第15話 ギンヌンラユマの口のこと

文字数 347文字

 不輝城で過ごしていると、不意にお互いの言葉がまったく通じなくなることがあるそうだ。そのような時は、「ギンヌンラユマが口を開けている」と言い、人々は思いつくかぎりのほら話しを語り続けなくてはならない。
 しかも、あまり面白い話しをしてはならず、とびっきりくだらないのを、誰の相槌も得られないまま、ひたすら、ラユマが呆れて口を閉じるまで、話し続けなければいけないのだとか。
 ことが起こっている間は、どのような宴もなく、食事も就寝も、誰も語っていない時間がないように、注意深く案内される。それも言葉が通じないので、身振り手振りで伝え合う。
 馬たちの庭のそばにある大きな窪地は、昔は賓客をもてなす瀟洒な館が建っていたのだが、面白い話しをしすぎた男がいて、ラユマに建物ごと飲まれてしまった跡なのだそうだ。
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