第1話 不輝城夜話
文字数 272文字
不輝城をご存知か。人の言うには、夢のあわいに落ち込むまぎわ、ふと足を踏み外してたどり着くとも、霧深きリスルーの谷の奥、迷うのでなければたどり着かない獣道の果てにその影を見いだすとも聞く、堅牢なる玄石(くろいし)の城を。かつて世にあまねくその名を知られ、海の果てからも陸の窮(きわ)からも客人の絶えることのなかったものが、今は尋常の世からもぎ取られてそのようにあると言う、ものさびしき漂泊の城を。
永(なが)のむかしに別れても、なお蜘蛛の糸のごとく吹きかかり、古くも新しくも巷に聞こえるその消息を、今宵ひとときの慰めに、ひとつ語って聞かせよう。
永(なが)のむかしに別れても、なお蜘蛛の糸のごとく吹きかかり、古くも新しくも巷に聞こえるその消息を、今宵ひとときの慰めに、ひとつ語って聞かせよう。
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