遅くなった保護
文字数 1,084文字
「追わなくて良いのかよ。一応、責任者の一人だろ?」
アランの問いを聞いた者は首を傾げ、飄々とした様子で答えを返す。
「私は、見守るのが仕事ですから。勿論、命に関わる間違いが起きそうになったら、何が有ろうと介入致しますが」
神父は、そう言うとアランに向き直り、口角を上げて話を続ける。
「それより、貴方こそ追わなくて宜しいのですか? 聞けば、随分と可愛がっていたそうじゃないですか。今日だって、雨の中を走ってまで、あの子の家まで行ったのでしょう?」
トマスに問い掛けられた者は、面喰った様子で瞬きをした。しかし、直ぐに余裕の笑みを浮かべて腰に手を当てると、はっきりとした声で言葉を返す。
「そうだな。これから用事もないし、アイツを弄ってくるわ」
そう言うなりアランは食堂を出、神父はそれを見送ってから近くの椅子に腰を下ろした。彼は、そうした後でリタ達の帰還を待ち、時折時間を気にしながら食堂に留まった。
少年と手を繋いで歩く者は、ゆっくりした足取りで廊下を歩いていた。そうしているうちに子供の話し声が聞こえるようになり、それを聞き取った少年は声のする方へ顔を向ける。
「皆、君を歓迎してくれると思うよ。ここには、意地悪な子は居ないから」
リタは呟く様に言うと立ち止まり、その横に在るドアを一瞥する。
「でも、先ずは一人部屋ね。ベッドの用意は、そっちの方が早く出来たから」
リタは、そう説明すると微苦笑し、ドアノブに手を掛けて手前に引く。ドアを開けられた部屋の中には、二段ベッドが在った。とは言え、整えられているのは下段だけで、リタは少年を入室させるとそのベッドを指し示す。
「とりあえず、ゆっくり休んだ方が良いわ。その間に、私は美味しい料理の準備をしちゃうから」
そう伝えると、リタは首を傾げて微笑んだ。対する少年は無言で頷き、整えられたベッドに腰を下ろす。案内を終えたリタが部屋を出ると、そこにはアランの姿が在った。彼はリタと入れ替わるようにして少年の部屋へ入り、そこでドアに背中を付けて少年を見下ろす。
「緊張してるか? ま、徐々に慣れれば良い」
そう言うと、青年は軽く片目を瞑ってみせた。対する少年は小さく頷き、アランは目を細めて口角を上げる。
「ここは、教会の保護下にあるおかげで安全な場所だ。だから、安心して寝ろ」
そう言い残すと、青年は部屋から立ち去った。一人残された者はそれを見送った後でベッドに横になり、柔らかな布団を被って目を瞑る。
慣れない環境のせいか、少年が直ぐに眠りに落ちることはなかった。しかし、布団が程良く温まった頃、少年は安らかな寝息を立て始める。
アランの問いを聞いた者は首を傾げ、飄々とした様子で答えを返す。
「私は、見守るのが仕事ですから。勿論、命に関わる間違いが起きそうになったら、何が有ろうと介入致しますが」
神父は、そう言うとアランに向き直り、口角を上げて話を続ける。
「それより、貴方こそ追わなくて宜しいのですか? 聞けば、随分と可愛がっていたそうじゃないですか。今日だって、雨の中を走ってまで、あの子の家まで行ったのでしょう?」
トマスに問い掛けられた者は、面喰った様子で瞬きをした。しかし、直ぐに余裕の笑みを浮かべて腰に手を当てると、はっきりとした声で言葉を返す。
「そうだな。これから用事もないし、アイツを弄ってくるわ」
そう言うなりアランは食堂を出、神父はそれを見送ってから近くの椅子に腰を下ろした。彼は、そうした後でリタ達の帰還を待ち、時折時間を気にしながら食堂に留まった。
少年と手を繋いで歩く者は、ゆっくりした足取りで廊下を歩いていた。そうしているうちに子供の話し声が聞こえるようになり、それを聞き取った少年は声のする方へ顔を向ける。
「皆、君を歓迎してくれると思うよ。ここには、意地悪な子は居ないから」
リタは呟く様に言うと立ち止まり、その横に在るドアを一瞥する。
「でも、先ずは一人部屋ね。ベッドの用意は、そっちの方が早く出来たから」
リタは、そう説明すると微苦笑し、ドアノブに手を掛けて手前に引く。ドアを開けられた部屋の中には、二段ベッドが在った。とは言え、整えられているのは下段だけで、リタは少年を入室させるとそのベッドを指し示す。
「とりあえず、ゆっくり休んだ方が良いわ。その間に、私は美味しい料理の準備をしちゃうから」
そう伝えると、リタは首を傾げて微笑んだ。対する少年は無言で頷き、整えられたベッドに腰を下ろす。案内を終えたリタが部屋を出ると、そこにはアランの姿が在った。彼はリタと入れ替わるようにして少年の部屋へ入り、そこでドアに背中を付けて少年を見下ろす。
「緊張してるか? ま、徐々に慣れれば良い」
そう言うと、青年は軽く片目を瞑ってみせた。対する少年は小さく頷き、アランは目を細めて口角を上げる。
「ここは、教会の保護下にあるおかげで安全な場所だ。だから、安心して寝ろ」
そう言い残すと、青年は部屋から立ち去った。一人残された者はそれを見送った後でベッドに横になり、柔らかな布団を被って目を瞑る。
慣れない環境のせいか、少年が直ぐに眠りに落ちることはなかった。しかし、布団が程良く温まった頃、少年は安らかな寝息を立て始める。