第50話
文字数 1,145文字
「やっぱり、侵入者って、鬼窪くんだったのね」
「ああ……猪野間か……」
「少し、話さない?」
「ああ、いいよ」
学生服姿の猪野間がこちらへくると、エレベーターの扉が閉まった。二人でクシナ要塞の奥の方へと向かう。猪野間が右を指差して、俺は頷いた。その指差す方向の仄暖かい一室に入る。そこは、喫茶室だった。
俺は一室の中央にあるテーブルについて椅子に座り、猪野間が二人分のコーヒーを淹れているのを見ていた。
「鬼窪くんは秋野くんのこと、どう思う?」
「え??」
俺は猪野間の唐突な話題に驚いた。
「……わからないんだ。なんかな。放っておけなかったんだと思う」
「そう、私もよ……」
「別に、秋野じゃなくても、俺は放っておけなかったんだよ。きっと」
「ふーん……」
猪野間が淹れたてのコーヒーを、二人分テーブルの上に並べた。椅子に腰掛けると、猪野間はゆっくりと口を開いた。
「鬼窪くん。あの、驚かないでね……。私の考えだけど、この異世界転生は、きっと秋野くんが関わっているんだわ……」
「え??? どういうことだ?」
「本当はここ異世界へ来るはずだったのは、失踪したはずの秋野くんの方なのよ……」
「……え?」
秋野が失踪?!
まさか……?!
嘘だろ?!
「なんで……なんでだよ……」
「私もそう思うわ……」
コーヒーの香ばしい香りに包まれた。この喫茶室も殺風景だった。奥のカウンター席には、コーヒーミルがポツンと置いてある。コーヒーポッドから暖かい湯気が立ち上っていた。
コーヒーを一口すすると。
俺はふと、思った。
あれ? もしかして?
秋野もこの世界へ……。
「じゃあ、今まで出会っていないだけで、この世界には秋野も転生してるんじゃないのか?」
「……そうかも知れないわね。でも、それだと辻褄が合わない……」
「うん?? 辻褄?」
「ええ……」
「とにかく、俺はこの戦争が終わったら、この世界へ転生したかも知れない秋野を探しにいくよ」
猪野間はこっくりと、頷いて、しっとりとした長い黒髪を掻き上げた。
「鬼窪くん……ええ。それなら、私も手伝うわ」
猪野間はハッとして、突然、立ち上がって腰にぶら下げていた刀を抜いた。
俺はびっくりしたが、同じく立ち上がり神聖剣を構える。
その拍子に、テーブルの上の二人分のコーヒーカップが派手にこぼれた。
なんだ!
この感じは?
何か得体の知れないものが、徐々に近づいてくる?!
次第に、カシャン、カシャと、こっちへ近づいてくる。おびただしい数の足音が聞こえて来た。俺にはそれが何の音なのか、おぼろ気にわかってきた。金属製の床を蜘蛛のように歩いているからだ。
もう、確信した。
このクシナ要塞に似合っているものとは、なんだろう?
そう。それは、きっと……機械のはずだ。
蜘蛛型機械??
「ああ……猪野間か……」
「少し、話さない?」
「ああ、いいよ」
学生服姿の猪野間がこちらへくると、エレベーターの扉が閉まった。二人でクシナ要塞の奥の方へと向かう。猪野間が右を指差して、俺は頷いた。その指差す方向の仄暖かい一室に入る。そこは、喫茶室だった。
俺は一室の中央にあるテーブルについて椅子に座り、猪野間が二人分のコーヒーを淹れているのを見ていた。
「鬼窪くんは秋野くんのこと、どう思う?」
「え??」
俺は猪野間の唐突な話題に驚いた。
「……わからないんだ。なんかな。放っておけなかったんだと思う」
「そう、私もよ……」
「別に、秋野じゃなくても、俺は放っておけなかったんだよ。きっと」
「ふーん……」
猪野間が淹れたてのコーヒーを、二人分テーブルの上に並べた。椅子に腰掛けると、猪野間はゆっくりと口を開いた。
「鬼窪くん。あの、驚かないでね……。私の考えだけど、この異世界転生は、きっと秋野くんが関わっているんだわ……」
「え??? どういうことだ?」
「本当はここ異世界へ来るはずだったのは、失踪したはずの秋野くんの方なのよ……」
「……え?」
秋野が失踪?!
まさか……?!
嘘だろ?!
「なんで……なんでだよ……」
「私もそう思うわ……」
コーヒーの香ばしい香りに包まれた。この喫茶室も殺風景だった。奥のカウンター席には、コーヒーミルがポツンと置いてある。コーヒーポッドから暖かい湯気が立ち上っていた。
コーヒーを一口すすると。
俺はふと、思った。
あれ? もしかして?
秋野もこの世界へ……。
「じゃあ、今まで出会っていないだけで、この世界には秋野も転生してるんじゃないのか?」
「……そうかも知れないわね。でも、それだと辻褄が合わない……」
「うん?? 辻褄?」
「ええ……」
「とにかく、俺はこの戦争が終わったら、この世界へ転生したかも知れない秋野を探しにいくよ」
猪野間はこっくりと、頷いて、しっとりとした長い黒髪を掻き上げた。
「鬼窪くん……ええ。それなら、私も手伝うわ」
猪野間はハッとして、突然、立ち上がって腰にぶら下げていた刀を抜いた。
俺はびっくりしたが、同じく立ち上がり神聖剣を構える。
その拍子に、テーブルの上の二人分のコーヒーカップが派手にこぼれた。
なんだ!
この感じは?
何か得体の知れないものが、徐々に近づいてくる?!
次第に、カシャン、カシャと、こっちへ近づいてくる。おびただしい数の足音が聞こえて来た。俺にはそれが何の音なのか、おぼろ気にわかってきた。金属製の床を蜘蛛のように歩いているからだ。
もう、確信した。
このクシナ要塞に似合っているものとは、なんだろう?
そう。それは、きっと……機械のはずだ。
蜘蛛型機械??