第2夜 純白の 牡牛に運ばれ 新天地

文字数 1,164文字

冬の夜空で輝く「おうし座」。
今夜は、「おうし座」に伝わるギリシャ神話をご紹介しましょう。

昔々、エウロパ姫という
大変美しいお姫様がいらっしゃいました。

ギリシャ神話で一番偉い神様ゼウスは
エウロパ姫を一目で好きになってしまいました。

しかし、神様の姿のままで
「よぅ、おねぇちゃん、
 お友だちになどおうぜ・・・」
というわけには行きません。
そこでゼウスは、
真っ白な美しい牡牛に変身して
エウロパ姫に近づいて行きました。

その日、エウロパ姫は、
野で花摘みをしておりました。

そこへ、どこからともなく現れたのは、
白い牡牛です。
牡牛は、のそりのそりとエウロパ姫に近づくと
彼女の傍らに静かに座り込みました。

突然、巨大な牡牛が現れたので、最初はエウロパ姫も驚きましたが、特に危険な様子はありません。
牡牛は、エウロパ姫にゆっくりとすり寄ってきました。
その牡牛の毛並みの触り心地の良さにエウロパ姫は、うっとり。
牡牛の頭をなでてやるとうっすらと目を閉じてとてもおとなしい様子です。
そして、ほのかに良い匂いもします。

「姫様、お気を付けください。
 そんな大きな牛・・・怪我でもされたら」

エウロパ姫の従者は、巨大な牛が暴れださないか気が気ではありません。
しかし、そんな従者の心配をよそにエウロパ姫は、牛に急接近。

「大丈夫。
 この子とっても良い子なのよ」

エウロパ姫は、ひょいと牛の背に乗っていました。

「ね、大丈夫でしょ。
 この子こんなにおとなしいんだもの…」

と、エウロパ姫が、言ったとたん、これまで静かに座っていた牡牛は、突然スクっと立ち上がると猛烈な勢いで走り出したではありませんか。
誰もがびっくり!

でも、一番驚いたのはエウロパ姫です。
振り落とされないように牛の二本の角をしっかり握りしめ、声を立てることもできず目しっかり閉じていました。
その間にも牡牛はどんどんどんどん走ってゆきます。
エウロパ姫の頬に風があたります。

「あら? 風の香りが変わったかしら?」

少し湿っぽい・・・これまでとは違う風の香りに気づいたエウロパ姫がそっと目を開けると・・・どうでしょう、牡牛は海の上を駆けているではありませんか。

これは、おかしい!
エウロパ姫は、勇気を振り絞って牡牛に尋ねます。

「牡牛よ、牡牛。
 お前は、私をどこへ連れてゆこうというの?」

すると牡牛は、自分の正体をエウロパ姫に明かします。

「私は、大神ゼウスだよ。
 エウロパ姫、あなたを新しい土地へと
 お連れしよう」

エウロパ姫が連れてこられたその土地は、彼女の名で呼ばれるようになりました。
・・・ヨーロッパと。
===

ヨーロッパは1つの国の名前ではありません。
最近、ヨーロッパの国々が、共通の通貨を使っていますね。
ユーロというこの通貨単位の名前もエウロパ姫の名前が語源です。

そして、ユーロ札には、エウロパ姫がデザインされているんですよ。
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