第5夜 星になる ネメアの森の 大獅子座
文字数 1,902文字
春の夜空に輝く「しし座」。
百獣の王ライオンの姿を象ったこの星座は、夜空の星の並びからライオンの姿を容易に想像することができます。
また、ライオンの心臓に輝くレグルスは、黄道上唯一の1等星。「小さな王」という意味があります。
さて、今夜は、「しし座」に伝わるギリシャ神話を星座となった獅子本人に語って頂くことにしましょう。
☆ ☆ ☆
みなさん、初めまして、こんばんは。
私は、星座のしし座になった獅子・・・ライオンです。
その昔、私も地上に棲んでいました。
ギリシャ神話の大神ゼウスが私を星にしたのです。
今夜は、私が地上で暮らしていた頃のことをお話し致しましょう。
私は、ネメアという森に居りました。
この森には、いろいろな生き物が棲んでいました。
ウサギ、ねずみ、りす、キツネ、へび、トカゲ…他にも鳥や虫といった様々な動物だち。
そして、草木、花といった植物もみんなで仲良く平和に暮らしておりました。
え? 何々?? 「お前はライオンなんだから他の生き物を殺して食べていたのだろう」って?
まぁ、そうですね。
でも、私は、必要以上に他の生き物を殺したりはしませんよ。
みんなが幸せに暮らせるように生き物たちは、お互いに協力して、森を守っていたんです。
ある日のこと、森に一人の人間がやってきました。
その人間は、道に迷ってしまっていたようです。
私は、道を教えてやろう彼の前に姿を現しました。
しかし、私の言葉は、人間には通じません。
人間は大きな私の姿を見て驚き、一目散に逃げて行きました。
まぁ、結果的に彼は森を抜けだし、無事、村へ帰ることができたんですけどね。
良かったですね。
しあし、その後、ネメアの森に居る大きなライオンのウワサが村人たちの間に広まっていったのです。
「ネメアの森には、大きな大きなライオンがいるぞ。」
「巨大なライオンは、大きな口をあけると人間が立ったまますっぽり入ってしまうそうな。」
ウワサというのは、いい加減なものですね。
はじめは、私が『大きい』という話だったのです。
それが、いつのまにか『人食いライオン』という話に変わっていったのです。
「おぉ~い、森に人食いライオンが出たぞ~」
だから、違うっつーに…。
あぁ、言葉が通じないということは、なんと不便なのでしょう。
人食いライオンの噂を聞きつけ、やってきたのが、ギリシャ一の豪傑として名高い勇者ヘルクレスです。
ヘルクレスは、強力な弓矢を用意して、私を射殺そうとしました。
ヘルクレスの弓矢の腕は一流です。
1本たりとも外したり、はいたしません。
しかし、勇者様には、申し訳ないのですが、私に弓矢は通じません。
面の皮が厚いんですね。
飛んで来た矢は、私に突き刺さることなく跳ね返えってしまいました。
次にヘルクレスは、大きなこん棒を持ち出しました。
私を殴り倒そうというのです。
でも、これもダメでした。
彼が、振り降ろしたこん棒は、私の頭に当たるとポッキリ折れてしまいました。
石頭ですみませんねぇ。
ヘルクレスは、それでも諦めませんでした。
さすが、勇者です。
今度は、私に組み付き、首を絞めて退治しようと考えたようでした。
私も巨大なライオンでしたが、ヘルクレスも大男です。
ヘルクレスは、三日三晩、私の首を絞め続けました。
そんなヘルクレスに私は語りかけました。
「勇者よ。
何故、それほどまで私を退治したいのだ?
私は、森で静かに暮らしているだけだ。
人を襲って殺したことなどはないぞ」
するとヘルクレスは、私の問いに答えました。
「獅子よ。
人は、お前の大きな姿を恐れるのだ。
私は、人の恐怖を取り除くためにやってきた。
私は、神から十二の冒険を課せられている。
お前を倒すのが、この課題の一つ目なのだ。
私は、十二の冒険をクリアしなくてはならない」
ヘルクレスの言い分もわかりました。
私は、ヘルクレスにメッセージを託しました。
「わかった、勇者よ。
私も随分長い間、森を守ってきた。
そろそろ潮時かもしれぬ。
最後に一つ、私の願いを皆に伝えて欲しい。
『これからは、森の仲間と人間と協力して、この美しい森を守ってくれるように…』と」
天に召された私の亡骸を抱いたヘルクレスの頬で一筋の涙が光りました。
これで、勇者は、十二の冒険の一つ目をクリア。
そして、私は、星になりました。
…これが「しし座の物語」です。
え? 何々??
「私が読んだギリシャ神話の本の話と違う。
獅子は、乱暴な人食いの猛獣で…村人が困ってヘルクレスが退治に来たんだ」って?
まぁ、そのように書いてある本もあるかもしれませんね。
でもね、ちょっと考えてみて下さい。
私が本当に悪いライオンだったら、神様が星にしてくれるはずないって、思いませんか。
百獣の王ライオンの姿を象ったこの星座は、夜空の星の並びからライオンの姿を容易に想像することができます。
また、ライオンの心臓に輝くレグルスは、黄道上唯一の1等星。「小さな王」という意味があります。
さて、今夜は、「しし座」に伝わるギリシャ神話を星座となった獅子本人に語って頂くことにしましょう。
☆ ☆ ☆
みなさん、初めまして、こんばんは。
私は、星座のしし座になった獅子・・・ライオンです。
その昔、私も地上に棲んでいました。
ギリシャ神話の大神ゼウスが私を星にしたのです。
今夜は、私が地上で暮らしていた頃のことをお話し致しましょう。
私は、ネメアという森に居りました。
この森には、いろいろな生き物が棲んでいました。
ウサギ、ねずみ、りす、キツネ、へび、トカゲ…他にも鳥や虫といった様々な動物だち。
そして、草木、花といった植物もみんなで仲良く平和に暮らしておりました。
え? 何々?? 「お前はライオンなんだから他の生き物を殺して食べていたのだろう」って?
まぁ、そうですね。
でも、私は、必要以上に他の生き物を殺したりはしませんよ。
みんなが幸せに暮らせるように生き物たちは、お互いに協力して、森を守っていたんです。
ある日のこと、森に一人の人間がやってきました。
その人間は、道に迷ってしまっていたようです。
私は、道を教えてやろう彼の前に姿を現しました。
しかし、私の言葉は、人間には通じません。
人間は大きな私の姿を見て驚き、一目散に逃げて行きました。
まぁ、結果的に彼は森を抜けだし、無事、村へ帰ることができたんですけどね。
良かったですね。
しあし、その後、ネメアの森に居る大きなライオンのウワサが村人たちの間に広まっていったのです。
「ネメアの森には、大きな大きなライオンがいるぞ。」
「巨大なライオンは、大きな口をあけると人間が立ったまますっぽり入ってしまうそうな。」
ウワサというのは、いい加減なものですね。
はじめは、私が『大きい』という話だったのです。
それが、いつのまにか『人食いライオン』という話に変わっていったのです。
「おぉ~い、森に人食いライオンが出たぞ~」
だから、違うっつーに…。
あぁ、言葉が通じないということは、なんと不便なのでしょう。
人食いライオンの噂を聞きつけ、やってきたのが、ギリシャ一の豪傑として名高い勇者ヘルクレスです。
ヘルクレスは、強力な弓矢を用意して、私を射殺そうとしました。
ヘルクレスの弓矢の腕は一流です。
1本たりとも外したり、はいたしません。
しかし、勇者様には、申し訳ないのですが、私に弓矢は通じません。
面の皮が厚いんですね。
飛んで来た矢は、私に突き刺さることなく跳ね返えってしまいました。
次にヘルクレスは、大きなこん棒を持ち出しました。
私を殴り倒そうというのです。
でも、これもダメでした。
彼が、振り降ろしたこん棒は、私の頭に当たるとポッキリ折れてしまいました。
石頭ですみませんねぇ。
ヘルクレスは、それでも諦めませんでした。
さすが、勇者です。
今度は、私に組み付き、首を絞めて退治しようと考えたようでした。
私も巨大なライオンでしたが、ヘルクレスも大男です。
ヘルクレスは、三日三晩、私の首を絞め続けました。
そんなヘルクレスに私は語りかけました。
「勇者よ。
何故、それほどまで私を退治したいのだ?
私は、森で静かに暮らしているだけだ。
人を襲って殺したことなどはないぞ」
するとヘルクレスは、私の問いに答えました。
「獅子よ。
人は、お前の大きな姿を恐れるのだ。
私は、人の恐怖を取り除くためにやってきた。
私は、神から十二の冒険を課せられている。
お前を倒すのが、この課題の一つ目なのだ。
私は、十二の冒険をクリアしなくてはならない」
ヘルクレスの言い分もわかりました。
私は、ヘルクレスにメッセージを託しました。
「わかった、勇者よ。
私も随分長い間、森を守ってきた。
そろそろ潮時かもしれぬ。
最後に一つ、私の願いを皆に伝えて欲しい。
『これからは、森の仲間と人間と協力して、この美しい森を守ってくれるように…』と」
天に召された私の亡骸を抱いたヘルクレスの頬で一筋の涙が光りました。
これで、勇者は、十二の冒険の一つ目をクリア。
そして、私は、星になりました。
…これが「しし座の物語」です。
え? 何々??
「私が読んだギリシャ神話の本の話と違う。
獅子は、乱暴な人食いの猛獣で…村人が困ってヘルクレスが退治に来たんだ」って?
まぁ、そのように書いてある本もあるかもしれませんね。
でもね、ちょっと考えてみて下さい。
私が本当に悪いライオンだったら、神様が星にしてくれるはずないって、思いませんか。