第9話 月を見張ること

文字数 269文字

 不輝城の東の塔は大きな湖に面した崖の上に建っている。日暮れが近くなると、そこへ二人一組の不寝番が登っていき、月の見張りをするそうだ。月がの昇るとき、湖のふちからだんだんと顔を覗かせるのだが、ときおり、特に新月を挟んだ数日には、道を過って水面へ滑り出てきてしまうことがあるためという。
 月が迷い出てくると、見張り番は鐘と太鼓とラッパを鳴らして脅したて、なんとか空へ追い戻そうとする。それでうまく戻れば良いが、驚いた月があらぬ方へ逃げ出して、姿を隠してしまうこともある。そういう時に備えて、不輝城では月を狩るための猟猫の群れが飼われている。
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