第58話

文字数 1,211文字

「む! 小癪な! そこだ!!」

 謎の千騎士が、その手に持った剣を地面の方へ投げた。
 ぐさっと、剣が地面に深々と刺さった。 

「あ、あっぶねえ!」 

 すぐに、その近くの土が盛り上がってオニクボが飛び出してきた。

「ふはははは! やっぱり、強いな! こいつ!」

 オニクボは空中で、笑いながら一回転し、俺の隣に着地した。
 猪野間もマルガリータも、俺たちの隣に来た。

 白と騎士の国の軍隊は、サンポアスティ国の軍隊が交戦中だ。
 俺たちだけで、こいつを倒さないと……。

 けれども、この謎の千騎士は一体?? 誰??

 本当に、昔にトルメル城の王だったクラスド・エドガーなのか??


 あ!

 そうだ!
 そういえば!
 今まで、オニクボは土の中から飛び出ては、短剣を投げていたんだ!!
 
 うん??
 土の中??

 オニクボは地面から攻めて、マルガリータは空から攻めて、俺と猪野間は地上で戦う。

 よし!!
 この戦法で行こう!!
 相手が過去に大戦争を巻き起こした四大千騎士のクラスド・エドガーだったとしても、ここで勝たないといけない!!

「マルガリータ! オニクボ! 二人は空と地から攻撃してくれ! 猪野間は俺と一緒だ! 絶対にここであいつを倒すぞ!」

 俺はそうみんなに叫ぶと、神聖剣を構えた。

「オーケー! 空ね。鬼窪くん!」
「ふん……まあ、いっか……」
「わかったわ! 鬼窪くん! 私はこの戦いの間はあなたの傍にいるわ!」

 よし!!

 これなら、最大の強敵クラスド・エドガーも!!
  
 俺は神聖剣を上段に振りかぶって、クラスド・エドガーに向かって突進した。猪野間が超強化補助魔法の「ダブルフルスロットル」を俺に掛けた。

 激しい能力上昇のため。
 俺の身体があたかもなくなったかのような錯覚を覚えた。それだけ、力や体力が倍増して、自分の身体の重さを感じなくなったんだ。

「うらああああーーー!!」

 俺は神聖剣を振り下ろした。
 だが、クラスド・エドガーはいとも簡単に、白馬共々真横へステップし躱してしまった。

「な!!」
「ふん! そんなものだろうな……」

 クラスド・エドガーは鼻で笑う。

「う……嘘だ……」

 俺はさすがに、目の前のクラスド・エドガーという千騎士が怖くなってきた。
 
「チッ!」

 オニクボの舌打ちする音が、地面から聞こえ。瞬時に土からオニクボがクラスド・エドガーの背後に飛び出して来た。
 
 またしても、オニクボの短剣が空を斬る。
 クラスド・エドガーは、すでに楽に躱して白馬と共に前に疾走していた。そのままクラスド・エドガーは、俺のところへ突進してくる!!

 な!
 なんで?! いくらなんでも……それは……は、速すぎるだろ!!

「い、いけない!! 鬼窪くん! 避けるのよ!!」

 猪野間が叫んだ!

 クラスド・エドガーは後ろ手に、白馬に括り付けてある槍を持つと、俺の胸部を狙った。

 う、うそーーー!!
 このままじゃ……!!
 俺は目を閉じて、怖くて神聖剣を闇雲に振ろうとした。
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