと、真っ暗な石造りの牢屋があった。中を盗賊の一人から手渡された松明で照らすと、門扉も壁も石でできていて一言でいうとかなり堅牢な牢屋だった。

 その牢の隅にある木でできた小さなテーブルに、ぐったりしている白い鎧の老人が両手を投げ出し顔を伏せていた。

「こりゃ死んでるなあ」
「もうここへ入れてから二年は経ってやすぜ」
「お頭……ここの鍵束でやす」
 
 などと、盗賊団が口々にいうので、俺は恐る恐る牢を開けると、老人にゆっくり近づいていった。マルガリータは廊下で白髪の老人を見張っている。
 牢の中は、廊下と同じ空気だった。冷たい石造りの地面に靴音が響く。

「あ、あの。だ……大丈夫ですか……? わ?!」

 俺は老人を気がかりで怖いけど小声をかけた。すると、右腕をがっしりと両手で握られてしまった。

「あなたが誰だか解らない。だが、わしの命の最後にお前に全てを託そう! どうかこの力で橋を守ってやってくれ!」

 瞬間、老人の両手から俺の体を凄まじい高熱と激しい光が襲いだした。
 体が丸焦げになるかと思った。

「うわああああああーーー!!」 
「ぐぬぬぬぬぬぬ!!」

 俺と老人は叫び続けていた。

 正直、死を覚悟までした俺は老人の手を力いっぱい振り払おうとした。だが、凄まじい力で掴まれていた。

 体中の光と熱が次第に治まりだしてきた。そこで、やっと誰かが俺の肩に手を置いているのに気がついた。後ろを振り向くとマルガリータだった。
 マルガリータは気遣いの眼差しで俺を見つめていた。 
 目の前の白髪の老人は消えゆく光と共に息絶えている。
 辺りは静かになった。

「う……そんな……」

 俺は項垂れていた。
 マルガリータは何も言わずに同情の目でコックリと頷いた。

「な、なんだったんだ? 今の?」
「大丈夫よ。何もかも……さあ、行きましょ。橋を守りに……」
 
 盗賊団は皆、武器を構えて伏せていたが、マルガリータだけがいつもと同じだった。

 うん??
 なんだか、俺の体から物凄い力が湧き出ている!!
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