プロローグ
文字数 564文字
暗い部屋で彼は泣く。自分のせいだと震え泣く。宥める者、慰める者、彼を気に掛ける者は何処にも居ない。一人ぼっちの少年は、膝を抱えて泣いていた。
隣の部屋からは喧嘩の声。彼を否定する大きな声。彼の親である筈の者達は、息子の事で言い争う。
闇を映した様な黒い髪。透き通るような白い肌。それが彼らには許せなかった。悪魔の様だと罵った。
喧嘩をする二人の髪は、どちらも明るい栗色だ。だから、彼の黒髪が恐ろしい。
彼を罵る二人の瞳は、新緑の様な緑色。だから、少年の青い瞳が恐ろしい。
彼は二人に似ていない。だから、二人は喧嘩する。
少年は、自らの容姿を恨み、嘆き、泣き続ける。自分さえ居なければと泣き続ける。
されど、声は届かない。誰の耳にも届かない。
彼の涙は頬を伝い、汚れた床に浸み込んで。
痩せこけたその頬は涙で荒れ、涙を拭う手は細かった。小さな手の指先は栄養不足で酷く荒れ、洗わぬ髪は酷く匂った。長い間変えられていない服は汚れが酷く、多くの穴が開いている。服の穴からは骨の浮いた皮膚が覗き、それに子供らしい張りは無かった。代わりに、様々な色の痣は多く、それは体のあちこちに刻まれている。
それでも少年は諦めない。震え、脅え、泣きながらも、何時かは二人が帰ってくると信じていた。
それが、どんなに可能性の低いことで有ろうと信じて――
隣の部屋からは喧嘩の声。彼を否定する大きな声。彼の親である筈の者達は、息子の事で言い争う。
闇を映した様な黒い髪。透き通るような白い肌。それが彼らには許せなかった。悪魔の様だと罵った。
喧嘩をする二人の髪は、どちらも明るい栗色だ。だから、彼の黒髪が恐ろしい。
彼を罵る二人の瞳は、新緑の様な緑色。だから、少年の青い瞳が恐ろしい。
彼は二人に似ていない。だから、二人は喧嘩する。
少年は、自らの容姿を恨み、嘆き、泣き続ける。自分さえ居なければと泣き続ける。
されど、声は届かない。誰の耳にも届かない。
彼の涙は頬を伝い、汚れた床に浸み込んで。
痩せこけたその頬は涙で荒れ、涙を拭う手は細かった。小さな手の指先は栄養不足で酷く荒れ、洗わぬ髪は酷く匂った。長い間変えられていない服は汚れが酷く、多くの穴が開いている。服の穴からは骨の浮いた皮膚が覗き、それに子供らしい張りは無かった。代わりに、様々な色の痣は多く、それは体のあちこちに刻まれている。
それでも少年は諦めない。震え、脅え、泣きながらも、何時かは二人が帰ってくると信じていた。
それが、どんなに可能性の低いことで有ろうと信じて――