増える協力者

文字数 1,001文字

 リタの訪問があった次の日、神父の元に一人の男が現れる。その男はトマスより体格が良く、赤褐色の髪は短く切り揃えられていた。また、日に焼けた肌は健康的で、神父を見つめる瞳は翠色をしている。

 一方、男性の訪問に気付いた神父は目を丸くし、翠色の瞳を見つめて口を開いた。
 
「アラン……まさか、直接来るとは思いませんでしたよ」
 アランは笑みを浮かべ、舌を出してから言葉を返した。

「連絡欲しい、って言ってたろ? だから、こうやって来てやったんだよ」
 神父は溜め息を吐き、静かに立ち上がった。この時、アランはソファーの在る方へ向かって行き、神父の言葉を待たずにそこへ座る。その後、トマスはアランの対面に座り、訪問者は足を組んで首を傾げた。
 
「で、今回は何の用だ?」
 そう問うと、アランは神父の目を真っ直ぐに見た。対するトマスは微笑し、黒髪の少年について話し出す。すると、アランは腕を組んでから頷き、その仕草を見たトマスは安心した表情を浮かべた。

「では、お任せします」
 トマスは片目を瞑り、アランは大きく頷いてから立ち上がった。その後、アランは神父の部屋を去り、話を終えたトマスは疲れた様子で背もたれに体重を預ける。ソファーに座る者は、額に手を当てると溜め息を吐き、それから体を横に倒した。

 トマスは、十分程そうした後で立ち上がり、仕事机に向かっていった。しかし、彼は仕事に集中出来ず、溜め息を吐きながら外を眺めた。

 トマスが仕事机に戻った頃、アランは孤児院の近くへ移動していた。彼は、歩きながら黒髪の少年を探しており、その瞳は左右にゆっくり動いている。しかし、タイミングが悪かったのか誰とも行き会わず、彼は孤児院の中に入っていった。

 彼は、神父の話を元に食堂へ向かっており、そこからは微かながら人の声がしていた。この為、アランは足音を立てないようにして食堂へ近付き、中を覗き込む。

 すると、そこには食事中の少年と、それを見守るリタの姿が在った。黒髪の少年を確認したアランは調理場に身を隠し、少年が食べ終わる時を静かに待った。

 少年の食事が終わると、リタは空の食器を持って調理場へ向かった。この際、アランは入れ替わるようにして調理場を出、感付かれないよう注意しながら少年を追い掛けた。

 アランの存在に気付いたリタと言えば、声を掛けようと口を開いた。しかし、彼が直ぐに立ち去った為、彼女は何も言うことなくアランを見送る。

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登場人物紹介

主人公
ネグレクトされている系男児。
しかし、救いの手が差し伸べられて成長する。

神父
主人公に救いを差し伸べるが、差し伸べ方がやや特殊な年齢不詳な見た目の神父。
にこやかに笑いながら、裏で色々と手を回している。

兄貴分
ガチムチ系脳筋兄貴。
主人公に様々なスキルを教え込む。
難しいことはどこかに投げるが、投げる相手が居ないと本気を出す脳筋。

みんなのオカン
主人公を餌付けして懐かせる系オカン。
料理が上手いので、餌付けも上手い。

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