第22夜 天高く 少女のひしゃく 星になる
文字数 1,501文字
北の夜空に輝く北斗七星。
星座では、おおぐま座の一部となります。
明るさの揃った目立つ星の並びであるためか、世界中でいろいろなものに見立てられました。
今日は、ロシアに伝わる「少女のひしゃくの物語」をご紹介しましょう。
===
昔々、一軒の家に病気の母親と娘が住んでおりました。
ある日のこと、病気の母親が、ベッドの上で
「喉が渇いた・・・お水を・・・」
とつぶやきました。
水道などないこの時代、本来なら井戸で水をくみ上げるのですが、外は日照り続きで大地も井戸もカラカラです。
娘は、母親のために柄杓を持って、水を探しに出かけました。
しかし、池も小川も干上がって、一滴の水もありません。
娘は、森にたどり着くと、そこで力尽き倒れてしまいました。
どのくらい時間が経ったでしょう。
娘が気づくと、彼女の手に持つ柄杓には、水が一杯入っているではありませんか。
「良かった。これをお母さんに・・・」
娘は柄杓の水をこぼさぬよう立ち上がると家路を急ぎました。
すると・・・彼女の足元に犬が寄ってきました。
犬も咽が渇いているようです。
「あぁ、ごめんなさい。これは、お母さんの水なの」
しかし、犬に言葉は通じません。
尻尾をふって、彼女が水を分けてくれるのを今か今かと待っています。
「わかったわ。少しなら大丈夫よね」
娘は、柄杓の水を少し手に取ると犬に飲ませてやりました。
するとどうでしょう。
娘が手に持っている柄杓は、「銀の柄杓」に変わったのです。
「さぁ、早くお母さんのところへ戻らなくっちゃ」
娘が家に戻り、母親に水を差しだすと母親は、ベッドの上から
「お前も喉が渇いているのだろう。
私は構わないから、お前がその水を飲みなさい」
と言います。
「でも、これはお母さんのために・・・」
と娘が言ったその時、玄関口でガタンと大きな音がしました。
振り向くと、見知らぬ老人がヨロヨロと入ってきます。
「私は旅の者です。お水を分けては、頂けませんか?」
老人の声は小さく、今にも倒れそうです。
娘と母親は、顔を見合わせました。
家にある水は、その柄杓の中のものが全てです。
この老人にあげてしまったら、娘の分どころか母親の分もの水もなくなってしまうでしょう。
しかし、旅の老人の様子を見た二人は、柄杓の水を旅人に差し出しました。
「あぁ、美味しい・・・こんな美味しい水は、これまで飲んだことがない」
老人は、柄杓から勢いよく水を飲みました。
「充分頂きました。ごちそうさま・・・」
老人が娘に返した柄杓は、いつしか「金の柄杓」にかわっていました。
そして、不思議なことにまだまだたくさんの水が入っていたのです。
娘は、柄杓を母親に渡しました。
母親が水を充分飲んで柄杓を娘に返します。
娘が柄杓をのぞき込むと柄杓の底には、7つのダイヤモンドがキラキラ輝いていました。
水は、そのダイヤモンドから湧き出しているのです。
娘も柄杓から水を飲みました。
そして、戸口を振り返ると…なんと、旅の老人は、穏やかに微笑みながら神々しく輝いているではありませんか。
「大切な水を独占することなく困っている動物や旅人に分け与えるとは大変立派なことだ」
旅の老人は、神様だったのです。
娘は神様に願い出ました。
「この辺りは、日照りが続いて、皆が困っております。
どうか、天の恵みをお授けください」」
すると神様は、柄杓を指し、天に掲げるようにと言いました。
娘が、柄杓を天に掲げると、中から7つのダイヤモンドが天に上がり北斗七星となりました。
春の夜、北の空高いところを見上げてください。
7つの星が柄杓の形に並んでいます。
よくみると柄杓は、水をこぼす方向に向いていますね。
この天のひしゃくから暖かい春の雨が地上へと降り注ぐのです。
星座では、おおぐま座の一部となります。
明るさの揃った目立つ星の並びであるためか、世界中でいろいろなものに見立てられました。
今日は、ロシアに伝わる「少女のひしゃくの物語」をご紹介しましょう。
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昔々、一軒の家に病気の母親と娘が住んでおりました。
ある日のこと、病気の母親が、ベッドの上で
「喉が渇いた・・・お水を・・・」
とつぶやきました。
水道などないこの時代、本来なら井戸で水をくみ上げるのですが、外は日照り続きで大地も井戸もカラカラです。
娘は、母親のために柄杓を持って、水を探しに出かけました。
しかし、池も小川も干上がって、一滴の水もありません。
娘は、森にたどり着くと、そこで力尽き倒れてしまいました。
どのくらい時間が経ったでしょう。
娘が気づくと、彼女の手に持つ柄杓には、水が一杯入っているではありませんか。
「良かった。これをお母さんに・・・」
娘は柄杓の水をこぼさぬよう立ち上がると家路を急ぎました。
すると・・・彼女の足元に犬が寄ってきました。
犬も咽が渇いているようです。
「あぁ、ごめんなさい。これは、お母さんの水なの」
しかし、犬に言葉は通じません。
尻尾をふって、彼女が水を分けてくれるのを今か今かと待っています。
「わかったわ。少しなら大丈夫よね」
娘は、柄杓の水を少し手に取ると犬に飲ませてやりました。
するとどうでしょう。
娘が手に持っている柄杓は、「銀の柄杓」に変わったのです。
「さぁ、早くお母さんのところへ戻らなくっちゃ」
娘が家に戻り、母親に水を差しだすと母親は、ベッドの上から
「お前も喉が渇いているのだろう。
私は構わないから、お前がその水を飲みなさい」
と言います。
「でも、これはお母さんのために・・・」
と娘が言ったその時、玄関口でガタンと大きな音がしました。
振り向くと、見知らぬ老人がヨロヨロと入ってきます。
「私は旅の者です。お水を分けては、頂けませんか?」
老人の声は小さく、今にも倒れそうです。
娘と母親は、顔を見合わせました。
家にある水は、その柄杓の中のものが全てです。
この老人にあげてしまったら、娘の分どころか母親の分もの水もなくなってしまうでしょう。
しかし、旅の老人の様子を見た二人は、柄杓の水を旅人に差し出しました。
「あぁ、美味しい・・・こんな美味しい水は、これまで飲んだことがない」
老人は、柄杓から勢いよく水を飲みました。
「充分頂きました。ごちそうさま・・・」
老人が娘に返した柄杓は、いつしか「金の柄杓」にかわっていました。
そして、不思議なことにまだまだたくさんの水が入っていたのです。
娘は、柄杓を母親に渡しました。
母親が水を充分飲んで柄杓を娘に返します。
娘が柄杓をのぞき込むと柄杓の底には、7つのダイヤモンドがキラキラ輝いていました。
水は、そのダイヤモンドから湧き出しているのです。
娘も柄杓から水を飲みました。
そして、戸口を振り返ると…なんと、旅の老人は、穏やかに微笑みながら神々しく輝いているではありませんか。
「大切な水を独占することなく困っている動物や旅人に分け与えるとは大変立派なことだ」
旅の老人は、神様だったのです。
娘は神様に願い出ました。
「この辺りは、日照りが続いて、皆が困っております。
どうか、天の恵みをお授けください」」
すると神様は、柄杓を指し、天に掲げるようにと言いました。
娘が、柄杓を天に掲げると、中から7つのダイヤモンドが天に上がり北斗七星となりました。
春の夜、北の空高いところを見上げてください。
7つの星が柄杓の形に並んでいます。
よくみると柄杓は、水をこぼす方向に向いていますね。
この天のひしゃくから暖かい春の雨が地上へと降り注ぐのです。