第23話 繭の女王の屍衣のこと

文字数 519文字

 不輝城の主塔から、決まった順に七つの城門をくぐり、白い道をゆくと、やがて灰の荒野に出る。
 そこには繭の女王と呼ばれる雪下柑子の群生があり、初霜の降りる新月をはさんだ七日間、城の男たちが繭をとりに通うという。
 選り抜きのたくましい七人の若者たちは、酒を飲みつつ完全に日が沈むのを待ち、香の煙をなびかせながら、この日のために造られた美しい荷車をひいて行く。
 すっかり葉を食べつくされた雪下柑子には、本来あるはずの実に代えて、一つ一つが赤ん坊の頭ほどもある映月碧の繭がすずなりになっており、彼らはこの女王の肢枝に養う繭をのこらず――二百六とも、百六四とも、またほかの数をいう伝えもある――集めることになっている。
 この繭は、女の目に触れてはならないため、解繊からのあらゆる工程が男の手にゆだねられる。そうしてできた布と糸は、ピドゥーの丘の下にある墓所に収められ、そこで女王に仕える屍衣の縫い手が、代々の縫い手に教え継がれてきたとおり、その年に加えるべきところへ、それを縫い付けるのだそうだ。
 この話を聞いた人が、女が繭を見るとどうなるか尋ねると、かつて屍衣の縫い手であったという老爺は、「その女は二度と子供を産めなかった」とだけ答えたという。
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